表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わたしの手が届いたとき  作者: Dizzy
第1章
1/23

【回顧1:プロローグ】

第三部スタートです。第一部「わたしのつなぎたい手」第二部「わたしがわたしになるまで」を先にどうぞ。続きのお話です。





むかしむかし、人はみんな、小さな光のたまで生まれてきました。


その光はまっしろで、すきとおっていて、やさしいひかりを放っていました。


けれど、くらしていくうちに、いろんな色がぬられていきます。


青や赤、きれいな色もあれば、ちょっとかなしい色もあります。



ーーーー


少年は全てを失いここにたどり着いた。

育った村も、家族も。


何日も森をさまよい、食事も水も与えられず。

朝露をすすり木の実を集め、寒さに凍え至ったのだ。

少年の名はマルコ今年8才になったばかりだった。

涙は初日で枯れ果て、声も二日目には出なくなり、今日には視界も定かでは無くなっていた。


まもなく失われるはずだった命が泉にたどり着く。

午後の光は濃い緑をすかし柔らかく神秘的に泉を見せる。

深い森の奥に隠されていた、美しい青い水が乾いた少年を潤した。


しばらく休んでいると少年はすぐ近くに、葉をすかした緑で染められる白い石の祠を見つた。

そこまでよろめきながら近づくマルコ。

近づいてみると祠は思っていたよりも大きいことがわかる。

何段かある(きざはし)を上ると、そこには白い大きな石像が有った。

薄暗い祠の中にあるのは、優しい微笑みを浮かべた女神の立像だ。

日陰に立つ像は反射を受けて照らされ、浮き上がって見える。

女神は微笑みとともに両手をマルコに差し出していた。

見たこともない美しい姿で、マルコはこわごわその手を取る。

石でできた冷たい手だが、マルコの壊れかけた心に確かに癒やしを与えるのだった。


そうしてぽーっと女神の顔を眺めて手を繋いでいたマルコのおなかが鳴る。

とても空腹だったのだ。

そうして手を離してお腹を両手で押さえしゃがむと、そこに丸いパンが供えられていた。

女神の足元に紙をしき置かれたそれはお供え物。


マルコの生まれたミルディス公国では、異教徒はけがれたものと言われ忌避されていた。

偶像も禁止され、まして偶像に捧げられた異教徒の供物など、汚物以下と教会に教わる。

捧げられ時間のたったパンには、カビが浮き香ばしさもなかったが、お腹がすいているマルコにはごちそうに見えた。

(これはけがれたもの。口にすればただれて死ぬ?)

マルコの故郷ではそう習うのであった。

マルコはとても迷いましたが、3日もろくなものを食べてなかったので、とても食べたいと思った。

(少しだけなら…?でも、食べたらけがれが…?)

少しだけ時間が経過し、泉の水だけ腹一杯に飲んでみたが、満たされない。

誰も訪れるものもいないようで、咎めるものとていない。

マルコは誘惑に負け、カビをこそげ落とし口にした。

味はともかくお腹は膨れたので幸せになり眠気がおそった。

ころんと寝転んだマルコは女神像を見上げる。

(すごくきれいだな‥‥どこもけがれていないと思うのだけど‥)

そうしてだんだん眠くなりそこで寝てしまうのだった。




翌日目覚めるとマルコは誰かが近づいてくるのに気付く。

あわてたマルコは祠の中に隠れるのだった。


気配はどんどん近づき、女神の像に向かうようだ。

マルコは隠れる所がないので、女神像を背負いそのうしろに立っていた。

(じっとしていればわからないはず)

カサカサと何か気配があり、女神像の足元で動く手が見えた。

あわてたマルコはさらに身を縮めるのだが、気配を察しられてしまう。

「だれかいるのですか?」

高い声は少女のものだった。

「そういえばパンが残っていなかったな?森の獣もラウマ様から持っていったりしないのに」

ぎくっとするマルコはどうして良いのか考えつかず、目を閉じて震えていた。

まもなく声が掛けらる。

「あら?君どこの子?どうしたの随分汚れてしまって?」

あきらめて目を開けたマルコの前には、像を回り込んだ少女が見下ろしていた。

少女のほうが少し背が高いのだった。

10歳程度の幼さの残る少女。

さらりとした髪は薄茶色で肩まで流れている。

整った容姿はどこか女神像に似ているとマルコは思った。

「わたしはエイリス、このラウマの祠を守る一族の者です」

マルコが震えながらだまっているので、不審に思ったエイリスは首をかしげ尋ねる。

肩までの髪がさらりと揺れた。

「あなたのお名前は?」

差し伸べられた白い手は、マルコには眩しく感じられまっすぐ見ることが出来なかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ