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天蓋の下の秘密

 夜更け、案内された部屋に足を踏み入れた瞬間、思わず息を呑んだ。


 ――大きな天蓋付きのベッドがひとつ。


「えっ……あ、あの、これは……?」


 慌てて振り返ると、案内してきた使用人がにこやかに微笑む。


「奥様と旦那様方なのですから、ご一緒にお休みいただけるよう整えております」


 三人、同時に固まった。

 私の顔は一瞬で真っ赤に染まり、手をぶんぶんと振る。


「ち、違います! ふだんは別々で……!」


「まあまあ、照れ隠しなどなさらず」


 使用人は悪びれる様子もなくにこやかに頭を下げ、そのまま音もなく扉を閉めていった。

 残されたのは、大きなベッドと、私と二人の夫だけ。


 静寂が降りる。鼓動ばかりが耳に響き、息苦しいほどに胸が高鳴る。


 しばしの沈黙を破ったのは、アルベルトさんだった。


「……安心しろ。共に寝るだけだ」


 からかいではなく、柔らかで落ち着いた声音。低い声が夜気に溶け、心臓を震わせる。


 続いて、コンラートさんが静かに言った。


「もし気になるようでしたら、私は椅子で休みます。どうかお気遣いなく」


 その誠実さに、胸がきゅっと締めつけられる。

 どちらも、私を気遣ってくれている――その優しさが甘くて、眩しくて。


 迷いながらも、私はか細い声で呟いた。


「……私、二人になら……いいです」


 視線を上げられないまま言葉を落とすと、両側から温かな気配がそっと寄り添ってくる。

 片方の手が布を整え、もう片方の手が背を支える。二人に挟まれて布団に包まれると、鼓動が大きすぎて耳に届くのではないかと思うほどだった。


 天蓋の下、三人の呼吸が重なり合い、静かな寝息と鼓動が寄り添う。

 ――夏の夜は、こんなにも熱いのだと初めて知った。




 翌朝。

 眩しい夏の光が天蓋越しに差し込み、私は目を覚ました。

 けれど、すぐに布団の中の温もりに気づいてしまう。

 左右から包むような体温。肩にかかる重み。指先に残る確かな感触――。


 思い出した瞬間、全身が熱くなり、布団を頭まで引き寄せてしまった。

 昨夜、あのまま「ただ眠るだけ」では終わらなかったことを、体はよく覚えている。

 息を殺して震える私の耳元に、低く甘い声が落ちた。


「おはよう、アリサ」


 アルベルトさんの声。

 余裕の笑みが浮かんでいるのが、布団越しでもわかる。


 反対側からは、穏やかで真摯な響き。


「……顔を隠さなくても大丈夫です。恥じることなど、何ひとつありません」


 コンラートさんがそっと布団を引き下ろし、優しく視線を絡めてくる。


 どうして二人は、こんなに真っ直ぐで……こんなに熱を帯びた眼差しを向けてくるのだろう。

 頬が真っ赤になったまま俯く私の手を、左右から同時に包み込む。

 その掌の温かさに、昨夜の余韻が蘇り、心臓が跳ねた。


「……そんなに照れられると、また可愛がりたくなるな」


「……いけません。アリサ殿はまだ休まれねば」


 二人の声音が交わる。茶目っ気と誠実さ。けれど、どちらも同じ熱を秘めていて――。


 私はたまらず目を閉じ、小さく呟いた。


「……もう、勘弁してください……」


 それでも二人の指は決して離れず、私を甘やかすように重なっていた。

 夏の朝の光に包まれながら、胸の奥でとろけるような甘さが広がっていく。

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