表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/102

【第14話:あまいお話とあまくないお話】

今夜は晴れ上がり、丸々とした上弦の月が誇らしげにのぼった。

細い出窓から斜めに差し込んだ月光がカーニャの横顔を照らした。

伏せられた目はまだ寝ていない気配が残ると見て、声をかけるユア。

「ねぇ?」

隣に寝ているアミュアを起こさないよう、向かい側のロフトに聞こえぬよう、最小にしぼった声がカーニャに届く。

「もう寝ないとアミュアに怒られちゃうわ」

カーニャも最小にしぼりユアの顔の側までいってささやく。

クスリとした微笑みがついてくる。

言葉と言葉のあいだにたっぷりの余韻をはさむ、深夜のないしょ話は二人の大好物だ。

夜ふかしして翌日寝坊するとアミュアに怒られてしまう。

アミュアは寝付きが良く、こういったイベントに参加できずふくれるのだ。

「ずっとね‥‥考えてて。カーニャに言いたかったの」

ユアもカーニャのマネをして、カーニャの耳元に囁く。

アミュアとは違う、少し大人っぽい甘い匂いがした。

じっと至近距離で見つめ合ってにこにこする二人。

カーニャが近づいたので、もう同じ枕に横になり向かい合っていた。

いつまでもユアが話さないので、しかたなくまた近づいて耳元に訊く。

「なぁに?」

にっこりするユア。

カーニャが返事してくるのをまっていたのだ。

さらに近づいたユアがぴととくっついて耳元にささやいた。

「カーニャはきっと上手にできるよ‥‥」

意味がわからずかあっと真っ赤になるカーニャ。

もうお互いの顔もみえない距離で、互いの耳だけに話しかけているのだ。

話す方だけ横を向く会話。

「どうゆう意味よ?わかんないわ」

聴きたい方は少し上を向くのだが、面倒になったユアがカーニャに覆いかぶさり互いの口元に耳を持ってくる。

「前に言ってたじゃない、スライム退治のあと」

「ん?なんだっけ?」

「バディを組んでも上手にできないって」

あぁと、納得のカーニャ。

勘違いで、大分大人っぽい想像をしてしまっていた。

密着するとさらに心を開いてしまう。

互いの温度が口を軽くして、気持ちが素直に伝わってしまう。

ほろ酔いの心地よさのように。

ユアがささやき続ける。

やさしい小さな声でカーニャの耳に吹き込んだ。

「あたしもカーニャとは喧嘩したりしたくないけど、ああゆうにカーニャが困ってるんじゃないかなって思うと、ちょっと心配になっちゃう」

ユアにしては珍しい長文を、カーニャの耳にささやきいれる。

すこしくすぐったいが嫌な感触ではない。

ユアは本当は、一緒に来て欲しいと言いたいのだ。

カーニャには察しられたが、押し付けない優しさも受け取る。

ちょっとだけその優しさに甘えることにした。

「ありがと」

カーニャもそっとユアの耳に唇を添え囁くのだった。

「いつかまた、一緒に旅にいきたいな」

ぎゅっと抱きついて甘えるようにユアが言う。

ユアはお姉さん気質だが、甘えるのも上手である。

「うん‥‥きっと楽しいわね」

しばらく待っていると、ユアが若干重くなる。

すうすうと寝息にかわったユア。

(ねちゃったなユア)

ちょっと重かったので、となりにそっと下ろすカーニャがユアの寝顔を見下ろす。

安心したような、にこりとした微笑みで寝ている。

そっとカーニャの唇がユアの耳にちかづく。

「優しい子‥いい子ね」

耳の横にあるユアのほほが急に愛おしくなるカーニャは、そっと唇を添えるのだった。

母が我が子に落とすキスのように。




翌日ハンターオフィス2階の会議室に集まる一行。

マルタスを含めて、ユア達も全員参加だ。

最初の議題はカーニャを呼び寄せた案件。

ユア達のBクラスパーティの件だったが、王都からの返答はあくまでユア・アミュアのバディに対するものだと、クリアすれば同時に個人としてもBクラスにするとも返答が来たとマルタスから報告だった。

次にユア達からレヴァントゥスの手紙の一部「ルメリナに危機が」の部分も報告した。

賢者会の名を聞いたマルタスの反応は、昨夜のカーニャと同じだ。

青ざめたのだ。

マルタスが一度目を閉じ熟考してから話し出す。

「この件は俺が預かる。お前らは一切関わることを禁ずる」

ぶーぶーとユアやノアは不満そう。

「遊びじゃなくなる。七星賢者会はそうゆう相手だ」

カーニャはうなずく。

ラウマとアミュアは首をかしげ、ユアとノアは不満顔。

「・・・若い頃な、賢者会と揉めたことがあるんだ。結構ガチにな」

マルタスの表情は冗談を受け付けない表情。

そうして真面目に話すと、ちゃんと大人の凄みがあるのだった。

「何人か犠牲も出たし、手打ちになるまでかなり苦労した。俺の上司の首が飛んだな。あんときは」

じっとユアとノアを交互に見る。

「軽々しく関わるんじゃねえぞ。大人に任せておけ、この件は」

ちょっと威圧を含む迫力があった。

ユアはマルタスの心配する親心みたいなものを受取り、ちょっと感動する。

ノアはやっぱりわかんない、といった顔。

ノアの頭をぽんぽんとして、カーニャもフォロー。

「ノアも言う事聞いておこうね。もし叶うならお願いしたいこともあるんだけど?」

頭にカーニャの手を乗せたまま、くりっと見上げるノア。

「なになに?たのしいこと?」

ちょっと期待した雰囲気でにんまり。

「ノアとラウマは時間が出来たでしょ?試験いかないし」

うんうんと二人はうなずく。

「できたら王都でミーナを見守って欲しいの。ずいぶん王都を開けちゃったから心配なのよ」

にっこりするカーニャ。

「依賴扱いでオフィスに指名クエスト出すから、報酬ははずむわよ?」

「やったー!!いくいく」

「カーニャ、あまりノアを甘やかさないでくださいね、ミーナはわたくしがしっかり見ていますから、ユア達をお願いします」

喜ぶノアと安心させるように笑顔で受けるラウマ。

「おねがいね。ユア達の事はまかせて」

そうして一旦は方針が決まるのだった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ