表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/22

13、ノーヴィアへ至る道

 馬車の荷台に揺られながらカイデンはぼーっと遠くの山を見ていた。遠くの山々は常緑樹が多いのか、青々とした葉っぱが山肌を隠していた。

 ノーヴィアという国までの道のりは長い。具体的に言うと歩くと一月ほどかかるそうだ。それを聞いたカイデンは痛む体を無理に動かして、早急な出立を準備した。そんなカイデンの様子を見て、レヴィアスは瞬間移動の魔法を使うというのを内心、考えてはいたが、わざわざ口に出さなかったのは悪意があってのものではない。

 ノーヴィアのどこに移動すればいいかがわからず、もしも、家の中に瞬間移動すればどうなるかわからないからだ。

 部屋の中で、急ぎながら準備するそんなカイデンに声をかけたのは、リタだった。


「早くノーヴィアにつく方法があります」


 と、優しくリタは声をかけてきた。

 カイデンは嫌な予感がしながらも話を聞くと、リタは事情を話し出した。

 商人たちは王都ジューディングから他所の国へと、商品を販売するのを生業としていた。もっとも、商人として品物を管理し、販売するのが生業であり、実際の輸送は、馬車によって荷を運んでいた。しかし、魔族の復活の噂を受けて、各方面との商品輸送を担当していた輸送業者たちが、不安がり引き受けたがらないようになったそうだ。あるいは、引き受けるにしても、以前から見れば倍以上の値段を要求するようになり、そのまま、荷物とともに行方知れずとなる悪徳な輸送業者が現れたらしい。

 そこで、魔族を倒した勇者に護衛を頼みたい、というものだった。

 それであれば、と輸送業者も納得しているらしい。


「嫌だ。断る」


 と、キッパリと断る事がカイデンに出来たら良かった。カイデンはわざわざ用心棒のような事をするつもりは全くない。しかも、今の話を聞く限りにおいて、カイデンがノーヴィアに行くのが早く着くとはとても思えなかった。しばし、思案する様子をカイデンが見せたとき、リタが割って入った。


「しかし、カイデン殿は一人、全ての荷馬車を守ることはできませんでしょう。そこで、ですね、他の冒険者たちも荷馬車の警護につける形でですね。ノーヴィアへといく荷馬車を護衛してもらえたらという気持ちなのですよ」

「なるほどな」

「さらに言うとですね」


 リタは、カイデンのそばによってひっそりと耳打ちする。


「王都の連中は誰が勇者かは知りません。故に、ここのギルドの冒険者で、総出にすれば荷馬車くらいは守れるでしょう。五人くらいでいけば余裕ですって」

「楽観的すぎる。もしも、他の冒険者がやられたら?」

「彼らの中にも優秀な人はいますよ。信頼してあげてください」

「リタ殿」


 レヴィアスはカイデンの腰に下げられたままに口を開く。


「この話はもう進んでいるのだろう」


 その言葉にリタはにこりと笑みを見せる。


「わざわざカイデンにノーヴィアへの早く着く方法を教えてくれるのはありがたいが、この話、そう一日やそこらで進む、決まる話とは思えない。リタ殿、すでに話は決まっているのだろう」

「さすがは勇者のおしゃべり剣。そうです。すでに話は決まっており、冒険者たちは出発しています」

「なら、断る理由もないだろう。カイデン。ノーヴィア行きの荷馬車に乗って行けば済む話だ」


 カイデンはどこか承知しかねる気持ちが胸にあったが、レヴィアスのいう通りであった。

 もはや、自分が一人で決める事ではない。

 かくして、カイデンは荷馬車に乗って、ノーヴィアへと向かう事としたのである。


「しかし、何事もなくて良かったですね。あと、二日三日ほどでつくと思いますよ」


 荷馬車で向かいに座るリタが言った。リタが付いてくるとはカイデンも思っていなかったが、断るつもりもなかった。

 リタの言う通り、荷馬車でノーヴィアへと向かう道中は静かなものである。町の商人たちが恐れていた魔族の襲撃というのもなく、荷馬車は進む。カイデンが歩いて進むよりも格段に速く進むので、随分とカイデンは楽が出来た。さらに言うと、金もいくらか貰えるので損はない。

 他に同乗する冒険者たちも、どこか安心した雰囲気を纏っている。

 楽なものだ。


「しかし、カイデン殿も、仲間と旅するというのは悪くないでしょう」


 沈黙に耐え切れず、また、リタがカイデンにそう声をかけてきた。

 カイデンは首を横に振る。


「僕はそう思いません。悪いですけど、一人の方が性に合っています」

「それは、ニープ殿の件があったからですか」


 首を縦に振った。


「今は仲間を持とうとは思えません。僕は僕を守るのすら、精いっぱいで、他を守れる余裕がありません」

「そういうものでしょう。いつだって、何事も手遅れになるものですよ。もっとも、だから、ノーヴィアで自分を鍛え直すのでしょう? なら、変われたらいいですね。強くなれたら」

「いいえ、違います。強くならないといけないのです」


 カイデンははっきりとそこは否定した。

 二人のやり取りを聞いていたレヴィアスは少しだけカイデンが成長したように感じれて、喜びを覚えた。

 強くなる、その覚悟を持ったカイデンを乗せ、荷馬車はノーヴィアへと向かう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ