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【第10話:あっちこっちで動いた】

とっさに無詠唱の結界魔法を使うアミュア。

刹那にミーナとレティシアを含めた3人を包む結界が貼られる。

初動を押さえられなかったので、自分の体を中心に貼った小さな結界ごと前に飛ばされる。

座席を2列へし折って停まった時には、ミーナもレティシアも気を失っていた。

さっと二人の脈と呼吸を確認するアミュア。

出血も無いようだ。

ユアの指導もあり手慣れてきた、状態確認。

手順を事前に決めてあるので、慌てず行動できるのだ。

結界がバリンと軽い音で割れ落ちた。

アミュアは腰のロッドを抜き詠唱を始める。

前のセレナ達も気になるが、ここを押さえてからと焦る気持ちをいなし詠唱を終えた。

ミーナとレティシアがひとまとめに組み合い倒れている。

(すこし我慢してね、体勢なおしてあげたいけど時間が惜しい)

2色プリズムの多角形で構成された半球状の結界をミーナとレティシアに貼り、自身は前席の確認に動いた。

「セレナ!フィオナ!!」

短く呼びかけるが答えがない。

ドーンと新たな衝撃があり、側面の扉が内側に弾ける。

ミーナ達に貼った結界付近だが、この程度の衝撃なら結界が通さないと自信があるアミュアは、前席の確認を優先した。

「くっ!!」

思ったよりもひどい状況だった。

窓はすべてわれて内側に降り注いだようで、侍女達は血まみれでぐったり動かない。

出血量が少ないと見て、軽症と断定正面の空間から飛び出した。

頭が越えた所でレビテーションを一瞬だけ発動し、飛距離を稼ぐアミュア。

上下に移動する術だが、水平方向の慣性を無くすわけではなく、使い方によっては戦闘機動に使えるのだ。

目視による周囲確認とディテクトイビルの行使を同時に行いながら、距離を稼いだアミュアは受け身を取り、立ち上がる。

大型の影獣が3体いる。

ディテクトイビルの反応とも重なり、現状の敵性戦力は以上と断定。

3匹のうち2匹がこちらを振り向く。

クマ型と思われる影獣だが、大きさが尋常ではない。

今までに見たものの倍近い質量で、一匹あたりの大きさが大型馬車に匹敵する。

継続して視界の端にディテクトのマップを出しておく。

詠唱する時間を惜しんで、無詠唱の光魔法を放つ。

黄色のレーザービームが3本走り、影獣それぞれを貫く。

中級光魔法の「マグネティクフォトン」を三本うちだした。

目標が大きいので外しはしない。

ダメージ期待ではなく注意を引く魔法だった。

ヘイトがこちらに向いたのを確認せず詠唱に入る。

ぐうっとアミュアが魔力に包まれ浮き上がる。

超高速詠唱は音の連なりと化し、意味を読み取れなくなり、複雑な音程と抑揚をもって歌い上げられる。

ドドッドドッドドッ!と3匹が重量感ある突撃でアミュアに迫る。

地面も地震のように揺れているようだが、浮いているアミュアには関係ない。

真紅と黄金のプリズム魔力に包まれたアミュアが詠唱を終える。

輝く金色がアミュアの眼前に収束し、巨大なピンク色の光の玉となる。

キュキュキシクウゥゥゥゥン!!

3本の太い筋を大気に刻む加速重粒子がピンク色の閃光となって3匹を貫き地に立つ。

浮き上がっていたアミュアが直近の影獣に打ち込んだのは加速されピンク色に荷電された重金属の粒子。

光と炎の複合上級魔法「ハイメガフォトンビーム」ソリス仕込みの失われた異世界の魔法である。

射線が上からなので、地面を一瞬で沸騰させ泡立つオレンジ色にする。

影獣は頭から体を貫通され、アミュアの足元で痙攣している。

レビテーションで減速したアミュアはすぐ横に飛び降りた。

無言で左手をむけ金色の光りが溢れだす。

「うぐぐぐ」

奥歯を噛み締めたアミュアは、もう悲鳴を上げること無く影獣を浄化していく。

使用者に痛みを伴う、ラウマの奇跡を成す左手だ。

左手から流れ込み全身を責める痛みがアミュアを襲う。

自身の魔力では一回も発動出来ない超魔術を、奇跡の力を魔力に変換して撃った。

そして今わずかながら奇跡の力として影獣を吸収するのだ。

収支は合わないが、ただ失うよりはましだ。

獣が全て影を落とした時、そこに女性の影がのこる。

(ああぁ死体が残るタイプか、いやだな)

成長したアミュアはその程度ですまし、気絶するような無様はもうさらさないのだった。

影獣が消失するとき、どうゆう条件かはわからないが、全て消えるパターンと死体が残るパターンがあったのだ。

アミュアは死体がとても怖いので近づきたくはないなと考えた。




「とりゃあ!」「よいしょ!」「やあ!」

などとちょっとかわいい掛け声でノアが攻撃する。

腰に短剣があるのに抜かず、両手に影の爪を4本ずつはやして攻撃していた。

ルメリナ直近の岩山にダンジョンがあるのだが、そこから溢れてくる岩ヘビが群れて困ると依頼があったのだ。

掛け声のたびに砕かれた岩ヘビが転がりちらかる。

ラウマは余裕があると見て、すでに解体を初めていて、それでも追いつかず岩の残骸は増えていた。

「ふむ・・・これくらいのペースなら、余裕でCランクでもいいと思うが」

バインダーを手に、記録をつけているマルタスが呟いた。

「強いのは知ってたけど、マジでユアクラスの動きだな」

あらためて戦場で見るノアは、訓練場で手を抜いていたのがありありと解った。

洗練さはユアほどではないが、バイタリティとスピードはノアが勝るかも知れない。

(なんか紫に輝くふちどりは強化魔法か?ずっと掛けてるが魔力も多いのか?)

ラウマは慣れてきていて、手際良く魔石と報酬部位である瞳の宝石を集めている。

「ラウマ!時々周囲警戒しないと減点になるからな!」

まったく周囲警戒をしないラウマに指導するマルタス。

にこにこと手を振り返し「はーい」などと言うラウマに、戦闘をしている緊張感はない。

ピタとそのラウマが止まり、右の斜面を見ている。

ぶわっと魔力が吹き上がり詠唱を初めたとわかる。

金色の魔力は光魔法。

ノアもちらりと見るが、岩ヘビの残りがまだ多く手が離せないようだ。

ザワリ

そこまでいってマルタスも異変に気づく。

「なんだ!へんな気配が!?」

叫ぶマルタスの声に重なってラウマの魔法が完成する。

バキッバキッ

太い幹を押し倒し巨大な影が割り現れた。

ココココォォゥ!!

でた瞬間を狙ったように、同じ高さまで浮き上がっていたラウマが、左手のロッドから4本の光線を曲射した。

きれいに頭部と胸部に収束し貫いていった。

すたっとラウマが着地し、両手を向けると倒れた影獣が小さくなっていく。

御本尊ラウマの奇跡の手だ。

アミュアやユアよりも遥かに早く吸収する。

シュウポンってくらいのペースだ。

「ふう、あぶないところでしたわ」

ぱんぱんと両手で服のホコリを払うラウマには緊張した所もなく、特別な会敵を感じさせなかった。

「だ・・大丈夫か?!ラウマ!」

マルタスの声に気づきにっこり笑ったラウマが両手を頭の上で振り返した。

「平気でしたわ。マルタスさんもご無事ですかぁ?」

逆に心配されてしまったマルタスだった。

みやればノアも結局被弾無しで4~50匹の岩ヘビを砕き終わり、小山になった残骸の上で座ってにこにこしていた。

運動して楽しかったみたいな顔だ。

(なんだか強すぎないか?こいつら・・・)

冷や汗が流れるマルタスであった。


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