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【第11話:カーニャのめんどうごと】

カーニャは非常に面倒なことに巻き込まれていた。

元は王都への応援依賴だったが、現地に来てみたらあれよあれよと奥地に誘われた。

いまはドワーフしか住まわないといわれる、最奥の山脈まで至っていた。

なにぶん奥地のことで、ハンターオフィスに依賴をだしてもなかなか反応がない。

なかには1年以上塩漬けになった依賴もごろごろあったりするのだ。

それらの苦情をいっきに片付ける妙案が、カーニャ投入である。

「これも結局私をSクラスにどうしても上げたくない、あいつらの嫌がらせかな?」

王都から追い払いたいのもあるだろう。

「まあ、困っていたのは本当だろうしね。後はこの件で一段落だからルメリナに行ける」

ちょっと明るい表情を取り戻すカーニャ。

「ユア達元気にしてるかな?」

しばらく顔を見ていない友達を思い出して、笑顔になったのだ。

辺鄙な集落レベルの村に、可愛らしい家が何軒か集まりならんでいる。

赤い砂岩の家は夕暮れに染まったような色で並び、屋根の赤と競り合っていた

どれも絵本に出てきそうなデザインで、少し小さ目だ。

小さ目なドワーフ達に合わせて作られているのだ。

そのうちの一件がハンターオフィスの出張所を兼任する、商店になっている。

からんとドアベルをならし、小さなドアをかがんで抜けた。

カーニャの身長だと、おでこが当たる高さなのだ。

中に入れば低い天井ながらも、頭はぎりぎり当たらない。

ジャンプは厳禁だ。

「こんにちわ、てあれ?!嘘でしょ?」

挨拶のあと目を見開いたカーニャが見つめる先にはユアがいたのだ。

「やほ!カーニャ。手伝いにきたよ」

ぷるぷるしながら人差し指を突きつけるカーニャ。

「どうして?なんでこんな所にいるのよ?!」

カウンターの奥のおばちゃんが文句を言う。

「こんな所とはひどいねカーニャ」

「ちち、ちがうのマレエさんこの子がいたから?!」

マレエはドワーフの女性で、小さな顔をこてんと曲げてユアを見ていた。

「この子はどこの子だい?」

「はい!いて!?ルメリナから応援にきました!ユアです」

元気に右手を上げようとして天井に当たるが、ひるまず自己紹介するユア。

ちょうどユアが入った直後に、カーニャがきたのだった。

「もう!説明して!?ユア」




この村にはもちろん喫茶店など無いわけで、ちょっと見晴らしの良い広場でお茶を入れた。

ここからは大分ふもとの方まで見通せて、鉄道の線路と終端の駅が見えた。

駅からは丸一日以上徒歩でかかる距離だ。

最後の馬車駅からでも半日以上の登山となる。

「なるほど‥‥そんなことがあったのね。セリシア‥‥セルミアの妹か‥‥」

そこまで考えたカーニャがん?っとなる。

「まって、影獣ってどうやって繁殖するんだろう?」

ひゃあ、とユアは真っ赤になって両手で顔を隠す。

「カーニャ繁殖てw」

「ちょ、ちょっと!変なこと考えないでよね!がくじゅつてき思考よ!!」

ちょっとあやしい学術になったが、反論するカーニャ。

今はカーニャの馬車から持ち出しているテーブルセットに二人で座っていた。

カーニャの馬車は小型で、この村まで入ってこられたのだ。

同じ広場の端に鎮座した真っ赤な馬車は、懐かしの装備を色々積んでいた。

「でも本当にそうだね?セルミアの母親とかが居るとは聞かない」

「でしょ!気になるところでしょ?」

ふたりでうんうん考えてみたが、結論は出ない。

「あ、そっかセリシアに聞けばいいよ今度会ったら」

腕組のカーニャ。

「それもそうか、影獣のことは影獣に聞けばいいわね。妹だって言うなら血の繋がりがあるのだろうし」

「そっくりだったよ?目元とか。ちょっとかわいくした感じ16~17才くらいかな?あたしと同じ年くらい」

しばらくセリシア談義に花が咲いた。

その後は互いの近況も報告しあう。

「そうなんだ‥‥、本当に大変だったねカーニャ。あたしも頑張って手伝うよ」

「ありがとうユア。これで最後の依賴なんだけど。一人だと面倒すぎて」

カーニャも解決の方針が見えてうきうきだ。

「さすがにここに来てもう4日だからね。何にもないでしょ?ここ」

ユアもちらりと見回して答えた。

「お店はさっきのオフィスだけなんでしょ?」

「そうそう。買い物も食事もお預けでね。もう潤いがないのよここ、山ばっかりだし」




カーニャを困らせていた依賴はモンスターの駆除。

とある坑道で増えだしたスライムをなんとかしてくれと、それだけの依賴だった。

「ただね、このスライム物理無効で、魔法にも耐性があってね。火に弱いから本来は駆除でこまる魔物じゃないんだけどね」

上位のスライムには多い耐性てんこ盛り。

ただしもれなく火には弱くよく燃える。

魔法の火ではなくても燃えるし、魔法なら更に良く燃える。

「ここが坑道じゃなければ楽なのよ」

複雑な分岐と迷路のように入り組んだ通路が、隠れる場所をいくらでも作ってしまう。

ユアが疑問をぶつける。

「奥行きはそんなにないってマレエさん言ってたよ?」

「途中でループしてるのよ、通路」

こまり眉のカーニャ。

ループ箇所があると追い詰めても逃げられる構造。

「だから二人ならすぐ終わるかもね、ありがとユア」

二手に追い込めばもれなく退治できる理屈だ。

「注意点があるの、よく聞いてね」

カーニャはそう言うと、目的の坑道の少し手前で止まった。

①ここのスライムは魔法を使う、珍しい雷魔法だ。

②そんなに強い魔法じゃなく、結界を貼るか身体強化の魔力膜防御でもしのげる。

③装備を壊す。(これが厄介)

④繁殖力が強くすぐ増える。

⑤生き物は食べない。 

「最初は村の人に手伝ってもらったのよ。そしたら、普通にスライムの方が村の人より強いのよ!」

だれかにまとわりつかれると、こちらの攻撃手段がなくなるのだ。

一緒に燃やすわけにもいかないので、力で引っ張り出し救出する。

これは前衛の人間なら全く困らない程度の力なので、カーニャには面倒だけが残っていたのだ。


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