悪女の親友だけど、とても幸せだと断言できる。
読み終わったら感想ください。
思い付いてから勢いに任せて書いたので、何か可笑しい所があるかもしれません。
私の名前は葵。
けっこうな金持ち学校を特待生の学費免除で通っている、普通の女の子なり~。
「葵~聞いてる?」
「あ~聞いてる聞いてる」
私の隣で、ユリは綺麗なほっぺたを膨らませて、ふてくされていた。
彼女は宮之城 由利亜。
天使のような見た目と金持ちという環境から、甘やかされて育てられた、お姫様みたいな女の子である。
「この間ね、生徒会に近づこうとする女がいたから排除したんだけど、まだ懲りてないみたいなのよ。いっそ、耳を削ぎ落としちゃえばよかったかしら?」
「さあ?ユリのやりたい様にすればいいよ」
残酷なことを日常的な会話のようにいうユリは、色々と変わってる。
独占欲が高く、私が他の子と仲良くすれば激怒し、彼氏を作れば、奪ったり消したりする女の子。
しかし、それも最近はなりを潜めてる。
この学園には、乙ゲーかと思う程の美形が揃った生徒会や風紀委員がある。元々、イケメン好きでミーハーな部分があるユリは逆ハーレムを作りだした。
綺麗さに加え、芝居上手な彼女はぶりっ子をしたりして、生徒会役員やら風紀委員やら美形を虜にした。
まぁ、ぶっちゃけ洗脳に近いし、近づく女は排除するので、誉められないし、悪女と呼ばれると思う。
しかしながら、心に余裕をもつことが出来たのか、私に対する独占欲は薄まっていい。
「まぁ、葵なら一人位はあげてもいいわよ」
あげてもいい、というのは逆ハーレムのメンバーだろう。
「遠慮しておくよ、私はユリがいればそれでいい」
これは本音ではある。
逆ハーレムを作った彼女だが、こうやってちゃんと私のところに来てくれるし、蔑ろには絶対にしない。
「うっ……あ、当たり前よ!」
顔を真っ赤にして、そう叫ぶ彼女の姿は何も変わっていない。
逆ハーレムは作り出して、幸せに浸る彼女を見ていると、論理的に道徳的に間違っていても、私はどうでもよかった。
「 星条 真理亜です。よろしくお願いします!」
ニコッと、みんなの前で挨拶をする転校生は、清純派の美少女だった。
正義感が強く、物怖じしない彼女は皆の人気者になっていた。
それだけならば、よかったかもしれない。
彼女が学園の現状をしった時の台詞がこれだ。
「イジメはよくないことだよ!!」
正義感の強い彼女はそういって、ユリの行動を許さなかった。
イジメはいけないことだと、素晴らしく正論で立派なことをいって、ユリが苛めていた女の子を庇った。
ユリが作り出した逆ハーレムの人たちの洗脳をとき始めていた。
途中でフラグだのハッピーエンドだの訳の分からないことを言ってた気がするが、アレはなんなのか分からない。
星条さんが正論やら正義を行った結果、ユリは孤立した。
本性が暴かれ、イジメが暴かれ、今まで恐喝していたこともバレた彼女に、逆ハー要員は勿論、取り巻きたちも何処かへと行った。
私を除いて……
「私の傍を離れようとしないの?」
「なんで?」
私はキョトンとしてそういった。
離れなければならない理由なんて存在しない。私はユリちゃんが好きで、ユリちゃんも私が好きだ、何が問題ある?
と、聞いたらユリちゃんは顔を真っ赤にして照れながら笑った。
「アナタはそういう人間ね…」
そういう人間だ。
ユリは何も変わっていない。変わったのは周りの環境だ。だから、ユリが孤立しても、最悪だけは何とかなると思った。
しかし、最悪はいきなり訪れた。
「由利亜さん、みんなに謝って!」
ある日突然、星条さんはユリちゃんに向かってそういった。
私が教室で、勉強していた時に邪魔しないようにと気遣った彼女が偶然一人でいた時にだ。
星条さんが言うには、イジメや洗脳はよくないことで、本来は処分を受けるべきである。
しかし、宮之城財閥のお嬢様であるユリちゃんは処分を受けずに生きている。
そんなのは、許されないことだから、せめて迷惑をかけた皆に謝れというのだ。それで許してやるというのだ。
「そ、そうよ!謝りなさいよ!」
「そうだよな!散々好き勝手してきたんだもんな!」
「私も、会長が好きだったのに!!」
星条さんの言葉にみんなは賛同し始めた。
謝れよと、みんなはいう。
結論からいうと、それは正しくて正論なんだと思う。
ユリは、ついに泣きそうになるが、最後の意地で堪える。突き飛ばされ、倒れるユリに星条さんはいった。
「ね?みんなに謝ろうよ。悪いことをしたら、謝るのが当たり前なんだよ。そしたらみんな、ハッピーエンドだよ!」
曇りなき目で、自分は正しいと本気で思っている星条さんの目が、私にはイカれている女にしか見えない。
確かに悪いことをしたら、謝るというのは常識だ。
目に見える形で処分を受ければ、ユリちゃんへの嫌がらせや孤立も薄まるだろう。
ごめんなさい。
この6文字を言えば済むことなのだろう。しかし……
「あーやーまれ!!あーやーまれ!!」
「あーやーまれ!あーやーまれ!!」
360度、あやまれとせまる生徒たちには、被害にあってなく、むしろ同調した奴等も含まれている。
確かにユリは悪女だし、そのことに何の正当性もない。
彼等は自分が絶対的な正義だと信じ、ユリを悪だとみなしている。
人間、正当性を持てば攻撃していいと思うものだ。
正義感からすれば、ユリは糾弾されても仕方ないし、常識からしてユリのやったことは罪だ、それに、星条さんがいうハッピーエンドとかいう為に……
「葵……助けて……」
掠れ、騒音にまみれ、皆に聞こえない声をだしたユリ。
しかし、私の鼓膜にはこべりついて離れてくれない。
私は結論をだす。
アレだ、正義とか常識とかハッピーエンドとか……
んなもん知ったことじゃねーよ。
バキィっと、シャーペンが折れた。
「テェメェエエラァァアア!!!私の親友に何してんだボォォケェエエ!!!」
私は椅子を人だかりにぶつけた。
キャアァア!!と、叫び声がきこえる。
「ちょっ…葵さん!?なんで……こんなの、シナリオには……」
何かブツブツいってるが、私には関係ない。
私の剣幕に周りが引くなか、私は騒ぎの中心に突き進む。
「ふざけてんじゃねえぇえ!!私の親友に何してんだよぉおお!?」
指をさして指摘する。たぶん、この時の私は大分イカれているであろう。
「うっ……何って、皆に悪いことをしたから謝りなさいって…!!」
いきなりキレた私の剣幕に星条さんは立ちすくむが、正しいのは自分だとばかりに胸をはった。
「それに、葵ちゃんだってうんざりしてたんじゃないの?宮之城さんの会社が親の傘下だから一緒にいただけでしょ?」
なんで、そのことを知っているんだ。
彼女の言っていることは殆ど正解である。いや、というか何でこの子は知ってるんだよ。
ドン引きする私に、星条さんは勝利を確信したかのような顔で、慈悲深く、優しくいった。
「嫌なことだって会ったでしょ?本当は最低な子だって気づいてたでしょ?」
ユリはピクリと反応した。
「そう……なの?」
弱々しく、悲しそうにみる彼女の言葉に私は本格的にキレる。
「そうだよ!ユリは最低だよ!!金持ちのお嬢様で見た目が可愛いからって甘やかされて育てられて!世界の中心は自分だと本気で信じる程にバカだし!独占欲で私の彼氏は取るし!その癖自分は逆ハーレム作るし!本当に最低最悪な女だよ!!最初に会ったのだって、ほぼ打算的に親に仕組まれただけだわ!!
で、それがどうしたの?」
ひとしきり、私はユリへの不満をいった。
12年も一緒にいれば、そりゃ嫌な面だって存在するに決まっている。
で、それって大した問題?
そういうと、星条さんは驚いたようにし、まるで計算外だとばかりに慌て出した。
「それがって……だから!!葵ちゃんも嫌だったんでしょ!?不幸だったんでしょ!?それに、宮之城さんは悪いことしたんだから謝るべきなんだよ!!なんで助けようとするの!?」
なんで星条さんは、こんなにも確信をもって、私を不幸だというのか分からない。彼女はまるで未来を確信しているかのようだ。
逆に冷静になった私はいう。
「確かにユリは悪女だと思うよ。謝ってすむなら謝るべきだよ。けどさ、こんなの正義じゃねーよ、正論じゃないよ。私からしたら、親友を泣かそうとする悪だ。
ユリが助けを求めてるんだから、助けるよ私は」
私はそう吐き捨てて、泣く寸前のユリを立たせて抱き寄せ、教室を出るためにドアの方へと足を運ぶ。
星条さんは、こんなのシナリオじゃないだの、ハッピーエンドじゃないだの、ブツブツ言ってるし、周りの生徒たちは、普段大人しい私がキレたことにビビってるのか、何も言わなかった。
教室を出た後、私は裏庭のベンチにユリを座らせた。
ポーッと、何が起きたのかいまいち理解出来てなかったユリだが、途端に泣き出した。
「ヒック……エグ…私…本当に悪いことしたんだ……」
泣き出したユリは、極々普通の女の子だった。
私のやったことは絶対に正しいことじゃない。
ユリだって、何も思ってない訳じゃない。自分は悪いことをしたと自覚すれば、悲しむし、罪悪感だってある。
謝る機会を奪ったのは私だ。
助けて、といった言葉は幻聴だったのかもしれないし、自分の正当性をもつ為だったのかもしれない。
助け出したつもりが、更に苦しめさせたのかもしれない。
というか、私はユリを止めなかった。
確実に、間違った行いをしているユリを、私は止めず、どうでもいいことだと傍観してたし、下手したら笑ってたとも思う。
そんな私が、助けるというのは、間違ってたのかもしれないが……
「葵……ごめんなさい……助けてくれて、ありがとう」
この笑顔を守れたならば、間違っても、よかったかもしれない。
「葵、アナタは……私なんかといて、本当に不幸じゃなかった?」
泣きそうに、苦しそうにいうユリ。まったくもって、何を聞いていたのだろうか?
12年も一緒にいて、なんでこんな簡単なことに気づけないのだろうか?
私は悪女の親友だけど、断言しよう。
「私はユリの親友で、めちゃくちゃ幸せだよ」
何だか、無性に友情ものが書きたかったので書きました。