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カギ、売ります

読んで頂きありがとうございます。


カギの仕組みについてはこの動画が分かりやすいです。

古中國鎖-一字形簧片鎖 開鎖作動 

https://www.youtube.com/watch?v=7l60D4HHG-0


分かりやすく説明できるよう試行錯誤しています。

 正午過ぎ。夏の日が高く登り容赦なく照り付ける。

 食堂の外に十人ほどの商人達が一列に並び、軒下の割り当てられた区画に持ち込んだ各々の品を置いていく。

 顔を彩る化粧品、髪を飾る組み紐や髪飾り、汲みたての水で冷やされた果物。商品を入れて来た木箱を即席の陳列台にして呼び込みを行う様はさながら小ぶりな市場のようだった。


 ここは(ねい)国の都、首都景淵(けいえん)のさらに中心、皇帝の住まう北辰(ほくしん)城の後宮。

 今日は月に一度、城門の外から商人達がやって来る日だった。

 王族に仕えるために後宮の中にいることを許されているのは、自ら身体の一部を切り落とした宦官と全国各地から宮女として集められた女性達である。

 そのためここに並んだ商人達も年齢の差はあれど、みな女性だった。

 食事を終えた宮女たちが商人達のほうへ次々に集まる。ある者は連れだって、またある者は手書きの紙片を手にしながら商品を見て歩き、気に入った品があれば値段を交渉してゆく。


「まあ綺麗。新作ね」


 (かんざし)を手に取っていた宮女がすぐ隣の店に目を移す。


「あら、ここも装身具のお店ね。(かんざし)を売っているわ」


「いえ、(かんざし)もございますが、うちが取り扱っているのは錠前です」


 宮女に答えるように店主が言った。髪は一つにして頭の上で縛っており、その顔はまだ十七、八の若者に見える。傍らには何に使うのか金槌が置いてあった。


「カギ屋さん?そういえばたまに来てたわね。でも前来た人とは違うわ。もっとおばさんだった」


「あれは母です。今日は娘の私が代わりに来ました。どうぞ見ていってください」


 釵の隣には親指程の大きさの猫や猿や魚の人形のようなものが置いてあった。真鍮でできているらしく、日の光を反射して鈍く光っている。


「カギに見えないわ。可愛い」


「ちょうどここに鍵穴がありまして、鍵を差し込むと…」


 そう言って店主は魚の形をした錠を手に取ると、鍵穴がよく見えるように宮女のほうへ向ける。魚が尾を頭の高さまで跳ね上げた形をしており、頭と尾の間に(かんぬき)の棒があった。

 次に親指程の大きさの金属片を取り出して魚の尾の部分にあてた。

 金属片、もとい鍵は細い金属の板の先を直角に曲げてあり、角度をつけると細い隙間に入れられるようになっている。手に取りやすいように片側に赤い飾り紐をつけてあった。

 鍵を押し込み続けると魚の頭の部分の側面が外れて、上部の(かんぬき)も一緒に外れた。


「軽く押し出すだけで中のバネが締まって簡単に開けることができるんです。もちろん閉める時も軽い力でできますよ」


 そう言いながら先ほど外れたバネをかちりと音をさせて元にはめ込んだ。


「でも、こんなに小さくて壊されないかしら。最近の泥棒はカギをこじ開けるどころかすぐ壊すらしいし」


「平気です。なんたってうちのカギは家伝の配合の真鍮で作っているので、鉄の武器で叩いても壊れないのが自慢だから!」


そういうや否や傍らに置いてあった金槌を手に取ってカギを叩き始めた。がんがんと派手な音がした。目の前の宮女も周りの人々も驚いて注目する。


商人の名前は(れん) 鈴釵(りんさ)。錠前を扱う皓月(こうげつ)堂の一人娘だ。

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