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わたしの手が届いたとき  作者: Dizzy
第1章
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【第2話:ひまわりの家】

私は妻に先立たれ、さみしく余生をこの家とともにしてきた。

小さな家だがここには妻の人生が、私の人生が刻まれているのだ。

結婚した後すぐに建てたこの小さな城は、すでに耐久度が残り少ない。

私と同じだな。

それでもちょこちょこ手直しし、住みやすさは保っているのだ。

妻が愛した城だからなと。


少し前にとなりの家に新しい住人がやってきた。

となりと言ってもそれなりに距離があり表情までは判らない。

それでも、しっかり声が聞き分けれるときもある。

若い娘さんたちでハンターらしい。

初日から全力で楽しんでいるのがこちらまで届いた。

最初は「やれやれ」と騒ぎに悩ませられるのを覚悟した。

だが彼女たちにはさわがしいだけではない何かがあった。


ちゃんと引っ越しの挨拶にもそろって訪れた。

「こんにちわ!おとなりに越してきました!!」

元気なひまわりのような女の子で、思ったよりずっと若かった。

あかるい茶髪が肩の辺りで切りそろえられている。

うしろには同じ顔の少女が三人並んでいる。

三つ子だろうか。

年の頃は四人とも同じくらいだ。

「これはお土産?ん、ちがったかもです?」

そういって挨拶の品をさしだす二人目の少女は、明るい銀髪がサラリと背に流れる。

静かな表情が手渡す瞬間にニコっと笑い、ひさしぶりに私の心臓に負荷がかかった。

「片付けなどしてますので、音がうるさかったらごめんなさいね」

そういって眉を下げた三人目の少女は、ゆるりとウエーブした長い金髪をゆらした。

どこか神々しさすら感じる慈しみの微笑み。

「ノアはうるさくないよ!」

その少女の横からは全く同じ顔で、かわいらしい満開の笑顔で自己紹介までする四人目の少女。

『ノアがいちばんうるさい』ですよ」

他の三人の声がそろって、ノアと呼ばれた少女はほほを膨らませた。

少し暗い銀髪は三つ編み一本にされ胸元にゆれていた。

最初のひまわりさん以外は同じ顔で、笑っている。

四人共とても美人で将来がたのしみだと、他人の私ですら思った。

「これからよろしくね!おじいちゃん」

そういって手を出してくる最初のひまわり少女の手をそっと握る。

「こちらこそよろしく」

わたしの表情はちゃんと笑顔になっていただろうか?

久しぶりだったので自信がなかったが、返ってきた四つの笑顔は十分な手応えをくれるのだった。

わいわいと話しながらもどっていく四人を見送る。

これは騒がしい日常になりそうだなと、楽しみにしている私がいるのだった。




「ねーねーラウマ、ぱんつとってえ?」

頭を大きなタオルでつつみ、おしおししながらノアが歩いてくる。

「もう、ノアは着替えを揃えてからシャワーに入るとよいですよ」

いいながらもタンスから下着をそろえてくれるラウマの表情は微笑み。

「はだかで歩いてはいけませんノア。危険な魔法が発動します」

静かな表情で「女の子魔法」を心配するアミュア。

ユアに教わった秘密で、女の子のはだかには男性を狂気化させる恐ろしい魔法があるらしいのだ。

アミュアは最近お気に入りの絵本をソファで読んでいた。

今日はユアが出かけているので、三人だけで過ごしている。

そろそろ晩ごはんの支度を、となった頃にノアが家に戻った。

庭で遊んでいたノアが泥だらけだったので、ラウマにお風呂を先に済ますよう言われたのだった。

すっかりお母さんポジションのラウマであった。

アミュアはちょっとお姉さん風な、姉ポジションだろうか?

キッチンにもどり料理をつづけるラウマはフリルのついたかわいいエプロン姿。

細いラインで蛍光イエローの差し色が鮮やかに入る。

キッチンの入口には同じデザインで差し色の違うものがあと3着ある。

着るものがまじらない工夫で、4人のパーソナルカラーを決めたのだ。

これは下着にも小さなマークが縫い付けられ、個別に管理し安くなる。

ラウマが黄色、アミュアが水色、ノアが紫、ユアはオレンジだ。

もともとその系統の色の服がそれぞれに多く、手間は少なかった。

一番多く服を持っていたユアの、黄色個体がラウマにお下がりされたのだった。

アミュアの服はそもそもユアが水色で揃えていたし、ノアもあまり衣服を持っていなかったので買い足した。

こうして家を持ち生活することで、一緒にいる工夫がされていく。

それがとても幸せだなとラウマは感じるのであった。

ごはんを作る手間も、おいしいと食べてくれる笑顔の価値に比べれば安いものなのだ。

着替え終わったノアがソファのアミュアの前に行く。

「アミュアかわかして」

じろっと見てから絵本を置く。

「乾かしてください、おねえさまです」

「べつにアミュアがおねえさんって決めてないよ」

「いえ、合流順に順位がついています」

「合流順のおねえさんってこと?」

「んぐ、なんかちがいますね」

いいながら生活魔法を使い温風でノアの髪をかわかすアミュア。

ちゃんと櫛もいれてくれる辺りは、言うほど嫌がっていない。

そうしてノアの髪が銀色に乾く頃、ユアが帰ってきた。

「ただいまー!、みてみてみてみて!!」

ユアは鉢植えのひまわりを持っていた。

「かわいいでしょ!これ出窓に置きたいって探していたの」

そういって一人一人にひまわりを見せて回ったユア。

「もう季節的に無理かと諦めてたけど。うれしいな!」

手のひらほどの、かわいらしいひまわりがにっこり咲いている。

それに頬ずりするユアもにっこりだ。

他の荷物を器用に腕にひっかけ、丸い鉢植えのひまわりを持ちロフトの階段を上るユア。

左右にあるロフトに上がる階段は、結構な斜度でせまいのだが手すりには触れずにトトンとあがる。

体幹の鍛え方が尋常ではないと見て取れた。

ユアは前衛職のスペシャリストなのだ。

アミュアとユアのベッドのあいだに小さな細い出窓が有る。

そこの小さなスペースにピタリと鉢植えが収まった。

「おぉ!完璧な大きさ」

満足しておりてくるユアもひまわりのようににっこりしていたのだった。

ユアの笑顔が三人の顔も笑顔にする。

帰宅した瞬間に部屋が明るくなった感覚すらあるのだ。

四人の暮らしは幸せに包まれていた。




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