トッププレイヤーは異世界転移をする 〜イカサマ看破を使って、奴隷姫を助け出す〜
途中の試合が簡略化されてますが、知識不足の為そうなっております。
大目に見てくれると助かります。
「こいつで攻撃したら、俺の勝ちは確定だ!」
康平は場にあった自分のカードを横向きにして、相手カードに攻撃をした。
「くっ…今日も負けたか」
「おい、海崎のやつこれで何勝目だ?」
「俺が数えた中だと、十勝はしているぞ」
康平の相手をしていた人の声はすぐに周りに掻き消され、康平の勝ち数が話題に持ち上がる。
ここはカードゲームを販売しているお店で、今日は昼から大会が行われていた。
そこに出場していていたのが、各地の大会で優勝をしている海崎康平だった。
康平はこの大会でも無類の強さを発揮して、相手をどんどんと蹴散らしてあっという間に十勝まで辿り着いていた。
「ふぅ…次が決勝か。最後の相手はなかなか手強いから、気を引き締めないとだな」
額の汗を袖口で拭きながら、相手の方を微笑みながら見た。
決勝は高校生である康平と同じ年齢で、新星と呼ばれていて康平にとってはやり甲斐のある相手だった。
「お前が最近噂になっている奴か。だが、悪いがここの優勝は俺が貰うぜ」
「トッププレイヤーの海崎さんとやれるとは、自分感激しています。全力で貴方を倒してみせます」
お互いに少し会話をしたあと、目を合わせて同時に開始の合図を始める———
「はぁ…はぁ…海崎さん、やりますね」
「そっちこそ、ここまで追い詰められたのは久しぶりだぜ」
勝負は中盤になり、康平が少し押されている状況だった。
相手側のカードの引きが良く、ここぞと言うばかりに康平が考えていた事が全て塞がれたからだ。
そして康平が一枚手札を引くと、ニヤリとして相手の方を見る。
「だけどこれで、俺の勝ちは決まったみたいだぜ」
相手は納得してない様な顔をして、驚いていた。
そして康平はカードを盤面に出して、続けて口を開く。
「こいつでプレイヤーをアタック」
「嘘だろ…新星と呼ばれるこの僕が負けるなんて」
「いつでも挑戦を待っているぜ」
そのまま表彰式に移り、康平はトロフィーを抱いて家に帰る。
「やっぱり、ゲームは楽しいな。色んなゲームをやってるけど、カードゲームが相性いいな」
そんな事を呟きながら歩いていると、地面が急に崩れて康平はその崩壊に巻き込まれた。
「いてて…なんだよ急に。って、俺のトロフィーが壊れてる!?!?!?記念すべき二十本目なのに…」
どうやら崩れた時に、康平はトロフィーから手を離してしまったらしく地面の衝撃で折れたようだ。
そして数々の大会で勝って貯めていたトロフィーで、記念すべき本数だったので、その場で手をついて涙目になっていた。
「それは悪い事をしてしまいましたね。直すのは無理なのですが、別の世界に行きませんか?」
「誰ですか貴方は!?そして、唐突すぎませんか」
いきなり現れた銀髪の女の人が、康平に向かって提案してきたのは異世界に行くこと。
そんな事を言われた康平は謎の美女に驚きながらも、冷静にツッコミを入れる事も忘れなかった。
「失礼しました。私はとある世界の女神をしています。貴方には私の世界に行きゲームで勝って、囚われてしまった姫達を助けて欲しいのです」
「女神ね…いきなり女神って言われても困るし。それに何故、ゲームに勝つと囚われている姫さん?を助ける事ができるのか?」
「私の世界は、貴方の世界のゲームをいくつか取り入れたのですが…それを使って貴族が賭け事を始めまして、姫が挑み負けてど…奴隷堕ちになったのです」
「そんな…ゲームはそんな賭け事で遊んでいい訳がない。しかも、姫さんが奴隷堕ち?その国の王や王妃は反乱しないのか?」
「その誘いに乗った時点で、反論する事は出来なくなります。〝ゲームに勝つ〟それだけが、解放する条件なのです」
女神は少し俯きながら、辛そうに現状を話していた。
だが康平は少し疑問に思っている事があった。
それは女神が制約を作れば、解決するんじゃないかと。
「何度も質問悪いんだが、貴方がその世界において制約を作る事は出来ないのか?」
「大丈夫です。制約ですか…確かに作れば秩序は守られますね。だけど、私にはその権限はないのです」
「貴方の世界なのに、作れないの?」
「恥ずかしながら、新しいゲームを取り入れる事以外禁止されてしまいまして…」
「何故?」
康平は睨みながら、女神の呟いたことに対して尋ねた。
すると女神は少し恥ずかしそうにしながら、口を開いた。
「実は…以前、あの世界の方に挑んだ時に———」
「あー、何となくだけど察しがついたわ。つまり、負けて不利になる様な事をするなと言われたんだな」
「はい」
ダメダメな女神じゃねーかと思いながらも、康平は強い奴らがいる事にワクワクしている気持ちもあった。
「仕方がないな〜その世界に行って、姫さんを救ってくればいいんだろ?」
「受けてくださるのですか?」
女神は断られると思ったらしく、康平の言葉にかなり驚いた様子をした。
「まぁ、新しい刺激も求めてたし、高校生活が無くなるのは辛いけど楽しそうな方を選ぶのが俺の主義なんでな!」
「海崎康平さんに最大の敬意を表します」
「辞めてくれ。俺は貴方より立場は低いんだから、ただ戻れるよな?」
康平の心配は別世界に行ったあと、元の世界に帰れるかどうかだった。
そして戻ってきたら、やりたい事も沢山あるので帰れる事を期待している。
「……戻れます、一応。だけど、戻り方は貴方が探す事になりますのでご了承ください」
「あー、テンプレなパターンだな。まぁ、戻れるなら全部片付いてから探せばいっか」
「貴方にはほんと感謝をします」
「分かったから。何度も言うけど、立場は俺の方が下なの。そんな事より、もう行く感じになるのか?」
「質問が以上なら、この魔法陣に乗ってください」
そう呟くと、女神と康平の間に魔法陣が浮かんできた。
康平はこれ以上質問しても何も出ないと思い、一歩進み魔法陣に乗った。
「では、行きます。目標は第一姫の場所から数百メートルの小屋。そして、海崎康平さんに女神の加護を…」
康平は女神の言葉を聞き、光に包まれた。
一軒の壊れかけの小屋に、康平は転送されていた。
「いてて、微妙に高い位置から落とさないでほしかったよ」
そして転送されて早々に、屋根に近い付近でお尻から落下して床に強打した。
お尻をさすりながら立ち上がり、辺りを見回した。
「確か、最後に聞き取ったのは姫さんの場所から数百メートルだったか?聞き込みでもしてれば、何かしらの情報が入りそうだな」
そう思い、康平は小屋の中に何もない事を確認して外へと出た。
「ほんとに目の前に、お城があるし…」
康平の目の前には、広大な草原の真ん中に数メートルはある外壁と、中央から見える大きなお城。
だけど辺りを見回すが、よく話に出てくる魔物の姿は無いので飾り物の外壁に康平は見えていた。
「とりあえず、中に入らないと始まらないな」
目的地を定め歩み始めた時、頭の中に一つの文章が浮かんだ。
『女神の加護:イカサマ看破
この加護があれば、どんな相手でもイカサマを見抜く事ができます。
ただし、失敗すると二十四時間使えなくなるので気をつけてください』
「イカサマ看破…賭け事にイカサマは付き物。これがあればどんな勝負でも公平に勝つ事ができるだろう」
しかし、康平は一つ気がかりなのがあった。それは最後の一文。
『失敗すると二十四時間使えなくなる』
失敗——それはイカサマを見破る事ができない。
「いやいや、失敗ってそんな事があり得るのか?それにペナルティーが厳しすぎる」
とりあえず、条件を頭にいれつつ康平は城壁まで歩き始めた。
「そこの者、止まれ。ここには何用で訪れた」
城壁に着くなり、門番の男達に止められ尋ねられる。
ここにきた目的を素直に話せば、良くないことが起こるのは明確だったので誤魔化す事にした。
「自分はただの国外れのしがない旅人です。少しだけ軍資金を得られたので、城壁内へと訪れたのです」
「問題は無さそうだな。よろしい、中へ入る事を認めよう」
完璧なうわべをしながら、門番の様子を伺う。
門番の人達は一瞬眉間に皺を寄せながら康平の事をジロジロと眺め、納得したのか急に笑顔になり中へと入ることができた。
中に入ると多くの家が立ち並び、中央には外から見えた王宮が聳え立っていた。
その中でも王宮の次に目を引くのが、外観がド派手に装飾されている看板と建物だ。
「名前は…ポーカーハウス。ポーカーだからトランプを使ったゲームが遊べる所か」
康平の考えは半分正解で半分は間違っていた。
ポーカーハウス、その名の通りポーカーをやる場なのだが、賭け事有りのハウスなのだ。
「さてと、その辺でまずは情報収集しないとかな」
女神の依頼は『姫を解放してほしい』
その為にも、この国のルールや姫を所有している貴族を探し出さないといけない。
少し面倒くさいが、康平は近くにいたスープ屋の店主に声を掛けた。
「すまないが、ちょっと質問いいか?」
「おうよ!その代わり、スープを一杯買ってもらうぜ」
「分かった。いくらだ?」
「百ゾフだ」
康平は着ていた上着の内ポケットから財布を取り出し、お金を取り出した。
ここに来るまで確認はしてなかったが、康平が持っていたお金は女神の計らいによりこの世界のお金に変わっていた。
「確かに受け取ったぜ。ほら、スープだ。それで質問はなんだ?」
「あそこのポーカーハウスはどの様な所なんだ?」
「なんだい、兄ちゃん知らないのか?ポーカーハウスで賭け事をやるんだが、以前領地を奪われた奴もいたな」
「賭け事で領地まで変わってしまうのか!?なら、王国とかもやばいんじゃ」
「王国の場合は、その国の姫が賭け対象になる様に管理組織が決めたルールがある」
(なるほど…それにしても管理組織か。気になるな)
康平は目的である姫の話を聞けた事に安堵したが、さらに気になるワードが出たので聞き返した。
「管理組織とは?」
「それも知らないのか、変わってるな」
スープ屋の店主は不思議そうな顔で康平を見た後、続けて口を開いた。
「管理組織は、この世界の全ての賭け事を統括している組織。そして、女神に勝ってとある権限を手に入れたと発表していたな」
(とある権限…女神の話していた事だな)
女神の話が本当だと分かり、康平は溜息を吐いた。
「おっ、ちょうど来たみたいだな。兄ちゃん、あそこを見てごらん」
康平は店主に促されて、指差す方を見た。
すると康平の目に映ったのは、元の世界ではあり得ない光景だった。
背中まで届く綺麗な銀髪。
ルビーのように輝く赤い瞳。
ふくよかな丸みを帯びた双丘とキュッと締まったスタイルを目立たせながら、バニーガールの格好をした女性が歩いていた。
そして首元にある首輪から伸びる紐は、前を歩く男が握っている。
「店主!あれはどーゆう事だ?!」
「あれがこの国の姫様で、賭け勝負に負けた哀れな姿さ」
「紐を持っている、男の奴は?」
「貴族だ。そして、姫様と勝負に勝ち奴隷堕ちさせた本人でもある」
「あいつと勝負するにはどうすればいい?」
康平は凄くイライラしていた。
姫様にあんな扱いをして、あの貴族は人間の心がないのかと。
「おいおい、正気か?負けたら殺される可能性だってあるぞ?」
「俺は絶対に負けない。そして、あの姫様を救ってやるさ」
「分かった。あの貴族と勝負するには、ポーカーハウスで勝利数を上げればいい。勝利していけば、自ずと軍資金もプラスになり貴族達から目を付けられるからな」
「貴重な情報ありがとう。これは気持ちだ」
康平は情報源の感謝として、少しばかしのお金を置いて場所を移した。
「さて、ここから先は俺の技量が試されるな」
こうして康平は二週間ポーカーハウスに通い、軍資金貯めていった。
その間にも、色々な情報が手に入った。
一つ目が、イカサマをしている疑惑。
どうやら、あの貴族が負けそうになるといつもいい手札が来て逆転するらしい。
二つ目が、姫様による支援。
これは姫様の意思が関係なく、主人である貴族の人に命令されると体が勝手に動くらしい。
三つ目が、大きな賭け事の場には必ず管理組織が現れる。
これは実際に康平も見た事だが、土地の財産を賭けた勝負でディーラーとして姿を見せた。
小さい賭け事に関しては、お店のスタッフがディーラーをしていたのが大きな違いだろう。
四つ目が、イカサマ看破について。
説明文にはどのようにしたら発動するか書いてなかったので、軍資金を貯めながら一度だけ試した時があった。
そして康平がイカサマと85%の確信を持った時、それは発動した。
勿論、イカサマではない時も試したら説明通りに丸一日使えなかった。
ここまでの情報を得た康平だが、目的の貴族には会えずにいた。
が、今日貴族の使用人から勝負の申し出を渡された。
試合の日程は一週間後で、賭け事はその場で決めると。
康平はここに管理組織も来るだろうと考えながら、一週間は何もせずに過ごした。
◇◆◇◆◇◆
約束の一週間が経った。
康平は今、ポーカーハウスのど真ん中に設置された特別ステージに座っていた。
周囲にはこの勝負を聞きつけて、常連客の他に周囲のお店の人達まで店を閉めてやってきていた。
その中には、スープ屋の店主の姿もあった。
「それにしても、まだ来ないのか?」
「いつもの事なので、少々お待ちください」
勝負の時刻から十五分が経った現在、相手がまだ来ていなかった。
康平は予想通り来ていた管理組織に尋ねるが、同じ事を繰り返すばかりだった。
それから数分後、入り口の方が開き大きな声で話してくる人影が現れた。
どうやら、康平の対戦相手が来たようだ。
「いや〜悪かったね。こいつが俺の事起こしに来なかったから、少し罰を与えてたら遅れてしまったよ」
「いやいや、待つのには慣れてますので」
お互いに笑いながら話しているが、康平の内心は後ろの女性に向けられていた。
(くそ、姫様にあんな痣を作りやがって…)
康平の目の前で震えながら立っている姫。
よく見ると、腕や足に無数の痣があり酷い目に遭わされているのは目に見えていた。
だが、周囲の人達は家族に逆らえないので見て見ぬふりをして、この試合を楽しもうとしているのが分かる。
「お前、最近調子が良いと聞くが名をなんと言うのだ?」
「申し遅れました。自分は海崎康平と言います。以後お見知り置きを」
「そうか、康平と言うのか。俺はアステ・クレーだ。別に名前は覚えなくて良い、この勝負で俺が勝てばお前は死ぬのだからな」
そう言いながら、アステは大きな声で笑い出した。
康平は深刻な顔をしてるが、予想通りの筋書きに内心笑っていた。
「では、賭ける物を提示するか。ディーラーよろしく頼む」
アステがディーラーに話しかけると、双方の顔を見て話し始めた。
「これより、海里康平様とアステ・クレー様による勝負を始めたいと思います。では、賭けられる物を提示してください」
両者首を縦に振り、先に口を開いたのはアステだった。
「康平よ、お前噂でこいつが欲しいらしいな。いいだろう、俺は姫さんを賭けるぜ」
「よく、お耳がいいようで。どこから情報を手に入れたのか、その情報網が知りたい物ですね」
「秘密に決まってるだろ。それより俺はお前の望む物を賭けた、つまりお前は俺の欲しい物を賭けろ」
「と、言いますと?」
「お前の命と全財産だ。それくらい掛けてくれなきゃ、割りに合わないしな」
「分かりました。アステ殿の意見を俺は受け入れます」
外野から見れば一方的な決め方に見えるが、これも全て康平にとっては予想通りだった。
姫様を手に入れるには必ずそれと同格のものを提示する様に言ってくると考え、覚悟を持ってこの場に立っていた。
「お前、いや康平は物分かりがいいな。周りの連中は聞き分けがなくて、よく血の海になる事もある。康平みたくなって欲しい物だな」
「それは、何とも豪快な」
またお互いに顔を見合わせて笑っているが、場の空気は最悪になっていた。
「アステ様、海崎様そろそろ始めますね」
ディーラーがそう言うと、カードを切ってそれぞれに五枚の手札が配られる。
康平の手札は、A A 6 8 9
初手からワンペアーを引き、幸先がいいと感じた康平。
「交換は必要ですか?」
「一枚だけ交換します」
「俺もだ」
それぞれ一枚ずつ交換をする。
康平の手札は、K K 6 7 9
とあまり変わらなかった。
「それでは、両者カードをオープンしてください」
ディーラーの合図に、康平とアステは表にして机の真ん中に置いた。
アステの手札は、A A A 6 5
でスリーペアーだった。
「勝者、アステ様」
「一回戦目は俺の勝ちの様だな。残り六回戦頑張れよ」
「まだ気を抜かなさでくださいよ。最後まで分からないのですから」
「安心しろ。こっちは気を抜く事なんてねーからな」
そう言いながら、アステは横にいる姫様に何かを呟いていた。
二回戦目に入り、お互いに交換をせずにすぐにカードオープンになった。
康平はストレートフラッシュを出したが、アステはロイヤルストレートフラッシュを出し二回戦も負けた。
三回戦目もアステが連続でロイヤルストレートフラッシュを出し、負け。
(おかしい…姫様に話しかけてから、アステのカードがよくなりすぎている)
それにいつの間にかディーラーではなく、姫様がカードを切っているし…
これは何か裏があるに違いないと考えた康平は、『イカサマ看破』を使う事にした。
《姫様がボトムディールをやっています。それとアステの袖口にカードが隠されています》
ここまでハッキリとした文章が現れたのは初めてだったので、康平はその場で驚いてしまった。
だけどすぐに気を引き締めて、管理組織の人に申告する事にした。
「ディーラーさん、ちょっといいですか?」
康平がそう聞くと、最初に反応したのは姫様だった。だけどすぐに違うと言って、管理組織の方のお姉さんに視線を向ける。
「何でしょうか?」
「この人達がイカサマをしていたので、申告します」
「はぁ?イカサマだと?どこに証拠があるんだよ」
康平の申告にすぐに反論してきたアステ。
だが、管理組織の者はそれを無視して康平の元に近寄る。
康平は小声でイカサマ方法を申告すると、頷きながらアステの方に行った。
「失礼します」
「おい、勝手に触るな。聞いてるのか」
管理組織の人は、アステの言葉を更に無視して服の中を調べ始める。
すると上着を脱がした瞬間、袖口から数枚のカードが落ちてきた。
「アステ様のイカサマを確認しました。よって、勝負はアステ様の失格により海崎様の勝利となります」
最終ターンが来る事はなく、勝敗が決した。
イカサマがバレたアステは、観客からブーイングの嵐が起こり今にも殴りかかりそうな顔をしていた。
「ど、どうして俺がイカサマをしていると分かった」
「カードゲームではお約束ですから、その辺は重点的に観察してました」
馬鹿正直に話し事でもないので、尤もらしい事を並べながら伝えた。
そしてアステは、管理組織の者によってどこかに連れて行かれた。
「あの…私はどうすれば…」
主人を失った姫様が、康平の元へやってきた。
「一応、勝負には勝ったからお前は俺の物だ。だが、束縛はしない。親の元へ戻りたければ戻るといい」
「いいえ、これは賭け事。私は今から海崎康平様の所有物になります」
「いいんだな?」
「はい」
再度確認して、姫様の決心が固い事が分かった。
そして康平はその覚悟を無駄にするのは良くないと思い、簡単に返答した。
「好きに着いてこい。それと、様は付けなくていいから」
「あ、ありがとうございます。康平さん?」
首を傾げながら聞いてくる姫様に首を縦に振りながら肯定していたら、姫様が続けて話し始めた。
「その…康平さんにお願いがありまして」
「お願い?それは俺にしか出来ないのか?」
「はい」
疑問に思いながら、姫様に話してごらんと伝えた。
「私の他にも、六人の姫がそれぞれの国で奴隷堕ちになっていると聞きました。貴方のその力と私の力が合わされば助けられるはずです」
康平は姫様の言葉に驚いた。
誰も知らないはずの康平の力を知っていて、更に自分も力を持っていると言ってきたので。
「まて、俺の力を知っているのも不思議だが、姫様もあるのか力が?」
「あります。私の力は『透視』全てのカードを見抜く事ができます」
「その力があるのに、なんであいつに負けたんだ?」
透視能力があれば、どんな敵でも勝てると思っていた康平だが、姫様の口から話されたのは想像と違っていた。
「この力、女神の加護?といいますか。これを授かったのは、アステに負けた後でした」
「どんな風に授かったんだ?」
「分かりません。ですが、アステの話では貴族が姫を所有するとそのどちらも力を得ると話された事はあります」
「つまり、他の姫も力を得るかわりに貴族連中も力を得ているのか」
「そうなると思います」
「確かに、俺の力が無いと助けられないかもな」
姫様を助けないと帰りの方法も探せないし、女神の依頼は姫を助けてだからやるしかないと康平は考えた。
「ありがとうございます」
「とりあえず、三日はお休みさせてね」
「全ては康平さんの望むままに」
康平と姫は次の国に向けて、休むのであった。