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或る儀式

掲載日:2025/10/23

 武雄は、少し変わった男の子であった。別に性格的におかしなところがあるというわけでではない。行動的に少し、普通の子供とは異なった所があるということなのである。しかし、そのことは、皆には知られてはいなかった。武雄だけの秘密であったのだ。

 そもそもの始まりは、ごく些細な出来事であった。

 その時、武雄は、まだ小学生であった。肩からランドセルを下げて、友達と仲良く登校していく後ろ姿が可愛い。

 そんなある日、武雄は、学校のテストで落第点を取ってしまったことがあった。武雄は困り果てた。お母さんに叱られる。どうしよう?そこで、武雄は、一心にすがる気持ちで、神さまにお願いしてみた。彼は、左の手首に、ピンク色のリボンを巻き、それを固く結んで、お母さんに叱られませんようにと、祈ったのだ。

 そして、その結果は、しばらくして、現れた。彼の母親が、突然に旧友と巡り会い、その喜びで、武雄のテストの件をあっさりと許してくれたのだ。これには、武雄も驚いた。そして、心の底から、神様に感謝した。

 そして、それ以後、彼は、何か困りごとが起こると、手首にリボンを巻き、そのたびに、難を逃れることが出来たのであった。あるときは、中学校で、初恋の相手に振られたくない一心で、リボンを巻き、彼女からアタックされるという意外にして幸運な結果を得た。また、高校受験では、リボンを巻いたおかげで、見事に第一志望校に合格できた。そして、高校でも、何度かリボンに救われて、希望の大学医学部にもすんなりと合格できたのであった。

 その都度、武雄は、神さまに感謝することを忘れなかった。不思議なことって、現実にあるんだと、武雄はしみじみと感慨するのであった。

 しかし、武雄が成人するに従って、彼の心に変化があった。簡単に言えば、このおまじないを馬鹿らしく感じ始めたのであった。いい年をして、手首にピンクのリボンを巻くという行為に意味を感じなくなってきたのだ。そして、或る時を境に、彼は、ぷっつりとその儀式を止めてしまった。

 それでいいと、彼は思った。こんなことは、早く終止符を打とう。しかしである。現実は残酷であった。

 その頃から、武雄に不幸な出来事が起こり始めたのである。その頃、武雄は、ある商事会社に勤めていた。その会社で、突然に左遷されたのだ。彼はショックを受けた。平社員にされた彼は、ある日、街角で、交差点を横断中に車に衝突されて、大けがを負った。しばらくの入院の後に、元の生活に戻ったが、今度は、妻の弓枝が別れたいと切り出してきた。これには困った。しかし、弓枝は譲らず、ついに実家へ帰っていった。この頃から、武雄は、あの儀式が気になってきた。あれさえ、元通りにすればいいかもしれない。また幸運にも恵まれるだろう。

 しかしである。それでは、もう、俺は一生、あの儀式に束縛されてしまう。あの儀式に、俺は支配されてしまうのだ。それは辛いことである。どうしよう?

 それからの日々、武雄は、たどり着けない悩みを抱えて、繰り返される不幸に耐えていくしかなかったのである..................。

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