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【第26話:たたかいつづける覚悟】

取り乱すエーラを次女達に任せ、ハンターオフィスに向かうノアとラウマ。

事件として報告と、ルメリナのユアとマルタス、間に合えばとカーニャにもと一筆手紙を書く。

「いつとどくの?おねえさん‥」

ノアはあせりがうかがえる表情。

そっとラウマは肩を抱く。

「落ち着こうねノア。おねえさんに急かしても早く着いたりしませんよぉ」

落ち着いたラウマの声で、ノアも少し深呼吸。

「‥‥ごめん。落ち着いた」

自分の焦りを認識したノアが急速に落ち着きを取り戻す。

「‥ごめんねノアちゃん‥今日の定期便は一つ前の汽車ででちゃったのよ。スリックデンを経由するから‥‥3日後ってとこね」

きりりと眉が上がるノアの肩をぐっと引くラウマ。

答えからノアの行動を予測したのだ。

かわりにラウマが告げる。

「わかりましたわ。では事件の件は女子寮のエーラかセレナに聞いて下さい。大至急捜索依頼を。私達は想定外緊急対応に従い、一旦依頼元のオフィスマスターへ報告義務を優先させてもらいますね。依頼中ですので」

すっと受付嬢に近づき囁く。

「カーニャにはできれば穏便に伝えてほしいです‥‥すぐ応援を連れて戻りますので、可能なら私達を待つようにと」

すらすらとそれだけ言うとノアを引いて外を目指す。

「らうまぁ‥‥」

しょんぼりするノアに耳打ち。

「走ったほうがはやいですねぇ‥‥夜霧で」

「あ!!そうか!」

二人はホテルを引き払い、夜半には王都を立った。




アミュアをそっとソファに寝かせるユア。

あの後マルタスの話しを聞いて、あまりのショックに意識を失ったのだ。

ここまでお姫様抱っこで帰ってきた。

ユアですらくらりと眼の前が暗くなるような、凄惨な話だった。

(マルタスさん‥‥辛かったんだろうな‥)

ユアがもっとも心を痛めたのは、マルタスの心を慮って(おもんばかって)だ。

ユアもずいぶんと喪失を経験してきたが、マルタスの痛みを察することが出来なかった。

アミュアに毛布をそっと掛けるユア。

(アミュア‥‥きっとあたしよりも胸をいためたのね‥‥)

賢者会の恐ろしさの一端を今夜マルタスから聞いた。

想像すら出来ない恐ろしい被害にあった沢山の人。

その犠牲の出た事件の顛末と、その後の賢者会との戦いを聞いた。

自分たちより小さい子も同じ様な犠牲にあった、そう聞いた所でアミュアがダウンしたのだ。

胸が悪くなるとはこのことかと、ユアは奥歯を噛み締めた。

そこまでの悪意を人間が持てると今日初めて知ったのだった。

ユアですら胃液の味がしたきがして、吐き気を覚えた。

(途中でアミュアを外させたらよかったな‥‥辛い思いをさせちゃった)

ながらくバディとして戦い、いくつもの死線を越えたので、アミュアに対して配慮がかけていたと反省するユア。

(最初はただ死体を見ただけで倒れていたんだ‥アミュアは‥‥ダメだなあたし)

そっと銀色の髪をなでるユア。

アミュアの顔色はまだ悪い。

(おとうさんおかあさん‥‥あたしはどうしたらいいんだろう。‥‥アミュアを遠ざけるべき?)

人づてに聞いたものだが、戦いに生きた二人を思うユア。

母は戦場でユアを身ごもったと聞いた。

もちろんそこに答えなど無いのだが、弱った心がすがるのだ。

ふとアミュアを見れば、父母の喪失のいたみとアミュアは共に有ってくれた。

こうして落ち着いて思い出せることすら、アミュアの労りのおかげなのだ。

(これからもハンターを続ければ悲しい事、辛いこともあるあも‥二人で乗り越えてきたんだ‥その先に希望を見てあるいてきたのだもの‥‥アミュアを置いては行けない)

そっと覆うように膝立ちのユアがアミュアを抱く。

恐ろしい犠牲者達の顛末が、アミュアに少しでも襲ったらと想像すると目眩がするユア。

(あたしが守る‥‥何が有ってもアミュアを傷つけさせない。だから側に居てねアミュア)

ユアもアミュアに支えられてここまで来たのだ。

戦う道を選んできた。

それがユアにとっても楽な道ではないと知りつつも。

アミュアの顔色が大分良くなり、体温も上がったのを感じてそっと放すユア。

キッチンでコップに水を汲んだ。

水は2階にある大きなタンクにアミュア達で生活魔法を使い毎日貯めてくれる。

ごくんごくと一気に飲み干し、口元を袖でぬぐうユア。

コップを置きふと気になっていることを思い出す。

「セリシア‥‥大丈夫かな‥‥」

一度戦った影獣で、解りあい別れた相手だ。

(セリシアだってあたしと同じくらいの年だった‥‥外見上は?‥‥ううん話して解った。きっと同じ痛みを覚え、同じ悲しみを味わった‥‥あたしが味あわせた‥‥)

セリシアの仇はユアだったのだ。

セルミアの妹と名乗った。

理不尽だなとユアは悲しくなったのだ。

セルミアはきっと滅びを望んでいた。

今色々とセルミアの事情もレヴァントゥスから聞き、気付きを得て思えば全ての行動に狂気が有ったのだ。

我が身を省みない滅びへ向かう狂気が。

(影獣はどうして生まれたの?ダウスレムもセルミアもただ静かな終わりを求めていたのに)

そんなことまで思いが至るユアであった。

全ての悲しみがそこから始まったように感じるのだ。

悲しみをたどり母の父の死まで遡り思う。

影獣が居なかったならば‥彼らがただの人であったなら‥と。

ユアは右手をじっと見る。

答えてと問い詰めるように雷神の気配を見るのだ。




その夜遅くにに一度起きたアミュアに、食欲はないと言われ、温かいココアだけ飲ませ寝かしつけた。

なかなか手を離さず、そっと抜き取ると目を覚ますアミュアに手こずりやっと寝かしつけたのだ。

もう夜明けが近く、東側の空は明るくなってきている。

ロフトを降りると庭に気配が止まる。

夜霧のものだと解り、そっと玄関を出る。

「ユア!」

ノアが駆けてきて抱きつく。

「どうしたのノア?ラウマ?」

夜霧を撫でて還すラウマが来る。

「ミーナとレティが攫われました。手口がセルミアと一緒だった」

びくっとユアの腕に力が入る。

前衛のノアですら痛みと感じるレベルだ。

ぎぎという音に驚いて上向くノアは、歯を食いしばったユアの、真っ赤に燃える瞳に怯えた。

金色のオーラがちりちりと舞っていた。



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