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【第25話:なかよしがふえると】

ミーナとエーラは大学生。

魔法大学に今年飛び級で進学してきた魔法学院卒の才女だ。

ミーナは魔法学院すら飛び級で入っているので、まだ14才だ。

この国で魔法士の需要は非常に多く、自ずと地位も高くなる。

飛び級は現場サイドからも推奨されるが、学校側としても、同業他社との力関係もあり簡単に認めはしない。

エーラとミーナはその良い例外に当たるのだ。

かつてこの国を震撼させた天才カーニャの再来とも期待され、実際に血縁でもあるミーナ。

昨年学院の文化祭で発表された新方式の魔石バッテリー。

この全く新しい画期的発想に、魔導具開発業界の隅々まで知れ渡った才女エーラ。

2人はまさしく時代に求められる才能であったろう。

構内の実験棟の一つに2人は居る。

今日はエーラの研究課題の実験で、ミーナに協力してもらっている。

「良いよ!あげてあげて!」

エーラが自分でも氷属性の魔法を制御しながら、ミーナに指示を出し風属性の魔力を重ねて紡がせる。

2人がかりでの複合魔法を発動するのだ。

低温低圧を限定的に作り封じる結界を作ったのだ。

これはアミュアから指導を受け、実験室でだけ再現出来た秘匿技術だ。

まだ世に出す予定も無い。

ガラスのゲージ内で励起された魔石の列が起動して行く。

「いいよいいよ!」

事前に実験の内容も、目標も共有済みなので、良し悪しと強弱の指示だけでいい。

「そこまで!!」

ゲージ内に放出していた魔力を二人で息を合わせてカットする。

「‥‥」

「‥‥どうなの??」

「まって‥‥‥‥よし!!成功よ!!」「やったあ!!」

パチンとハイタッチの二人は満面の笑み。

「これで一気にロスを減らせるはず。数値は取れたから、次からは大規模作成で活かすだけ!」

ぎゅっと抱き合う二人。

「ありがとうミーナ‥‥貴女と二人じゃなきゃ無理だった」

「ううん‥‥嬉しいけどこれはエーラが凄いのよ。わたしは手伝っただけよぉ」

「ふふ‥‥ありがと。でも精密制御できて、呼吸まで揃えられないと出来ない。こんなの‥‥ミーナとじゃなきゃ成功するわけ無いよ」

「えへっ、打ち上げいかないとね!レティ達が準備してくれてるのよ!」

「気が早いな!失敗したら無駄になっちゃうよ」

「ならないよ!そんときは残念会だから!」

「あははっ」

こうしてたった二人で完成させた低温低圧高伝導の新設計魔石バッテリーは、世界を変えるほどの力を持っていると、まだ二人には解らなかったのだった。




「では‥‥エーラ女史の開発成功を祝して!」

『カンパーーイ!!』

魔法学院の女子寮の一室。

レティシアの部屋の前室である。

ここに会場を置き、7名の女子が集ってミーナの音頭で乾杯をあげた。

夏休みのメンバー達だ。

『おめでとー!』

「やったねえ!」

そうやって、ばしばし背中に張り手をいれるのが、この女子寮の流儀である。

1年前では考え付きもしない空気感は、ミーナ達の努力の賜物でも有る。

外部からノアとラウマを招き入れてのパーティも、以前であれば不可能事であった。

『自由な風が新しい発想と変化を呼ぶ』

これが今の学院が掲げるコンセプトにすらなっているのだ。

風紀など、後付で良いのだと。

それが現在の気風となっていた。

実際に結果が伴うので、表立った反対がし辛いようだ。

「ミーナって結構皆んなにたよられてるのね」

ノアがこっそりミーナの評価をラウマに耳打ち。

「そうですね、やっぱりカーニャさんと同じ血ですね。資質はあったのでしょう」

ラウマもにっこりで答えた。

女の子ばかりが集い、色々と遠慮のない会話をはばかること無く出来る。

女子会の雰囲気が際限なく盛り上がる。

それはとても楽しい事なのだなと、ノアとラウマはそれぞれに感じ取るのだった。




「楽しかったね!人数が多いとなんだか、遠慮がなくなっちゃうね!レティと抱っこしたよ!」

「うんうん、すっかり仲良くなれましたね。わたしもとても楽しかったわ」

ぬいぐるみ繋がりもあり、ノアと少女達の親和性は高かった。

寮からの帰り道で、仲良しの余韻を楽しむ二人。

アルコールなどなかったのに、まるでほろ酔いの様に頬をそめる二人。

女の子の匂いと楽しい雰囲気に酔わされたのだ。

ノアはレティシアと交換してもらった、白いおさるのぬいぐるみを大事そうに抱いている。

お気に入りの白猫と交換してもらったのだ。

ぬいぐるみに頬擦りするノアは一目惚れだった、この白いおさるに。

まもなくホテルに着く頃、後ろで突然騒ぎが起きる。

カン!カン!カン!カン!

高い鐘の音が狂ったように鳴り響く。

振り向いたノアは青ざめ嫌な予感に苛まれる。

「まさか‥‥」

さっき後にした学園の方向から聞こえた激しい鐘の音は、王国で共通の合図。

火災だった。

ちろちろと内壁側から炎の舌が夜空に伸び上がる。

ここからあの見え方なら、相当の大火だ。

「先行する!」

「りょうかい!」

短く発したノアは、ぬいぐるみをしまうのすら忘れ、駆け出した。

(いや‥‥いやよ!‥‥きっと違う?!)

ノアの鋭い空間把握が、火は学院だと告げる。

もう強化魔法も発動し、言葉通りの全力失踪だ。

道を蹴り、屋根を蹴り、宙を飛び学院を目指す。




「ノア!!大丈夫ですか??」

やっと追いついたラウマは、消し止められつつある火災に胸をなでおろす。

内壁の防備と消火体勢は万全のようだ。

ノアはぺたんと女の子座りになり、白いおさるを抱いている。

「うん‥‥よかった寮じゃなかったよ‥‥クスン」

ノアは安堵からか涙も流しておさるを抱きしめる。

すっかり汚して黒ずんでしまった。

(後で生活魔法で洗ってあげないとですね。ふふ、ノアはあの子達が本当に好きになったのね)

ラウマはノアの成長を嬉しく思うのだった。

ふとラウマの脳裏に不安と違和感が湧き、眉をひそめた。

去年のスリックデンの大火を思い出したのだ。

(あれは結局セルミアが研究所を襲うための、目眩ましだった!)

その時寮の扉を開け放ち、駆けてくる人影がある。

「ラウマさん!ノアさん!」

走ってくるのはエーラだった。

あちこちぶるんと揺れて走りづらそう。

ノアが立ち上がり、走り寄る。

ラウマもいそいで追った。

エーラは泣いていたのだ。

「どうしたの!?エーラ落ち着いて!」

ラウマが珍しく強い言葉でエーラの肩を抱きとめる。

「いったい何が有ったの?!」

問うノアの胸をまた不安が蝕む。

「み‥‥ミーナとレティシアがいないの‥‥探したのに‥‥どこにも」

ふうっと意識を失いそうになり、眼の前が暗くなったノア。

ぐっと力が湧いて踏みとどまる。

(しっかりしろ!Cランクなんだよ!ノア)

ぐっと奥歯を噛みしめるノアが、瞬きをするとそこには鋭い眼光が残る。

ユアと同じ戦士の目だった。







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