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【第53話:じかんを稼がれました】

翌日は快調に進めた。

検問は続いていたが、順番はすぐに来て臨検も簡単なものだった。

大きな荷物か人物を探していたのだろう、車内まで見たが細かいかばんなどは調べなかった。

その後はすいすいと進み、昨夜の遅れを取り戻すかのよう。

モンスターとは時々当たるようになったが、馬車を止めるほどの戦闘は起こらない。

走っていってたおして解体してから、走ってもどれるレベルだ。

「たいくつー」

「しりとりしますか?」

「やよぉ‥‥アミュア強いんだもん」

今日はユアとアミュアで外を見ていて、マルタスはまた屋根で寝ている。

昨夜のとりとめのないユアの話しは、マルタスには未消化だったが、話したユアは元気になった。

色々な心配や想いが溢れてしまったのだろう。

一つづつがとても大きく感じて押しつぶされそうになっていたのだ。

そこにはアミュアとの関係もあった、単純にアミュアに甘えれば解決とならなかったのだ。

大人になるとそういうこともあると、最後にマルタスに閉められてその話しは終わった。

グラスを開ける頃には、アミュアが恋しくなって馬車に戻りたっぷり甘えたのだ。

今はアミュアが操縦して、ユアは周囲警戒だ。

「ねえ‥‥アミュアは一人で居た時‥‥あたしと会う前の事おぼえてるの?」

ん?っと考えるアミュア。

「記憶はあるけど‥‥自分のものとは感じないです」

「そかぁ‥‥」

ころんと前向きに、アミュアの膝枕になるユア。

「ユア警戒しないとだめです」

「大丈夫この状態でも警戒してるよ?」

さすさすとふとももを撫でるユア。

「おさわりは禁止です。おろしますよ?」

「くぅん‥‥」

「くすぐったいのです‥‥」

「わかったよぉ」

くるりとお腹の方によこになるユア。

アミュアのお腹に話しかける。

「さみしかったよね?きっと」

「‥‥たぶん?」

「あたしアミュアに会えなかったらきっとあきらめてたの」

さらにアミュアによって、もう顔がお腹に当たる位置。

もごもごとお腹に話すユア。

「‥‥‥‥ありがと」

お礼だけ生糸れたアミュアは微笑みが浮かぶ。

声には甘えと安心を感じられたのだ。

「?あれまた止まってる」

ユアもアミュアの声で身体を起こした。

前方に数は少ないが、検問と思われる渋滞がある。

「ちっと見てくる」

言い終わったときには、しゅっとバネで飛び跳ね、アミュアを全く揺らさず飛び出したユア。

アミュアは後ろの窓を少し開けてノア達にも共有する。

「また検問みたい」

「はーい」

ラウマの声には馬車の停車で予想していたような落ち着き。

「ノア、ちょっと起きましょうね」

寝ていたのかノアを起こす声が聞こえた。




もどったユアから昨日と同じ感じと報告があり、通常の配置に戻る。

それなりに時間を要したが、また進めるようになった。

しばらく進むと町があり、時間的にはもったいないとスルーするのだが、後ろから狼型の魔物に騎乗した憲兵が走ってきて止められた。

町の入口に貼った検問の予備人員が確認に来たのだ。

そこそこ時間は取られたが、問題なく開放された。

「シルバーウルフ系だったね」

「うん、夜霧が怒って噛みつきそう」

くすくすと笑いあうユアとアミュアには、焦燥は薄い。

繰り返しマルタスから大丈夫と言われて、納得しているのだ。

急いだ所で変わらないのだと。

夜霧は夜の闇と、森から魔力をもらう魔物で、この土地では魔力補給が辛いのだ。

できれば最終手段として秘匿したいのもある。

夜に出してあげると、日中狩った魔物の肉を美味しそうに食べたりするので、元気では有る。

「いつかさ‥‥」

ユアがアミュアの肩によりかかり話し出す。

「うん」

「ミルディス公国にいきたいの‥‥海までいきたいな」

「‥‥前に言ってた名前の海?」

「そう‥‥若かったおかあさんとおとうさんが見たという、その海をアミュアと見たい」

「‥‥うれしい‥‥わたしもみたいな」

こてっとアミュアもユアの頭に頬をよせた。

ちょっといい雰囲気なのに、また道が詰まって止める羽目になった。

「もぅ‥‥」

アミュアもちょっと残念そう。

「みてくる!」

ユアの声は空中から聞こえた。

全く馬車が揺れないのに、飛んでいく不思議。

「やたらうまくなったな瞬歩‥‥」

マルタスの声に、びくっとなるアミュア。

「びっくりした?!起きてたんですか?マルタスさん」

屋根から顔を出したマルタスがにやにやする。

「今起きたよ、海のはなしは聞いてないぞ」

「くぅ‥‥」

真っ赤になるアミュアをからかうマルタスだった。




今度は谷が埋まっていてしばらく通れないと言われたユアが戻り、アミュアに相談。

「吹き飛ばしてきます」

鼻息荒くアミュアが走っていった。

何か気に入らないことでも有ったのかとユアは心配そう。

ドーンと前の方から爆裂音がして、すぐにアミュアは戻った。

「やってやりました!」

なぜかにこにこ戻ってくるのだった。

マルタスは左右の崖上をちらちら見て、あごに手を当てている。

「ユアちょっと左側の崖上みてこい」

言うなりマルタスは右側の上に向かい飛び上がる。

マルタスの蹴り足も馬車を揺らさない。

三歩で崖上に上がったマルタス。

両手にはいつの間にか短剣が握られている。

下ではアミュアが吹き飛ばした瓦礫の残りを、役人の指示で片付けている。

遠からず通れるようになるだろう。

崖のふちを見るマルタス。

「なるほど‥‥」

そこには複数の足跡と、なにかの車輪の跡が残っていた。



ユアも戻り、マルタスに報告。

不審そうな顔は同じものを見てきたのであろう。

「車輪と足跡が結構あった‥‥くずしたんだね?」

「そうだな」

マルタスは特にあせりもなく答える。

「これは遅延工作だ」

「ちえんこ?」

へんなところで切るユア。

「‥‥アミュア?」

「じゃまをしてをわざと遅らせる仕掛けをされているということです」

アミュアの解説に口をとがらすユア。

「最初からそういってよ‥‥」

「‥‥」

「‥今夜から出先でも読み書き練習です」

「ひぃ~」

進行方向に街道は一本しか無く、迂回路がないので進むしか無いのだった。

「なぜ時間をかせぐ?なんの準備だ?」

「‥‥一旦先行して偵察するよ」

ユアは夜霧をここで使う決心をする。

敵に見せたくないのもあるが、使い所ではあると斥候兵として判断した。








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