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私がヒロインだけど、その役は譲ります~番外編~  作者: 増田みりん
Sweetquest~甘味は世界を救う~
4/5

第4話 そして三人は魔王の部下に出会った

お久しぶりです…長らく放置していてすみません…。



 あれから私たちは数多のダンジョンに入り、数多の洞窟へ迷い込み、魔王の情報を求めてこの世界を冒険し続けた。

 その結果、私たちは順調にレベルを上げ、今のレベルは70ほどにまであがった。

 これならばいつ魔王が現れても倒せるはずだ。魔王ウェルカム!


 冒険の途中で、最強の武器と言われる出刃包丁を手に入れ、魔王を倒すために究極の魔法を手に入れ、最強の防具と謳われる割烹着を手に入れ、もはやいつでもラストダンジョンに乗り込める態勢である。

 だから魔王様。いつでも出て来てくれていいのよ?


 そうは思ってもなかなか魔王の居場所は突き止められず、時間ばかりが経過していく。

 そんな中でも私たちは相変わらずボケたり突っ込んだりして楽しく旅を続けていた。旅は概ね順調だ。たまに盗賊とかに襲われたり、スリにあったり、モンスターに囲まれたりしたけれど結果的になんとかなったから良しとする。


 旅を続けている最中、ようやく魔王の居場所の手掛かりをつかんだ私たちは、その場所へとさっそく向かった。

 そこは深い森に囲まれた場所。そして私たちの前に現れたのは、如何にもラストダンジョン!という感じのお城だった。


「……ラスダンっぽいな」

「そうだね」

「ここをクリアすれば元の世界に帰れますのね」

「恐らくね」

「…よし。では行くとしようか」


 飛鳥の言葉に私と蓮見は頷く。

 そしてその城の中へと入っていくと、モンスターの群れが私たちを出迎えた。

 なんてお約束な!


「神楽木、頼んだ!」

「しょうがないですわね。お任せください」


 私は持っていた出刃包丁を取り出す。これがこの世界では最強の武器らしい。嘘でしょ、と思ったのは私だけではないはず。

 しかしこの出刃包丁。見た目は出刃包丁のままだけど、その威力は普通の出刃包丁とは一味違う。最強の武器なだけあって、切れ味は抜群だし、私の技との相性もいい。

 …そりゃそうだよね。だって私の技って包丁の切り方だもの。

 出刃包丁を両手に持ち、私はモンスターの群れに向かって走る。運動音痴な私だけど、この世界では勇者の補正が働くのか、運動音痴ではなくなっていた。元の世界でもこの運動神経のまま帰りたいと切実に思うけど…女神様に頼もうかなぁ。


「喰らいなさい!『みじん切り』!」


 出刃包丁を素早く動かし、私は技を決めていく。

 大量のモンスターは瞬く間に減り、残ったモンスターは飛鳥と蓮見が手に持った棒とこん棒で倒していく。

 この二人の武器は最初から変わらない。他の武器買えばいいのに、と言っても「俺たちは前衛じゃないからいい」と言って、防具ばかり買っていたのだ。

 ちょっとはさあ、女の子に気を遣ってくれないかなぁ?「神楽木一人で戦わせるのは申し訳ない。俺も頑張ろう」とかさあ、言ってくれる親切心はないのかなあ?

 ないよね。あるわけないよね。だってあの二人だし。「え?神楽木一人で十分でしょ?」とか真顔で言われそうだし。…つらい。


 初期のショボイ武器でもレベルが上がった私たちは、その辺に現れる雑魚モンスターなら余裕で勝てる。私が倒しきれなかったモンスターを蓮見と飛鳥が協力して倒していく。

 その際蓮見は魔法を使わない。蓮見の魔法は魔王戦で大活躍してもらう予定だからだ。こんなところで無駄なCPを消費するわけにはいかないのだ。


「こんなところでしょうか」

「ああ、さすが神楽木だ」

「できれば全滅してほしかったけど」

「ぐっ…悪かったですわね…」


 蓮見はまったくもって一言余分だ!飛鳥を見習え!


「…もう倒してしまったか。さすが、勇者たち」


 わあわあと言い合っていた時、どこかで聞き覚えのある声が響いた。

 私がきょろきょろと辺りを見渡している間に「おい、こっちに扉があったぞ」「よし行こうか」と飛鳥と蓮見は勝手に話を進めて先に行こうとしている。


 あの~、今、私たち三人以外の声がしましたよねえ?

 あれ?私の気のせいだった?


「何をしているの、君。早く行くよ。さっさと魔王を倒そう」

「は、はい…」


 蓮見に急かされ、私は首を傾げながらも歩き出した、その時。


「オレを無視するなぁ!!」


 ダン!と音がして、先にいた飛鳥と蓮見の目の前に黒い服に身を包んだ人物が現れた。

 飛鳥は目を見開いて驚き、蓮見は面倒くさそうな顔をした。

 本当に蓮見って可愛くないと思う。


「……誰?」

「さあ?この流れから考えるに、恐らく魔王の側近なのではないか?」

「魔王の側近に用なんてないんだけど。早く魔王に合わせてよ」

「俺に言われてもな…」


 敵が目の前にいるというのに、二人はそんな呑気な会話を繰り広げる。

 …脱力しそう。なに、この緊張感のなさ。もっと緊張感持とうよ、二人とも。


「だから、オレを無視するなと…」

「いや、だから、誰?って聞いただろ?」

「オレに聞いていたのか、それ…」

「他に誰に聞くわけ?」

「………」


 蓮見の堂々とした回答に、その人物は言葉が出ない様子だ。

 わかるよ、わかる、その気持ち。理不尽だよねえ。蓮見って理不尽大魔王だよねえ。


 その人物はゴホン!と咳ばらいをし、仕切り直しをするように顔を上げて私たちを見つめた。

 その顔は、とても見覚えのある顔だった。


「…我が名はユート。魔王陛下の側近だ。勇者たちよ、陛下の元へ辿り着きたいのならば、オレを倒していけ!」


 ドヤアとした顔でユートと名乗ったその人は言った。

 しかし、台詞が棒読みである。なんか、誰かに言わされてるんです感がある。

 上司の命令かなあ?上司っていうと、魔王かな?魔王様がそう言えって命じたのかな。なんて面倒くさい上司…同情する。


 いやそれよりも!


「悠斗!」


 私はかつてないほど素早い動きでその人物に抱き付いた。

 うわっと叫んだその人の顔をよく見てみる。やっぱりどこからどう見ても悠斗にしか見えない。私の可愛い、弟!


「悠斗ぉ~!会いたかった~!」

「は?なに言って…」

「お姉ちゃん、悠斗に会えなくてとっても寂しかったよ~」

「いや、あなたとオレは初対面だし…そもそもオレに姉なんていな…ちょ、く、苦しい…」


 ぎゅうっと思いっきり抱き付いたせいで、悠斗の首を絞めてしまったようだ。

 ああ、いけない。嬉しくて、つい。


 だって、弟と同じ顔で同じ声の人がすぐ目の前にいるんですよ?

 大好きな弟のそっくりさんがいるんですよ?

興奮するでしょ!ただでさえ、こっちの世界に来てから悠斗に会えなくて、寂しい想いをしていたのだから。


「……なあ、蓮見」

「なに?」

「この状況、どう収拾つける?」

「………さあ?」


 興奮している私の傍らで、飛鳥と蓮見が何やら話をしている。

 そして興奮した私に抱き付かれて、頬ずりされているユートは、「な、なんでオレがこんな目に…」と若干涙目になっていた。


 私たちの冒険は、そろそろクライマックスを迎えようとしているはずなのに、なぜかとてもカオスな状況になった。

 どうしてこうなった?女神様、教えて!





今週末には番外編も本編と共に完結させます。

こちらはあと一話、お付き合いくださると嬉しいです。

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