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そして俺は宰相になる  作者: ふーげん
第三章 黄金の主編
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第三十二話 火蓋を切る

 メティスはレオに謁見する。


「面を上げよ」


 王の呼びかけに応じる。

 メティスの目に映ったその姿は、為政者としての後光が差し込むかのように輝き、しかしその中に漆黒よりも暗い炎が渦巻いていた。


(ほほう、これは中々......)


「何か面白いものでも見えたか魔法使い」


「いえ、何も我が君(マイロード)


 謁見は粛々と行われた。

 トレゾールで起きたこと、メティスの実績などが読み上げられる。

 魔法使いメティス•アトランティスタはオルディア王国に亡命。対魔動兵器の研究に取り組む事となった。


 ――王宮近くの崖に、一人の少女が佇んでいた。

 その目に光は無く、ただ静かに謁見を眺めていた。


「骨董品の分際で、マモンザ様に逆らうなんて」


 掌から零れ落ちた結晶が砕け、兵士が姿を現す。


「さぁ、獅子へ挨拶に行きましょう」


 ***


「では、メティスさんにはこれから対魔動兵器のスペシャリストとして、対策や装備の改良などを手助けしていただきます。

 研究室などはまた後ほど作らせますので、一旦は待機してください」


 その時、王の間の扉が開く。

 鋼鉄の兵隊を従えた少女がレオに近づく。


「お前さん......どうしてここに......!?」


「骨董品に用は無いの」


 少女はメティスを一瞥するなり吐き捨てる。

 更にレオに近づこうとした時、近衛兵が一斉に刃を向ける。


「これ以上陛下に近づくな。僕が貴様らを斬る事になる」


「別に良いわ。私は伝言係だもの」


 少女は映像機を取り出しボタンを押す。

 画面の中には中年の男性が映っていた。


『御機嫌よう諸君、私はマモンザ・ゴルデリオ』


 一同に緊張が走る。敵の大将が一体なんの用で連絡を取ってきたのか。


『おぉ殿下、いや失礼しましたレオ陛下。

 陛下もご壮健なようで何よりでございます。10年ぶりでございますな』


「お前も変わらず薄汚い商売をしているようだな」


『薄汚いなどと......先代と変わらず頭の硬い御方だ。やはりオルディアは滅ぼした方が世の為ですな』


 玉座から身を乗り出し、怒りに震えるレオをルークは必死に静止する。


『我がゴルト国は、あらゆる個性、魔法を凌駕した。

 我が国は、我が軍は完全勝利を収める下地を作った。


 これより我が国は、貴国に宣戦布告をする。

 気に入ってくれたまえ陛下、富が全ての才覚に勝る瞬間を』


 その時、衛兵が大急ぎで王の間へと駆け付ける。


「急報! 国境付近に謎の砦......いえ、鉄の馬が10体! 王宮に向かっているとの報告が!」


 動揺が広がる。鉄の馬など聞いた事がない。一体何がこちらに向かっているというのか。


『鉄の馬など無粋な呼び方はやめてくれたまえ。

 これは私から陛下への手向けの品なのだよ』


「......答えろマモンザ! 貴様、何を仕掛けた!?」


『超広域制圧用魔動装甲戦車アン・フェール・ソルセルリー!

 世界を破壊する鉄火の砲声を存分に堪能してくれたまえ!』


(戦車だと!?)


 マモンザの発言に何よりも驚いていたのはルークとメティスだった。


「マモンザ! 私はそんなものを作った覚えはないぞ!」


『当然だなメティス。君が作ったのは簡素な魔動火器と、戦争の役に立たん魔動品のみ。

 だから我々は見た! 君の師匠のアーカイブを! 君の設計図を!


 君が凡人と侮る我々は、その愚かさ故に研究を重ね、君達の叡智を吸収し改良した。

 凡人を侮った報いだなメティス、君の驕った知恵の前に死にたまえ』


 映像が途切れる。少女の指示により鋼鉄を纏った兵士が戦闘態勢に入る。


「ふざけた輩共だ! 陛下に仇なす全ては僕が切り伏せる!」


 一閃で切り伏せる――はずだった。


「ブレイブ・キリア、武勇SSS、知略A、対象をS級カテゴリーの認識」


 斬られたはずの兵士は無傷で立っており、衣服が斬られただけだった。


「なに!? ならば......!!」


 ブレイブは渾身の力を振り絞って兵士に斬りかかる。

 しかし、その体に傷をつけるのみで倒すことは出来なかった。


「流石S級カテゴリーね。魔動兵の肉体に傷をつけるなんて......でも、所詮はその程度ね」


 ブレイブの猛攻は魔動兵には届かなかった。個性も魔法も超越した力、それはハッタリでは無かった。

 王国最強の刃が毀れようとしていた。


「くだらんな」


 レオが剣を振り下ろす。青く輝くルーン武器が鋼鉄を豆腐のように切断される。


「個性も魔法も凌駕した? だから貴様は薄汚いと言うのだ。

 人間の積み上げてきた歴史を、研鑽した個性を、ただの通貨が凌駕するなどありえん!」


「魔動兵が斬られた!? あの剣は一体......!」


 少女は残存している魔動兵を連れて退却しようとする。


古代魔法(エンシェントマジック)、夢幻回廊」


 突如、王の間の扉が閉まる。


「逃がさないよお嬢ちゃん、お前さん達のような存在は見たことがない。

 禁断の秘術を躊躇いもなく使いおって......!」


「くだらないモラルで人類の発展を阻害する老害らしい物言いね」


 メティスと少女が構え、呼吸を整える。


「我ら天に加護を受け地に生まれ、黒鉄の刃を以て運命を殺す。

 億万の精霊が我が肉体を寄る辺とし、我が心の成すままに力を振るわん。


 古代魔法(エンシェントマジック)炎鎖双竜(えんさそうりゅう)!」


「第三攻撃術式解放」


 拮抗した弾幕戦が繰り広げられる。ルーク達は弾雨を避けながら魔動兵と斬り合う。

 しかし、その体を切れるのはレオの刃だけだった。


(これ以上は埒が明かないわね)


 少女は周囲を見回す。連れてきた魔動兵は全滅しており、少女一人となっていた。


「分が悪いわ、じゃあね」


 少女の足元に魔法陣が展開され強い光を放つ。刹那、少女の姿が消え、鉄の残骸のみが残った。


「取り逃がしたか......私の結界魔法が破れるなんて」


「あれは......何者なんだメティスさん」


「あれは人造兵士......師匠が封印した禁断魔法の産物だ」


 人造兵士、前世でさえ存在しなかった物がこの異世界で存在している。いや、存在できるようになったんだ。

 想像が創造になった時、クリエイターとしての欲が生まれ、そして封印したんだ。


「相手が誰であろうがどうでもいい、敵は我らに宣戦布告した。

 ならば剣を取れ! 槍を持て! 馬を引いて攻め立てよ! 

 己が喉元に剣を突き立てる不届き者を、血の一片すら残さず殲滅しろ!」


 号令が轟く。

 史上最も凄惨な戦争の幕が上がる。

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