第九章【お願い】
「おっ美味しかったです!!」
食事を終えた少女は、丁寧な言葉遣いで、感謝の気持ちを述べた。
「うふふ、私達もそんな事を言って貰えて嬉しいわ」
そう言うと、シチュアーノは、皿を運び片付けを始めた。
淡々と皿を運ぶリリーとシチュアーノの姿を見ていた少女は、いきなり手を上げシチュアーノに向かって訴えかけた。
「私にも、お手伝いさせてください」
どうやら、先ほどから、招かれているだけでは、居心地が悪かったのかもしれない。
「あらっ良い子ね、レオンも見習ったらどう?」
嫌味ったらしく、シチュアーノはレオンに向かって冗談混じりの毒を吐いたが恐らく今週は、薪を持って帰らなかったからだろう。
「仕方ないだろ。時間なかったんだから」
恐らく少女を助けたあの日に本来は薪を持って帰る予定だったようである。
すると、なんとなくそれを察した少女は少し肩を落とした。
「いっイヤ、お前のセイじゃないよ。こんな事になったのにも、なんか訳があるみたいだし」
少女は皿を運びながらコクリとだけ頷いた。
少し責任感を感じているのであろう、しかし、記憶が無いのに誰にも迷惑を掛けるな、というのは無理な話である。
少女は皿を置いてきて戻ってきた後、少しの間黙り込みしばらく思案した後、決心した様にもじもじとしながらこう言った。
「すいません、自分勝手だとは思いますが私を雇ってもらえませんか?」
一瞬辺りが凍りついた。
人を雇う?
そんな事はそうそう決める事が出来ないのは明らかである。
恐らくシチュアーノなら何も言わなくても少女を家に喜んで招きいれるだろう。
しかし、雇うのは、別の話である。シチュアーノもある程度名のある家系ではあったが、ルーズレイトに移り住む事になって初めの時は、人を雇うのをとても嫌がっていたのだ。
「やっやっぱり駄目だったでしょうか?このままじゃ住む場所も無いもので……」
見てくださってありがとうございます。
今回は短いですね。
次回はシチュアーノの【過去】編です。
長編は心折れます(汗)