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自伝的断章  作者: Beamte
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月との訣別

 ラインの画面を何度も確認した。だがいつまでたっても既読がつかない。こんな年末年始の暇なときに読まないということはあり得ない。理由を考えてみた。旅行に出かけている。ライブに行っている。親戚の家に行っている。だがそれも、翌日になっても既読がつかないことで容易に打ち砕かれた。私はもうずっと前からブロックされていたのかもしれない。途端に気持ちが覚めていった。私は失恋の曲を一通り聞いて、心の痛みに耐えるほかなかった。

 彼女とは職場の同期だった。背が高くすっきりした顔立ちで、気立ては和やかだった。私はかなり独立した考え方を持っていたが、彼女はむしろ柳のように周囲の言うことに押し流されるタイプだった。私は彼女の慎ましい態度に惹かれ、少しずつ好意を示していった。彼女も私の好意に気付いたが、それを自分で処理することができなかった。私たちのことはことあるごとに職場の女子たちの昼休みの話題になった。私はそのことについてかなり不快であったが、彼女は物事を一人で決められないようなのだ。

 あるとき、彼女と売店ですれ違った。彼女は挨拶もしなかった。すると隣にいた彼女の友人が「挨拶しなくていいの?」ときいた。彼女は、「Hさんは課の猛獣の中でも特別なんです」と答えていた。その言葉も、彼女自身の言葉かそれとも周りに言われた言葉なのかわからなかった。そして「特別」という言葉にも深い意味合いが込められていた。

 彼女は周りに言われたことに流されてしまうので、あるときは私に好意を示し、あるときは私を突きはねた。彼女自身の感情はどうだったのだろうか。おそらくそれもどっちつかずだったのだと思う。あるときは毎日のようにエレベーターが一緒になって、おかしいと思ったら彼女の方で私を待ち伏せしているのだった。かと思うと私を露骨に避けることもあった。

 私たちは2回デートしたが、それ以上の進展はなく、お互いに転勤して疎遠になった。転勤してしばらくして、私たちは同期会を開いた。楽しく話が進み、私はいい感触を得たと思った。私は同期会の数日後、彼女が行きたいと言っていた場所に誘うラインを送った。だが3回目のデートは実現せず、代わりに女友達に聞いたかのような手の込んだ言い訳が返されてきた。私は「愛は壊れた」と思った。それからずっとラインを送らなかった。

 転勤して彼女に恋人ができたのかもしれないし、その他何らかの事情があったのだろう。だが彼女との恋愛は、私個人と女子たちの集団との闘いだった。彼女は恋愛をするだけの強固な自我を持っていなかったのではないだろうか。私は彼女一人を相手にしているのではなかった。彼女の背後には必ず女子たちのネットワークがあり、彼女の示す行動は誰が決定したものなのかわからなかった。この恋愛は初めから破綻していたのかもしれない。彼女は恋愛するには幼かったのではないか。この恋愛は初めから失敗していたのだ。

 私は彼女との訣別をここに記し、また次の相手を探そうと思う。私は彼女の成長を手伝ったに過ぎなかったのかもしれない。成長の糧になっただけでもよいではないか。彼女とは10歳年が離れていた。


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