クリスマス
あるところに一人の少女がいました。その少女の名前は池澤小雪といいました。小雪は小さい頃から体が弱く、病院に入退院を繰り返していました。
とある冬、小雪は病院に入院していました。この病室は小児病棟であるため小雪と同じくらいの男の子・女の子がいました。
「みんな元気にしているかな?」
元気よく声を出して病室に入ってきたのは看護婦の長谷川美雪であった。
「あ、看護婦さんだ。今日は何か聞かせてくれるの?」
と子供たちは楽しみにしていたようでした。それもそのはず、美雪が来ると何かしらお話などを聞かせてくれるからです。
「今日は、みんなが楽しみな、クリスマス会のお知らせだよ。」
と、美雪が言うと、病室にいた男の子・女の子は
「わーい。」
とはしゃいでいましたが、小雪だけは逆に落ち込んだ様子でした。
それは、2年前のクリスマスの日に両親をなくしてしまったからでした。それ以来、クリスマスの時期になると小雪は一人悲しんでいました。
小雪の様子を見た美雪は
(あれ?なんで、小雪ちゃんだけ喜んでいないんだろう?)
と、不安に思っていました。
数日後・・・・
この病院でのクリスマス会の日がやってきました。
小雪以外の子供たちはとても楽しみにしていました。しかし、小雪はこの日が近づくにつれて、悲しみが大きくなっていきました。
ほんとは参加したくなかったのですが、美雪が半ば強引に参加させました。
司会の看護婦が
「さー、みんなお待ちかねのサンタさんの登場です。」
というと、ドアからサンタの格好をした院長先生が入ってきました。
「よいこのみんな、メリークリスマス。」
といって、サンタの格好をした院長先生は子供たちにプレゼントを配っていきました。
小雪にプレゼントを渡そうとすると、小雪は拒否してしまいました。
「あれ、小雪ちゃん、いらないの?」
と聞くと小雪は
「いらない、おもちゃじゃなくてほんとに欲しいのはパパとママだもん。」
と、行ったとたん、わっと泣き出して、部屋から駆け出していきました。
それに気づいた美雪がその後を追いました。しかし、小雪の足は早く、自分のベットに潜るとおお泣きを始めてしまった。
「ね、小雪ちゃん。なんで、いらないといったの?」
というと、小雪は、
「パパとママがいればいいもん」
と泣きながら言った。するとそこに小雪の祖母が病室に入ってきた。
「小雪どうしたの?」
と、祖母は驚いた表情で言った。それはそうである。来てみたらないていたのであるからだ。美雪が
「実は・・・・・・というわけで。」
というと、祖母は、
「あ、そうですね。今日はクリスマスでしたね。よろしければ小雪がクリスマスを嫌いかお話しましょうか。」
と聞かれたので、美雪は
「お願いします。」
といって、ロビーへと移動した。
ロビーで話を聞いた美雪は
「そうでしたか。そうとは知らず・・・すみませんでした。」
「いえいえ、誤るのはこちらの方ですよ。最初に話しておけばよかったですね。あのこもそろそろ直して欲しいと思っていますが、何しろ突然でしたから。」
「でも、子どもってそういうものですよ。私も幼い頃に両親をなくしましたので小雪ちゃんの気持ちはよく分かります。でも、小雪ちゃん一人にかまってられないですからね。」
と美雪は寂しい顔をした。
「あの人たちがいてくれたらよかったのに・・・」
と祖母も悲しそうな顔をした。
1時間後、祖母は病院を後にした。
その後、美雪はナース控え室でため息を吐いていた。
「どうしたの?」
とたずねたのは院長だった。
「あ、院長先生、実は・・・・・・」
「そうか、だからあの時・・・何とかしてみよう。」
「え?何とかできるんですか?」
「ま、してみるだけしてみるよ。」
といって、院長はナース室を後にした。
その夜、美雪は夜勤のため、病院にいた。美雪の担当する小児科は9時には消灯のため、もう、静かであった。
窓から外を見てみると、白いものが少しではあるが降っていた。
「あ、雪だ。今年はホワイトクリスマスか。どうりで寒いはずだ。」
窓から雪を眺めていると、奇妙な音が聞こえてきた。その音は鈴を鳴らすような音に聞こえた。
「しゃんしゃんしゃんしゃん・・・・・」
「あれ?誰もおきていないはずだけど?」
と、思っていると、また鳴り始めた。
「しゃんしゃんしゃんしゃんしゃん・・・・・」
今度は前よりも音が大きくなっていた。
「だれ?鳴らしているのは?」
と思って、ナース室を出た。
「しゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃん・・・・・」
美雪は音のなる方へと進んでいった。
すると、鈴の音が鳴っている部屋の前にたどり着いた。それは小雪のいる病室であった。
美雪は静かにドアを開け、恐る恐る入っていった。
部屋に入ると、小雪のベットの側に、人が立っていた。
「すみませんが、もう面会時間は・・・あれ?院長先生」
そう、サンタの格好をした院長先生が立っていた。
「院長先生、もう消灯時間は過ぎていますが・・・」
「あ、美雪君。しずかに。今から大切なお客さんを迎えるからね。」
と、院長は言った。すると、鈴の音が一段と大きくなった。うるさいというくらいの音だった。しかし、子供たちは誰一人とも起きようとしなかった。すると、窓がひとりでに開き、そこにはサンタの格好をした人と、若い男女がいた。
「よくぞおいでくださいました。この子なんです。」
と院長は小雪をさした。すると、小雪はやはり鈴の音に気が付いて目が覚めた。
「あれ、サンタが二人・・・そして・・・・え?パパ、ママ?」
「小雪・・・」
「小雪ちゃん」
そう、サンタが運んできたのは2年間前になくなった小雪の両親であった。
「パパー、ママー。」
小雪は泣いた。いないはずの両親がここに居るのである。
「なんで、ここにいるの?」
「神様にお願いしたの。『今日一日だけ小雪にあわせてください』と。」
と、母が言うと
「今日一日だけ?明日はいないの?」
「そうよ。でも、小雪、よく聞いてね。この看護婦さんも小雪くらいの時にパパとママがいなくなったんだって。でもね、それから一人で頑張ったんだって。だからね、小雪。この看護婦さんみたいに一人で頑張って欲しいのよ。」
と、母が言うと
「いや、パパとママと一緒にいたいの。」
と泣きながら言った。すると父は
「美雪、パパとママは、ここにはいないけどずっと小雪の事を一日足りとも忘れずにずっと見てきたんだぞ。」
「え?ずっと?」
「そうよ、小雪。遠いお空の上から小雪の事をずっと見てきたんだから。これからも、ずっと見守ってあげるからね。」
「だからやくそくしような。小雪。これからはどんなことにも頑張っていく。いいな。もし出来なかったら、パパとママにずっとあえないぞ。いいね。」
「またいつかあえるよね。」
「小雪がいい子していたらな。」
「うん。わかった。小雪頑張る。」
「よし、がんばれな。」
というと、サンタは
「もう時間だ、早くそりに乗れ。」
というと、両親はそりに乗った。
「看護婦さん、院長先生、どうか小雪の事よろしくお願いします。」
「わかりました。」
と、言うと両親を乗せたそりは天高く消えていった。
両親がいなくなった後、小雪が、
「あのね、美雪お姉ちゃん。今日はほんとにごめんなさい。」
「小雪ちゃん。誤るのはこっちよ。小雪ちゃんの気持ちを知らなかったから・・・。さ、小雪ちゃん、これから大変だけど頑張ろうね。」「うん。」
それから数日後・・・
「ほんとにお世話になりました。」
「美雪おねいちゃん、院長先生、ありがとう。」
「小雪ちゃん、またあおうね。」
「うん。」
「あ、そうそう、これ、預かっていたんだ。はい。」
と院長が、小雪に渡したのは一つの手紙だった。
その中にはこう書いてあった。
「小雪へ
パパとママは、いま、みんなが見ている遠いお空にいます。神様にお願いしたら、これから毎年、クリスマスの日に小雪にあってもいいって、言われたよ。だから、これからはクリスマスをすきになってください。そして、元気にがんばってください。
パパとママより。」
これを見たとたん、小雪は泣き出してしまった。それは悲しい涙でなく、うれしい涙であった。
「美雪お姉ちゃん、毎年パパとママにあえるよ。」
その言葉を聞いた美雪は
「よかったね。」
と、やはり泣きながら言った。同じ経験をしている美雪にとって、小雪が嬉しがるのもわかったようだった。
それから毎年クリスマスになると、小雪は両親と一緒に最高のクリスマスを迎えたのであった。




