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第一話 謎の青年現る

本編ですー。

基本は毎日投稿できたら良いなと思ってます。

本編のテンポ感を大事にしたいので本文では極力世界観の説明や用語の説明をしません。詳しくは後書きをご覧ください。

小説素人なので稚拙な文だと思いますが、温かい目で見てください。

 ...ま...ルト様...ルークフェルト様!


 突然の大声に俺は飛び起きる。

 どうやら眠ってしまっていたようだ。ん?眠っていた?確かに俺は眠ったがそれは永眠の方だ。

 それにルークフェルトという名も聞き覚えが無い。


 それにここはどこだ?辺り一面を田畑と草木に囲まれ田舎の二文字が相応しい場所じゃないか。


 「ルークフェルト様、またこのような場所で居眠りなどして。後でお父上様に叱ってもらいますからね。」


 銀の瞳が美しく輝く白髪の女性は俺に向かってそういった。

 メイド喫茶にでも出てきそうな如何にもメイドといった装いをした彼女はやや怒ったような顔で俺を見つめていた。


 「ごめんよリナ。すぐ屋敷に戻るから父上には内緒にしててくれないか?この丘は見晴らしが良くてお気に入りなんだ。また父上に怒られてしまったら、今度こそ俺はこの景色を見る事ができなくなってしまう。」


 思考を挟む間もなく、すらすらと言葉が出てきた。

 そして次第に記憶が蘇ってきた。


 俺の名前はルークフェルト・ローズロック。16歳だ。

 何故こんな異世界に別人として生きているのかはさっぱり分からないが、どうやら俺は岡崎 透としての人生に幕を閉じ、今度はルークフェルト・ローズロックとして新たな生を受けたらしい。

 そして俺の今いる世界は俗に言う異世界というやつで、五大大陸の一つであるディッチ大陸の南端、のそのまた南端のローズロック領で暮らしている。まぁド田舎の小さな領主の跡取り息子というわけだ。


 目の前にいる女性はリナ・オーラント。

 幼い頃に家族でこのローズロック領にやってきて、俺の父の下に仕官して以来女中として仕えている。


 「さぁ、ルークフェルト様。そろそろお屋敷の方に戻りましょう。見回りと言ってお屋敷を出てから3時間も経っております。あまり長く戻られないとお父上様も心配なさります。」


 リナはそう言い、しきりに周囲を気にする。

 領主の跡取り息子がメイドと二人きりでこんな遮蔽も何もない丘の上にいるのだ。万が一があったら大変なことになる。

 とは言ってもローズロック領は田舎も良い所なんだし、売りと言えば平和な事というぐらい平和だ。

万が一なんて起こらないとは思うんだけどな。


 「分かったよリナ、そろそろ帰ろう。」


 そして俺たちは馬に乗り、自邸まで戻ることにした。


 レンガ造りの屋敷に青い屋根が太陽に照らされて輝いている。

 庭先には色とりどりの花が咲き、屋敷のすぐ隣には畑がある。

 領主といえど、全てが領民から賄えるわけじゃない。

 うちのように小さな領主は自分達でも耕作をしなくてはいけない。

 といってもそれは全て小作人に任せるので、実質やる事と言えば領内の見回りと近隣の領主との交流、そして鍛錬と勉学の4つだ。


 「おぉ戻ったかルークよ。領内の様子はどうだった?」


 威厳のある力強い声が階段の上から俺を呼ぶ、声の主は俺の父、アーネント・ローズロックだ。

 父上は勇猛果敢で知られ、多くの戦場でその名を轟かせた豪傑だ。

 戦で受けた傷は百を超えるというが、それがただの噂とは思えないほど顔に無数の傷がある。

 元々父上は王都勤めだったが、10年ほど前にこの大陸の大部分を支配していたオルディア王朝が滅亡したため領地に戻っていた。俺は生まれた時からこのローズロック領で暮らしていたので王都の事は何も知らない。都会にこだわりがあった前世の影響で王都ではどんな暮らしをしていたのか興味があったのだが、父上は何も話そうとしないのでその内俺も諦めた。

 ちなみに、ルークというのは俺の愛称の事だ。家族や友人からはそう呼ばれている。


 「ただいま戻りました父上。領内は今日も平和そのものといった感じで、仕事に精を出す者ばかりでしたよ。」


 見回り自体はちゃんとやったのだから報告はする。とはいっても特に報告するような事はない。

 なぜなら報告しなくてはいけないような事件なんかは起こっていないし、そもそもそういう事態になったら家臣が知らせてくれるのだから領主の見回りというのは定期的に領民と交流して関係を維持することが主な目的だ。


 軽い挨拶と報告を済ませ、早々に立ち去ろうとする俺を父は呼び止める。


 「待てルーク、お主今日が何の日か覚えているか?」


 そう、今日はあの日。この世界の成人儀礼の日だ。

 この世界では16歳を迎えた男子は父親と試合を行い、勝利しなくてはならない。

 子が父を超える事で、その一族はより優秀な人間を世に生み出したとアピールするのだ。


 「もちろん覚えています。今日は超討試合えっとうじあいの日ですよね。午後から行うと聞いていたので少し長めに領内を見回っていたのですが、何かありましたか?」


 父アーネントは少し気まずそうな顔をしながら言う。


 「超討試合の件だがな、あれは日を改めようと思う。本当なら今日のような晴れやかな日が最適なのだが、とある来客が突然来てしまってな。いつかは執り行う予定だが、それもいつになるか定かでは無くなってしまった。」


 父上の申し訳なさそうな顔から、誰よりも今日の日を楽しみにしていたのは父上である事は容易に察しがつく。それに父上は何よりもルールや約束事を重んじる人間だ。

 その父上が予定を変更してまで会わなくてはいけない来客とは誰なのだろう?


 「父上が一度口にした予定を変更するとは珍しいですね。よほど大事な来客と思いますが、まさか連合会長のフォントル様ですか?」


 王朝が滅んだとはいえたった10年前だ。その当時の統治システムはまだ生きている。

 アーネントのように小さな領主は隣接する小領主と連合を作り、その中で最も大きな領地を有する者が連合の長として領主たちをまとめている。フォントルはその連合の長だ。


 「まさか、フォントル如きの為にわざわざお前の超討試合を延期するなどありえん。だが、誰が客かはまだ言えんな。後ほど紹介するゆえ暫し待つが良い。」


 父上はそう言い残して応接室へと向かっていった。

連合の長といえど全てにおいて他の領主より優れているわけではない。

 血筋の良い者、金を持っている者、あるいはその両方を持ち合わせている者は所有する領地も多くなる。

 フォントルは両方だ。王家に仕えた貴族の遠縁で、フォントルの曽祖父が銅山を当てたので連合一の土地持ちになっている。武辺者の父上はそういう輩を嫌う。

 そうなるとこの後は暇だ。だらだら時間を潰しても良いが、まだルークフェルトとして得た情報を完全に思い出せてはいない。復習の為に俺は図書室へ向かった。


 図書室で学びなおす内に様々なことを思い出してきた。

 この世界には魔法の概念があり、それは特別な存在ではないこと。そこら辺の農民だって〈足腰の負担を軽減する魔法〉や〈食べ物の好き嫌いを無くす魔法〉なんかを使っているのだからちょっとした便利道具だ。

 むしろ重要なのはスキルの方だ。スキルはただの魔法とは違う天賦の才能。


 この世界はスキル持ちに生まれた時点で勝ち組だ。なぜならスキルは種類によっては世界すら変えてしまう。火•水•土•風のような四大元素の能力はもとより、巨大な隕石を落とすとか何百万という人間を心酔させたりといったような各地で戦争が起こっているこの世界にぴったりな能力までスキルとして存在する。


 身近な例で言えば俺の父上だ。

 父上のスキルは狂戦士バーサーカーだ。傷つけば傷つくほど身体能力が向上するスキルのおかげで危険な戦場ほど武功を挙げて今の地位を手に入れている。


 俺にも何かしらスキルがあれば良かったんだが、あいにく無能力のようで、それらしい特殊能力は今のところ発動していない。

 スキル持ちの人間は大抵の場合10歳を迎えるまでに能力が発動するのだが、俺にはその様子が全くない。

 まぁスキル持ちってだけでチヤホヤされる世界だ。俺がたまたま持ってなくてもおかしくないが、どうせ転生させるなら何かしらのスキルを俺にくれたっていいのに神様も意地悪な存在だよな。


 そんな事を考えながら読書に耽っていると、背後から俺を呼ぶ声が聞こえたので振り返るとリナがいた。


 「ルークフェルト様、お父上様がお呼びです。応接室に来るようにとの事ですのでご準備を。」


 わざわざ俺を応接室に呼ぶなんてどうしたのだろう?

 後ほど会わせると言った客人の事だとは思うが、あまり気乗りしないな。偉い奴ってのは初対面でまず値踏みをしてくる。そこで取るに足らないと判断されれば俺が領主となった時に冷遇されてしまう。


 連合内の地位が落ちないように気品ある後継者を演じなくてはいけないのは骨が折れる。

 だが、そんな事も言ってられないので俺は読んでいた本をしまい応接室へと向かった。


 コンッコンッコンッ


 「父上、ルークフェルトでございます。」


 入れ。と一言が聞こえ、俺は応接室のドアを開ける。

 そこには父アーネントと見慣れない青年が一人。

 ブロンドの綺麗な髪に澄んだ海のような青い瞳。

 服装こそみすぼらしさを感じる麻の服だが、その出で立ちから隠しきれない気品を感じる。


 俺は父上に促されるまま青年の目の前に座り、軽く挨拶をした。


 「ルークフェルト•ローズロックです。よろしくお願いします。」


 青年は何も答えない。気品を感じる客人とはいえ服装は平民そのものだ。

 立場で言えば俺の方が上のように思うが、何で向こうの方が上かのような口調なのだろうか?

 そんな疑問を浮かべている所に父が青年の紹介を始める。


 「こちらの青年はジョン•ブラウン殿。故あって我が屋敷で世話をする事になった。そして、今日からそなた達は義兄弟として暮らしてもらう事になる。」


 父の突然の宣言に思考が停止する。義兄弟?一体何を言っているんだ?そもそもこの男は何者なんだ?何故領民ではなく領主が直々にこの平民を世話しないといけないんだ?そう疑問を浮かべる頃には既に言葉が出ていた。


 「お待ちください父上!突然の事で何が何だか分かりません!いきなりやってきたこの人といきなり義兄弟だと言われても…。せめてこの人の出自とかどういう事情でうちで世話をする事になったとか説明してくれませんか!?」


 しかし、父はその疑問に答えようとはしなかった。


 「その事については今はまだ何も言えん。いずれ時期がくれば話すかもしれんが、今は何を聞かれても答えるつもりはない。そうそう、ジョン殿は確か18歳だからお前の義兄あにという事になるな。あとは若者同士で語り合い打ち解けるが良い。儂は政務がある故失礼する。」


 事情を飲み込めない俺とジョンの2人だけが応接室に取り残される。

 気まずい雰囲気の中なにを言うべきか迷っていると、その沈黙を終わらせたのはジョンだった。


 「ルークフェルトと言ったな。改めて、俺の名はジョン・ブラウン。ジョンで良い、俺もお前の事はルークと呼ぶぞ。これからよろしく頼む我が義弟おとうとよ。」


 退屈だけど平和な毎日が終わる予感がした。

 間違いなく、この先の人生を大きく狂わせる出会いだと俺の直感は告げていた。

用語解説

•ディッチ大陸 この作品の舞台。五大大陸の中で最も広大な大陸で砂漠が広がる灼熱の大地から吹雪が吹き荒れる山岳地帯まで様々なロケーションが存在する。


•魔法 全ての生物は魔力を保有しており、魔力を消費して魔法を使う。人間を含む殆どの生物は最低限の魔力しか無い為、高威力の魔法を使用したり出来ない。魔法使いと呼ばれる一部の人間やエルフには可能。


•スキル 天賦の才能。特定分野のプロレベルの能力から世界を一変させる能力まで様々。スキルが無くても生きていけるが、スキル持ちとして生まれた人間は必ず何かしらの功績を挙げる。


•超討試合 16歳で成人を迎える男子が父親と一騎打ちを行う儀式。父親に膝をつかせるか参ったと言わせれば儀式は終了し、晴れて一人前の男として認められる。

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