表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/24

お互い様でいこう


「はふう・・・。はふう・・・」

まるで熱帯地域のような暑さの中、二人は山道を進んでいた。


息を切らしているのは、なぜか空を飛んでいる妖精だけで、シアンの方はわりと平気そうに歩いている。

「なあ・・・。何もこんな活火山を越えていかなくても、普通に平野を抜ければよかったんじゃないか?」

彼らがいま苦労しているのは、『サラマンダーの尻尾しっぽ』と呼ばれる、活火山脈のはずれの横断である。

汗でしおれかけている羽を懸命にふりながら、妖精は答えていた。

「だって、もし『ゴールドエンド』・・・いえ、正確には、シアンさんの国は“スターブルク”って名前でしたっけ・・・から密入国してるのがバレたら、わがローデンシア国に迷惑がかかるじゃないですか。ーーいや、何の魔物対策もしてくれない政府はいいとしても、私のあるじである勇者さまには、負担をかけられません」

なかなかいじらしいことを言って、ノノと名乗った彼女は、両手を前に出している。

その飛行体勢は、どうやら古来より〈スーパーマンスタイル〉と呼ばれているらしいが、そんなことはどうでもいいシアンは、ぴたっと妖精の羽を捕まえていた。

「!」

じたばたと暴れ出し、自由になろうとするノノを、肩にのせて速度を上げる。

「俺たちの国じゃあ、ほとんど見かけなくなっちまったけど、キミらは確か、人間でも一人だけなら仲良くしていい決まりだったよな?」

スタスタと軽快に山道を歩きながら、青年が言う。

「そうですよ。そう限定しておかないと、絶対に悪人をの中に加えてしまいますから・・・」

ノノはしょぼんとしているが、楽に進めるようになったので、悪い気はしていない。

「まあ、俺のことは利用していると思えばいいじゃないか。

その勇者さまのために、少しでも早く魔物を倒したいんだろう?」

「・・・そうですね。それに、シアンさまは以前、麻薬を密売していた極悪人ですもんね! たしか『神曲薬ソーマ』とか! 」

くっ。

せっかく気を使ってやったのに、いらん過去をほじくり返してくるとは・・・。

まあそれでも、めんどくさい2度目の冒険をやっているより、用事を済ませてはやく帰れる方が良い。

(なんせ、俺にとっちゃあ周回プレイみたいなもんだからな・・・)

彼は、今回の旅を、そんな風に思っていたのだ。


『ただ待つことが、一番難しい』


成功者たちが、ときどき口にする言葉である。

シアンは、この時すでに大金持ちへの切符を手にしていたのだが、それは今の彼にとって、密入国用の通行手形パスポートより価値がないものであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ