第1話 『運命 と 色』
つたない文章で、構成力もありません。
少しずつ勉強していけたらと思います。
暖かい目で見守っていただけると嬉しいです。
運命はなんて残酷なんだろう・・・
闇色の瞳に、闇色の髪
闇を纏いし者
それが人々が呼ぶ私の『名』だ。
この世界の人々は、生まれながらに運命と色を纏って誕生する。
赤や黄色、桃色だったり色が交じり合った者さえいる。
しかしこの世界の人々は知らなかった。
黒という『色』を知らなかった。
黒という概念はなくとも、人々はそれが何の色か知っている。
夜の『色』。
闇を表す『色』。
人々はこの『色』を纏う私を本能的に遠ざける。
私の纏う『色』は不吉なものらしい。
私が背負った運命と色、「深遠の闇に愛されし夜の魔女」。
生まれてすぐに私の立場が決まってしまった。
本当にいい迷惑だ。
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ザッ、ザッ、ザッ、ザッ
私は、早く家に帰りたいという思いに、やや足早に通りを歩いていた。
町人達はこちらを見ながら、飽きもせずコソコソといつもの陰口を言っている。
すでに見慣れ、聞き慣れ過ぎて相手にもしたくないが、時折聞こえてくる「・・・闇の・・目が・・・それに・・・」などという陰口を叩く井戸端会議に熱心なおば様集団にクルリと体を向け、超笑顔で「呪うわよ?」などの、ささやかな仕返しをする事もあったりする(笑)
まさか、本当に呪ったりしないけど・・・(できるけど)
18年間不吉だ不吉だと言われ続けていれば、多少は性格がひねたとしても仕方ないでしょ?
私の運命は『夜の魔女』
生まれながらに魔力を持ち、魔法使いになれる運命を持って生まれた。
この世界での魔法使いの地位は、平民でさえ国に仕官出来る程高い。
故に、どんなに不吉な色を纏っていようとも例外なく、魔法学校に無償で通えたのは幸運だった。
そもそも、運命とは何か?色を持って生まれるとは何か?
誕生した瞬間に、母親の口を通して運命の女神の言霊が降りる。
これが運命だ。
私の場合も、母の口を通して『夜の魔女』と告げられたはずだ。
次に色だが、赤ん坊は誕生した時左手に、『生まれ石』といわれる色の付いた丸いガラス球のような物を持って生まれる。
それが、『色』だ。
当然、私の場合は誰も見たことも無い闇の石だったんだろう。
誕生したばかりの赤ん坊は色を纏っていない。
髪の色も瞳の色も、透き通ったガラス球のような状態だ。
『生まれ石』を常に肌身離さず装飾品などにして身に付けさせ、成長と共に球と同じ色を纏っていく。
そうやって生まれた我が子に祝福の意味をこめ、運命と色を合わせた言葉を贈るのだ。
私の場合、『深遠の闇に愛されし夜の魔女』になる。
余談だが、婚姻時にはお互いに球を交換しあう。体の一部のような『生まれ石』を相手に贈ることによって、婚姻が成立するのだ。
私は、名も付けられず『深遠の闇に愛されし夜の魔女』と書かれた手紙と共に孤児院の前に捨てられていたので、本当の父も母も知らずに育った。
孤児院の院長先生は闇色も個性と言い切って、周りの反対を押し切り私を引き取り育ててくれ、ヨル・セラス・セラヴィーンというステキな名を贈ってくださった。
ヨルは運命から、セラスは、院長先生からの贈り物。セラヴィーンは院長先生のファミリーネームだ。
幼い頃一度だけ、なぜ私を引き取ってくれたのか聞いたことがあった。
「あなたを見つけた時、あんまり綺麗で可愛らしい赤ん坊だったから女神様が私に宝物を授けて下さったのだと思ったのよ」
「でも闇色だったでしょ?」
「あなたの、髪も、瞳も、とても美しいわ。大人になればとっても美人になるのは間違いなしよ?」
「美人じゃなくていい!普通がよかった!そしたら虐められないもん!!」
そう言ったら院長先生は少し悲しいお顔をされて、私を抱き寄せた。
「あなたが闇色ではなかったら、出会えなかったかも知れない。こんなに可愛い私の娘。あなたが、あなたとして生まれたことを私は感謝しているわ。それともこんなおばあちゃんのお母さんは嫌かしら?」
その言葉に私は、勢いよく顔を上げた。
「そんなことないよ!ヨルのお母さんは院長先生だけだもん!院長先生がお母さんがいい!院長先生がお母さんじゃなきゃ嫌だよ!!」
私は始めて、母の愛を知ったんだ。自分が愛されていることに初めて気付いた。
自分のことしか考えず、自分を捨てた母を憎み、闇色の髪を短く短く切り、精一杯虚勢を張って生きていた。
そうしないと、心が保てないと思った。
生きていけないと思った。
それほど、人々の私に対する風当たりはひどかったのだ。
その日初めて、今までの辛かった事や悲しかったことを泣きながら『お母さん』に聞いてもらって、夜は一緒のベッドで眠った。
『お母さん』がいたから今の私、ヨル・セラス・セラヴィーンはいる。
『お母さん』が誉めてくれたから闇色の髪も長く伸ばして、今は腰まである。
――――15の夜、『お母さん』が静に息を引き取った。老衰だった。
眠るように、穏やかな顔だった。
私の事をよく思わない人も、このときは沢山『お母さん』に最後のお別れをしにきて、共に泣き、共に思い出を語りあった。
「ありがとう。愛してくれてありがとう。ヨルはあなたがいたから生きてこれた。あなたに恥じないように生きていくから、安らかに眠って下さい。」
愛を教えてくれてありがとう。叱ってくれてありがとう。守ってくれてありがとう。約束通り笑顔で送るから、今は少しだけ・・・少しだけ泣かせてね、お母さん。
お母さんが亡くなって葬儀を済ませたら、すぐに孤児院を出た。
10歳から通っていた魔法使いの学校は、身寄りのない子供には住まいを提供してくれる。
身寄りがない事の証明所を提出すれば、すぐに用意してくれるらしい。
孤児院の新しい院長はすぐに書類を用意してくれた。(厄介払いか!?)
書類を提出して手続きが済めば、すぐに魔法学校の敷地内にある3階立ての建物に案内され、1人部屋が与えられた。簡素な部屋だが私にとっては城だ。
2年後、無事に卒業して魔法使いの仕事が出来る資格証明書を発行してもらった。
ほとんどの卒業生は王国に就職するので資格証明書は必要ない。
私のように、一市民としてギルドで仕事を請け負い、報酬を貰って生活する為には資格証明書が必要なのだ。
あれから1年、いろいろ(?)あったけど何とか生活していけてる。
ギルドの仕事も少しは請けさせてもらえるようになった。(しょぼい仕事ばかりだけど)
最初は仕事を請けさせてもらえなかったりもしたけど、確実に仕事をこなし、魔法使いとしては上級の部類に入る私に少しずつ仕事を依頼してくれる人も増えた。
それなりの生活はできているはず(?)だが、他人との交流がほとんどないので、一般家庭の生活水準がわからない。
孤児院の頃よりは貧しいかもだけど、自由に生きれている今を不自由だとは感じていなかった。
――――― さて、現在私の住んでいる町は、かろうじて王都(?)的な位置にある。
・・・まぁ、要はものすごい町外れだ。
どう見ても裕福とは言い難い人々が数多く住んでいる場所。
その町のさらに町外れまで行くと、道の突き当たり、森を背にしたボロボロの小屋が見えてくる。
その小屋こそ、私が住みかにしている『我が家』だ。
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「ただいま~」
唯一の同居犬に帰宅の挨拶をし、外套を脱ぎながら家に入っていった。
「ステラ?帰ったよ~?」
なかなか姿を見せない同居犬にもう一度声をかけ、少し早めの夕食作りをする為、台所でご飯の支度に取り掛かることにした。
「おかえり~ヨル。」
奥の部屋から眠たそうな間延びした声が響く。
「ただいまステラ、眠そうな声ね。すぐに夕飯の支度するからもう少しまっててね」
のそりと緩慢な動きで、台所に立つ私の横まで来て二本足で立ち上がり、手元を覗き込む。
見た目は狼のような体躯で、体毛は銀色に輝き、瞳はヨルと同じ色を纏っている。
立ち上がると私よりでかいし、見た目も恐ろしげだが、心は乙女(笑)なのだ。
「今日の仕事は、この間の雨で起きた街道の土砂崩れの撤去でしょ?」
「そうだよ。町長ってば、報酬をケチったせいで依頼を受けてくれる魔法使いが現れず困ってたのよね」
「どうせ、その依頼をヨルが引き受けたら、更に報酬をケチられたんでしょう?」
毎度のことに我が相棒(愛犬?)が呆れ交じりの顔で言う。
「うん。でも街道沿いの斜面に強化の魔法をかけたら、一年は土砂崩れ起きないよって言ったら「やれ」とか言うからさ、あの報酬では無理って言ってやった!」
「あはははっ!その時の町長の顔が見たかったわ~」
床に足を戻しひっくり返って笑っているステラを横目に見ながら
「だから、『今日の仕事は撤去のみでしたので以上で終りです。強化はまたギルドで依頼して下さい。では』って帰ってきた♪」
「ぷぷぷ!あそこの街道はしょっちゅう土砂崩れがおきてて、町長の悩みの種だったものね。それを簡単に1年は防げるなんて言われたら「やれ」って言うわよね~」
(うん。明日ギルドに行くのが楽しみだ。)
一年に一回強化の魔法をかける契約をできれば家計が潤う。
この付近の魔法使いで、年単位で強化の魔法を維持できるのは私くらいだし、食いついてくれればもうけものだ。
今後は、戦闘や恋愛も入れていきたいと思っています。
亀更新ですがよろしくお願いします。