第7話 参謀の能力
北の村メニアは、機械生産で有名な村である。工場が多く、他の村から出稼ぎに来ている者も多くいる。そのため村はいつも多くの人で賑わっている。
メニアに着いたルドルフ、レオ、ゼクス、ニーナは、その光景に目を見開く。すでにオーリウスは殺戮を始めていた。
「くそっ。レオ!」
「はい。おそらくまだ生き残っている人はいます。そちらを優先しつつ、オーリウスを退けましょう。アスカはまだ着いていません。各々、暴れてきてください」
「了解ッス」
ルドルフたちは、散らばってオーリウスの兵士たちと戦闘を始めた。
「ジャンさん。メニアに行かないと」
アスカは戦略室から出ようとする。その腕を、ジャンが掴んだ。
「おぬしは今日はこっち手伝え。第9戦闘部隊は今日人が足りないんじゃ。それに、血を見ないと、強くなれないんじゃろう」
「え。どうして、そのこと」
「ここでも出来ることはたくさんある。それをおぬしに教えてやるわい」
ジャンは、地図を広げる。
「これは、メニアの地図じゃ。こっちからオーリウスが攻めてきた」
ジャンは、地図の北から南にかけて指を下ろす。
『こちら、第4戦闘部隊隊長ルドルフ。ジャンさん。民衆はどっちに逃がせば安全ですか』
通信機器から、ルドルフの声が聞こえてくる。
通信機器は今、メニアに駆けつけている戦闘部隊と繋がっている。全体を把握し、指示をするのが、第9戦闘部隊の仕事だ。
「だそうじゃぞ。おぬしなら、どうする」
第9戦闘部隊の仕事を理解したアスカは、一歩ジャンに近づく。そして、地図に手を伸ばす。
「普通に考えれば、こっち。南に逃がせばいいですよね。でも、周りを囲まれている可能性はあります」
「そうじゃ。たとえ一か所の敵を倒して穴を作っても、周りからすぐに敵が来る」
「なら、どうすれば」
アスカは地図を見渡す。
村の東側に工場のマークが集まり、西側は住宅街になっている。
「あれ。何で、工場は東だけなんですか?」
「それは、ここに山があるからじゃ。川から流れる山水を工場に使っているんじゃろう」
「山? そして川。それなら!」
「なんじゃ。アスカ」
アスカは、通信機器に叫ぶ。
「隊長! 聞こえてますか?」
『アスカか? お前、戦略室にいたのか』
「隊長。東側に山と川があります。それなら、谷となる一本道があるはずです。そこから民衆を逃がしてください。一本道なら、敵が流れ込んできても、数人で対処できるでしょう!」
『……分かった!』
通信機器から、ルドルフの声が消える。
「よく思いついたのぉ。アスカ」
ジャンが、嬉しそうな顔をする。
「でも。成功したかどうか」
アスカはまだ、不安そうな顔を止めない。
戦略室にいて指示するだけでは、実際にどうなっているのか見ることはできない。
『アスカ! よくやった。民衆は無事逃げれたぞ』
『戦闘終了しました』
ルドルフの声とスピーカーの声が同時に響く。
「良かったぁ」
アスカは、安心した顔で椅子に座りこむ。
「アスカ。確かに、実際に助けに行くわけではない。でも、自分の力を活かせる場所ではあるのではないかのぉ」
「でも僕はコアで人を助けたいです。トラウマからも、逃げたくないです」
アスカは、遠慮がちに、しかしはっきりとした口調で言った。ジャンは、アスカの答えを聞き、笑う。
「まあ、チャンスはいくらでもあるからのぉ。気長に行くとするかの」
ジャンの言葉を聞き、アスカは寒気を感じた。
「それより、答え合わせの続きと行くかの」
「あ、はい。末尾にいる強者のみが使える、見えない言の葉。末尾っていうのは最後。強者は言い換えると、兵。つまり、兵士。最後の兵士っていうのは、第9戦闘部隊ということ。見えない言の葉は、情報。そして、第9戦闘部隊のみが使える情報がある場所っていうのは、ここ、戦略室のことだと思いました」
「正解じゃ。戦略室のことは知っとったのに、王室のことは知らんかったんじゃのぉ」
「あ、それ。2つ目の暗号の」
2つ目の暗号は、半分違うとイニスが言っていた。それは、王室についての情報と関係がある。
「王室は、アリステル王国のちょうど中心にあるんじゃ。つまり、連想なんかしなくても、国の中心でそのまま、王室を指しておったんじゃよ」
アスカは、暗号までは正確に解いた。しかし、王室の情報を知らなかったため連想して解くしかなかった。だから、半分正解なのだ。
「じゃが、ここまで辿り着いた。訓練は合格じゃ。参謀の能力も見ることが出来たし、おぬしの力は認めてやるわい」
ジャンがアスカの手に何かを乗せる。
「何ですかこれ」
アスカは、手の平に置かれた物を見る。
それは金属で出来た、小さい細い棒だった。
「第9戦闘部隊隊長が認めた証じゃ。全ての隊長に認めてもらってから意味を成す物になるから、なくすなよ」
アスカは不思議に思いながらも、その細い棒を受け取った。
「はい。ありがとうございました」
アスカは、頭を下げて、戦略室を出て行った。