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【第24話:ためらいと伝えたいこと】

ごめんなさい。マルタスの読んだ手紙の説明が抜けていました。

加筆しました!

ロフトの上に籐製のシングルベッドが2つ並んでいる。

アミュアとユアのベッドだ。

2つの間には縦に細い出窓が有り、小さな鉢植えが置いてある。

季節はずれで頑張っていたひまわりもついにくたびれて首を下げている。

今日はカーニャも泊まって3人なので、ベッドをくっつけて3人で寝たのだ。

右にアミュアが寝てその隣にユア。

ユアのベッドにカーニャが寝ている。

アミュアも今夜は頑張って、3人で遅くまで話していた。

ひまわりの鉢植えについて、カーニャの化粧についてと色々話題を変えつつずいぶん話した。

3人しか居ないのだからはばかることもなく大声で話してもいいのに、なぜか囁くように小声で話しクスクスと声を潜めて笑いあう。

話す話題などきっとなんでもいいのだった。

ただ3人でベッドの中で仲良く話した。

それだけで満足なのだ。

まるで家族になったように感じられたのだ。

本当の姉妹のようだと。

ユアに抱かれてついにアミュアが寝てしまう。

なかなか離してくれなかったが、そっと寝かしつけたユア。

「ねちゃった‥‥」

「ふふ‥‥かわいいねアミュア」

化粧を落として綺麗に笑うカーニャは少女のよう。

「でしょ?小さいときはもっとかわいかったなぁ」

もぞもぞとユアがカーニャの隣に移動してくる。

「わかるぅミーナもそうよ、小さい頃なかなか手を離さなくって困ったことあるわ」

「ミーナ元気かなぁ、ずいぶん大きくなったよね?」

二人はちょっと距離をつめ肩を触れ合わせる。

互いの体温で、淋しさを補填しあうのだ。

「うん‥‥嬉しいんだけど‥‥ちょっと淋しいよね」

「うんうん‥アミュアもどんどん頼もしくなって‥‥でも淋しくも思う‥‥」

こうしてたまに話題がとぎれるのだが、見つめあうと不思議と言葉も要らないと思える。

相手の労りや想いが伝わるのだ。

夜の青い光に照らされて、瞳の色が普段と違って見える。

カーニャはユアの淋しさを思い。

ユアはカーニャの孤独を思う。

互いに踏み込まないが、解っているのだと伝え合うのだ。

「明日‥駅まで一緒にいってもいい?」

ユアの声には少し淋しさが混じってしまう。

「もちろん‥少しお買い物してから行こうかな。ユアも付き合ってくれる?」

カーニャの声には淋しさは無い。

瞳にそれを残し、こぼさないから。

こぼさずとも瞳の色が、ユアには見て取れる。

「うん‥」

ユアの返事には淋しさに切ない想いが乗る。

別れるのがつらいのだ。

買い物は楽しくて、きっと直ぐに時間が過ぎてしまうと思ったのだ。

「そろそろ寝ようか」

ささやくカーニャにまた言葉少ないユア。

「うん」

付けていた肩を離し目を閉じるカーニャ。

ユアの手をしっかりと握って寝るのであった。

ユアはずっとカーニャを見ていた。

焼き付けるように見つめたのだった。

次はいつこうして眠れるのかわからないのだと。




翌日カーニャを見送ったユアが、ハンターオフィスの向かい側にある喫茶店に入る。

アミュアと待ち合わせているのだ。

アミュアは買い物も同行せず、今日は行く所があると一人で出かけた。

気を使ったのがユアには判り、申し訳なくも思ったが甘えることにした。

王都行きの魔導汽車がでると、泣くことこそなかったが、ユアは淋しそうに街にもどってきたのだ。

店の前でにこっと笑顔を一度作り、ガラスのドアに写った自分をチェックした。

淋しそうにしていたら、アミュアにもっと気を使わせてしまうと思ったのだ。

時間が中途半端なので、客はまばらでアミュアは見当たらない。

恐らく奥のボックスだなと、マスターに目線だけであいさつ。

にっこりすると親指で奥を差された。

予想通りらしいと、奥に進むユアはすぐアミュアを見つけた。

「おまたせ!アミュア待ったかな?」

「おかえりなさいユア。へいきです」

にっこり迎えてくれるアミュアは、本を読んでいたようだ。

ここのボックスは半円のボックスで、向かい側というより右側の方があう位置関係。

ココアのカップをコースターに置いたアミュアが、今日仕入れたらしい本をしまい込む。

腰に有るベルトポーチは空間収納だ。

今日はこのあとオフィスに行くので、銀のロッドが座席に置いてあった。

いつもの戦闘装備だが、アミュアは布装備なので違和感なく喫茶店に溶け込んでいる。

ユアは革鎧なので、少し浮いていた。

場所柄ハンターも普段から多いのであまり目立ったりはしない。

「さっき先に一度オフィスによったのです」

アミュアは本をしまうと話しだした。

真剣な表情に何か有ったのかと、ユアも気を引き締める。

「マルタスさんが怪我をして、今日は病院だそうです」

「異常事態だね‥なるほど‥‥」

マルタスの実力は二人共身を持って知っている。

それが入院を要する怪我となればただ事ではない。

たしか賢者会とかを追っていたはず。

もともとマルタスに会いに来たので、目標地点変更ということだ。

病院とハンターが言えば、オフィス提携の総合病院を差し、そんなに遠くないのでそこへ向かうこととした。



「いや、おおげさなんだよ。たいしたことない」

マルタスは似合わない寝間着を着せられ、ベッドに半身を起こして迎え入れた。

右肩ははだけられ、ギブスがはめられており、包帯も痛々しい。

コンコンとそのギブスを拳でたたくマルタス。

「骨も折れてないし、ちょっとかすり傷だ。んで?どうした?」

アミュアとユアが目線を合わせ、うなずく。

アミュアが手紙を出しマルタスに渡した。

王都のノア達からの手紙だ。

昨日の報告のあと預かってもらっていたそれを、帰宅してから読んだのだ。

アミュアはそれを抑えていて、さっき戻ったユアに説明し、許可を取って今マルタスにわたった。

手紙自体はユア宛だったのだ。

読めなくてアミュアに読んでもらったが。

「驚いたな‥‥ああ、ありがとう返すな」

手紙をかえしたマルタスは目を閉じ黙考する。

手紙はレヴァントゥスからで、セリシアがスリックデンの賢者会系研究所に囚われたと。

助けて欲しいと書いてあった。

アミュアはカーニャを見送ってからユアに教えたのだ。

ぴくとまぶたが動くのは、ためらいのしるしだ。

「‥‥いや話しておこう。あまり気持ちの良い話ではないが。お前らはきっと無関係で居られないだろう」

そういってマルタスは長い話を始めた。



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