第1話 そして三人は異世界に召喚された
いつものように私と蓮見と飛鳥の3人で生徒会室に居残りをしていた。
やっと仕事が一段落し、私たちが一息つこうとお菓子を持ち出し、休憩をしていた時のことだった。
「やっぱり疲れた時には甘い物が一番だわ~」
「君は甘い物を食べているときが一番幸せそうだな」
「……単純」
「うるさいですわ」
私は蓮見を一睨みしてもう1個お菓子を食べようと手を伸ばした時だった。
突然足元がグラグラと揺れだした。
「きゃぁっ。な、なに……!?地震?」
「地震にしては……なんだか……」
「とりあえず、机の下に……」
一際大きい揺れと共に目の前が真っ白になった。
「らぎ………くらぎ………神楽木!」
「んっ……は、すみさま……?」
「良かった、目を覚ましたみたいだな」
「飛鳥くん……ここは……?」
気づいた時には、見たこともない真っ白な空間にいた。
本当に真っ白で、何もない空間に私たちはいた。
「俺たちも目を覚ましたらここにいて、ここがどこなのかさっぱりわからないんだ……」
飛鳥が困ったように言うと、どこかから厳かな声が響く。
『勇者よ……異世界から来た勇者たちよ……聞こえますか……』
「だ、だれ……?」
『私の名はナーオ……この世界の女神です……』
「ナーオ……?女神?」
『今、この世界は魔王プレアデスによって滅ぼされようとしています……勇者たちよ……どうかこの世界を救ってください……あなたたちだけが頼りなのです……』
「魔王プレアデス……?」
『勇者たちよ……私に残された力であなたたちに魔王に立ち向かえる力を与えます……どうかこの世界を救ってください……』
「は?ちょっと意味が……」
『どうか、世界を救ってください……』
「あの、ちょっと説明を……」
『……………………』
「なんなの、あの自称女神!言いたいことだけ言って去るとか、何様なのかしら!」
「女神様なんでしょ」
そういう冷静なツッコミいらないから!
「なんだかよくわからないが……とりあえず、魔王を倒せばいいんだろ?」
「みたいですわね。力がどうとか言ってましたけど、力って……!?」
突然私たちは光に包まれ、気づいた時には服装がRPGっぽくなっていた。
親切なことに黒いコマンドみたいなのも表示されている。
コマンド
リンカは 戦士 に なった!
ハスミは 魔法使い に なった!
アスカは 僧侶 に なった!
なんだこれぇぇえ!!?
思いっきり某RPGじゃないか!著作権大丈夫なの!?
ていうかなんで私が戦士なの!?
女の子なんだし、普通は僧侶とか魔法使いでしょ!?思いっきり前衛じゃないか!
「なにこれ」
「ふむ……RPGみたいだが……」
「なに、魔王倒せばいいの?それで終わり?」
「恐らくな」
「じゃあさっさっと魔王のところに行って魔王倒そう」
「待て。いきなり魔王を倒しに行くのは難しいんじゃないか?レベルをあげないと」
「ふぅ……面倒くさいな」
「とにかく先に進もう」
あんたらなに馴染んでんだぁ!!
あれ。いつの間にか真っ白い空間じゃなくなってる……。もう、なんなの、本当に。
とにかく私たち適当に歩いた。
ここはどこかの街道のようだ。本当にRPGの世界みたい。
私たちが呑気に歩いていると、突然黒いコマンドが目の前に現れた。
うおっ!?びっくりする。
コマンド
スライム が あらわれた!
ん?スライム?
よく、目の前を見ると、緑色のぶよぶよした物体が確かにある。よく見ると目と口もある。
えっと?これと戦えってこと?チュートリアルはどこ?
私たちが戸惑っていると、コマンドの文字が進む。
コマンド
リンカ たち は 戸惑って いる
スライム の 攻撃!
リンカに 2 の ダメージ!
はい?
私はスライムに突進の攻撃を受け、尻餅をついた。
い、痛い……以外と痛いな。
ていうかこのコマンド鬱陶しいな……。
敵が現れた時とレベル上がった時だけ教えてくれればいいよ……。
そう思った途端、コマンドが消え失せた。
なんなんだよこの世界……。
とりあえず私は立ち上がり、いつの間にか腰に吊る下げてあった剣を抜く。
おもっ!これ振り回さなきゃならないのか……。
しかし持っているうちに重さが気にならなくなった。なんなのもう……。
蓮見と飛鳥も私に習い、武器を手に持つ。
蓮見はこん棒を、飛鳥はただの棒を。
……なんかおかしくない?武器のチョイスおかしくない?
明らかに攻撃力ない武器だよね?こいつらに戦闘は期待するなってことですか女神様。
ま。まあ、辛うじてこん棒は使える。うん、使える……はず。
「蓮見様と飛鳥くんはなんの魔法が使えるのですか?」
「俺は……ん?クッキー……?」
「俺は……白玉?」
「……それは食べ物の名前では?」
「そうだけど……とにかく使ってみようか」
「そ、そうだな……」
蓮見はスライムに向き合い、こん棒を掲げて叫ぶ。
「クッキー!」
するとどこかから大きいクッキーが現れ、スライム目掛けてすごい勢いでぶつかっていく。
ぶつかったあと、スライムは動かなくなった。
そこでまたコマンドが現れた。
コマンド
ハスミ は スライム を 倒した!
リンカ に 5 の 経験値
リンカ の レベル が あがった!
ハスミ に 5 の 経験値
ハスミ の レベル が あがった!
アスカ に 5 の 経験値
アスカ の レベル が あがった!
アスカ は 団子 を 覚えた!
………もう何も突っ込むまい。
お菓子の名前が魔法って、どうなってるんだこの世界。
「飛鳥くん、念のために『白玉』と『団子』がどういう効果があるか確かめてみましょう」
「そう…だな……。白玉!」
アスカが白玉と叫ぶと、私のちょっと痛かったお尻の痛みがとれた。
どうやら白玉は回復魔法らしい。さすが僧侶。
ということは団子は……。
「団子!」
なにも効果はなさそうだ。たぶんこれはなんらかのステータス異常を起こした時に効く魔法なのだろう。恐らく毒か麻痺に効くはずだ。
「なんとかなりそうだな」
「そうだね」
「そうかしら……」
私たちの旅は始まったばかり。
たぶんきっと続きます。
うん、要望があれば……(笑)