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【第46話:手ごたえがおかしいと思う】

ミーナとレティシアっぽい姿になる二人。

衣類も自分たちの服を漁り、それっぽく整えた。

アミュアは白のミニワンピを、ユアは白とオレンジ系のフレアワンピースだ。

急遽カツラまで借りてきて、本格的だ。

「アミュア‥‥化粧がこくないかな?」

「これくらいでいいのです!変装ですから!」

金髪のカツラでユアがミーナにアミュアがレティシアに変装している。

顔はどうでもよかろうとマルタスに言われたのだが、アミュアが許さなかった。

完璧を目指す必要があるのだと。

いや、いそぐんだが?とのマルタスの意見は黙殺された。

ユアはミーナの方が色が白いからと、真っ白に顔を塗られ、ピンクの頬紅にリップもピンクだ。

「完璧です。もう親でも気づかないでしょう」

ユアにたっぷり化粧ができて、むふーと満足顔のアミュア。

「いや少なくとも俺はきづくが?」

またマルタスの意見はスルーされるのであった。

アミュアは控えめな化粧だけで金髪のカツラをかぶると、なんならレティシア以上にレティシアだった。

「アミュアってやっぱり美人さんだわ‥‥どうやっても美人はきれいなのよ‥‥」

ユアは自分のマネキンの様になった顔と見比べて落ち込む。

「まぁ素材が違いすぎたな」

どすっ!

「ぐええ」

ユアの腰の入った肘打ちがみぞおちに入り、マルタスは革鎧越しにダメージを通された。

足先からひねって威力を通すので、鎧でも防げない威力だった。

みための可愛らしいぷっくり顔とのギャップが酷い。

マルタスじゃなければ死にかねない威力だった。




街で馬車をひろい、郊外の工場街を目指す。

「ここでいい」と下りたのは一区画手前だ。

ここからは徒歩で行く。

先日の騒ぎで立入禁止のテープが貼られ、瓦礫の山脈が出迎えた。

敷地に入ると、瓦礫を背負い黒い巨体が迎えた。

見た目は一人である。

「今日は嬢ちゃんのお供はなしか?変態ぶた」

マルタスの痛烈な口撃。

すっと目線だけよこすエルヴァニス。

あいかわらずの濁った小さな目。

「‥‥‥‥」

無言の視線には感情がこもらない。

「ちゃんと連れてきた風だろ?」

エルヴァニスを見つけた瞬間から、もう隠す気もないマルタス。

いいつつ左右の腰から両手にバゼラードが抜かれる。

軽装の今の状態がマルタスの本気だ。

「今日はにがさねえぞ‥‥しねよ」

きゅっと空気を震わせてマルタスが飛ぶ。

相変わらず起こりが少なく、ユアでも一瞬遅れる。

背中側に隠していた短剣を抜きざま飛んだ白い顔のユアは、エルヴァニスにマルタスが届く寸前、巨体が弾け飛ぶのが見えて踏みとどまった。

ドォォン!

マルタスがきゅばっとアミュアの横まで戻ってかばっている。

「自爆?!」

ユアの声に答えるように爆心地から巨大な影が立ち上がる。

ふよふよと不安定な輪郭が人形をとると、それは巨大なエルヴァニスになった。

「‥‥趣味わるすぎんだろ」

とはマルタスで、背に庇われたアミュアは冷静に詠唱して魔力をこぼしていた。

振りかざした銀ロッドから巨大なピラーが5本飛ぶ。

アイスピラーのトリプルキャストだ。

低温、回転、本数追加である。

ドシュシュシュ!!

音速に近い速度で射出された槍は、一瞬で貫通し着弾点から凍りつく。

「やわらかい?!」

アミュアは手応えが少ないと感じた。

ユアは両目を輝かせ、黄金の大剣を振りかざし切り下ろし。

ぱぁん

いつものように全て塵にするかと思いきや、当たった足の一部分を切り離して、逃げ出す巨大エルヴァニスが左手を向ける。

ユアとマルタスに向け紫の極太ビームが放たれる。

踏み出した足に欠損はなく、穴も空いていなかった。

ぱぁんと雷神で弾いたユアは追い足。

跳ねて避けたマルタスが上空から落ちてきて頭を狙った。

ズドォォオォ!

逆立つ雷が天を焦がすが、さきほどのユアと同じで、頭だけ飛び散らせ下がるとにゅっと頭が生えてくる。

どんっと後ろ側で背をあわせたユアとマルタス。

「なにあれ?」

「しらん」

短く情報交換して別れた。

巨大エルヴァニスが手をかざすが、その腕を冷気のブレスが凍りつかせる。

『シュネーシュライア!!』

アミュアの魔法が打ち込まれたのだ。

いつもの第4階梯よりひとつ下の第3階梯こちらでいう上級魔法だ。

ただし三重詠唱で威力は底上げしている。

上半身を凍らせた巨人に二人の雷撃が入る。

上半身にユア、下半身にマルタスの同時攻撃だ。

ドォォン!

二条の雷が吹き上がり、全てを塵に変えた。

冷気の渦が残る中で黒い粒子が舞い散っていく。

がくっと膝をついたマルタスにユアが駆け寄る。

「だいじょうぶ?マルタスさん!」

残心して周囲警戒しながら話しかけるユア。

アミュアも警戒を解かず、既に詠唱に入っている。

「あぁ‥‥ちっと気合いれすぎたわ‥‥今夜は打ち止めだわ」

そういったマルタスの右手は真っ黒になり、雷の痣に覆われたのだと解る。

先日一度話し合って、この辺りの互いの能力は共有してある。

ユアほど自由に何度も打てるわけではないのだと聞いている。

よしとみて魔力をちらしたアミュアも近づく。

「‥‥にしても手応えがおかしかったな」

「うん‥‥見た目ほど大きさも重さも感じなかったよ」

マルタスにユアが答えた。

「魔法も貫通した感触がすかすかでした」

これはアミュアの意見。

じっと考えていたマルタスがガバっと立ち上がる。

「やばい!もどるぞ!!」

言うなり走り出すマルタス。

身体強化の入った前衛は馬よりも早い。

ユアはアミュアを横抱きにして追いはじめるが速度差でついていけない。

「飛んでいこう!マルタスさんが気づいたのは囮ってこどだよ!」

言うなり抱かれたまま詠唱を始めるアミュア。

今夜は大分魔法を撃ったので、少し魔力節約に詠唱を工夫する。

真っ白な魔力を吹き出し、ユアごと飛行魔法で飛び上がるアミュア。

途中で手つなぎに移して横にユアを引いて高度を上げた。

燃費が悪いので、普段あまり使わないが、異世界では常用し慣れているアミュア。

ユアが遠景に気づいて漏らす。

「‥‥燃えている」

「‥ヴァルディア家の方向だ。急ごう!」

まだ小さく見えているが、距離を考えたら結構な火かもしれない。

速度をあげるアミュアはとっくにマルタスを追い越し、市街地の上空で魔法を解除、石礫のように抱き合ってヴァルディア家に向かい落ちていった。






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