其の二
「これもアルバイト(修業)の一環だから。今日はやらせなかったけれど、朝も早いの。五時起床で、その後神社の門を開けて、境内と本殿の掃除。その後朝拝でお祓いを受けて、心身を清めるの。それから朝食ね。大体七時くらいかな。その後も雑務が沢山あるわ。社務所の用事って結構色々とあるのよ。全部手伝ってね」
「うえぇー・・・・そんなの聞いてない・・・・」
「今、やるって言ったでしょ。神様に二言は無いわよね?」
「は・・・・はひ・・・・」
「じゃ、掃除が終わったら、町はずれ行って調査よろしく」
ふー。やれやれ。これで他の用事が出来るわ。良かった!
そう思ったのも束の間、天人が人差し指を竹箒に向けてなにやら呪文のようなものを唱えると、勝手に竹箒が動き出したの!
さっさっさ、と自動で髪の毛を穿き、塵取りに収める光景が。
「ちょ・・・・ちょっと待った――――っ!!」
「んだよ。さっきからウルセーな」
「あ、あ、アンタ・・・・そんな不思議な力使っちゃって、誰かに見られたらどーすんの!!」
「あ? このくらい誰でもできんだろー」
「そんな力なんか使えないし! 普通の掃除やった事ないの!?」
「あー? 火ぃ吹いて全燃させるか、大嵐で吹き飛ばすか、今みたいに真面目に神術使って――俺は滅多にしないけど――やるか、どれかだ。火も嵐もやったらお前、俺の事氷漬けにするだろ。だから止めてやったんだ。有難く思え・・・・って、イテテテテっ! 何すんだよっ」
思いきり耳を引っ張った。
「バカじゃないの! 人間界で天上界と同じようにしたら、大事になっちゃうわよ! いい? 掃除はこうよ! 竹箒持って、穿いたゴミを塵取りに入れる! 簡単でしょ! 自分の手でやって!!」
「メンドイなー」
「へえー。神術使うしか能が無いんだ。神様も大したことないのねー」
「あ? その位できるって! 見てろよ」
わざと煽ったら、真面目に掃除を始めた。バカと神様は使いようってわけね。
はあー。この調子じゃ、私が見張っていないとこの男の暴走、止められないわ。
外で何されるか解んないし、天海神社の関係者って知れたら、こっちが責任取らなきゃいけなくなるし、大変だ!!
早く修業終わらせて、天上界へ還って貰わなきゃ!!
平穏無事な日常に戻すには、この男の目的を達成するお手伝いをして、万歳三唱で送り還すしか道はなさそうだ。
当分、気苦労が絶えない日々が続くのだと思うと、目の前が真っ暗になる。
・・・・後で頭痛薬飲んでおこう。
ストレスで倒れないように、気をしっかり持たないとね!
結局チャラ神様――もとい、天人を一人で現地に派遣させる訳にはいかないので、正装して巫女の恰好(私もアルバイトだけど)となった。結局天人にも神様の衣装を着用してもらい、連れだって町はずれへとやって来たのだ。
こうしていたら、一応『清めとお祓いができる一行』に見えるから。私がこの格好だと、何とか誤魔化せる。
天人に宮司の恰好をさせる訳にもいかないので、結局自前の衣装を着用して貰ったのだ。
まあ、こういう時は神様の衣装の方が大層で見た目が派手でいいわ。
「何か感じる?」
町はずれの雑木林に到着したので、天人に聞いてみた。
「んにゃ」
「・・・・あっそ」
「昼でも薄気味悪ぃな、ここ」
「そうね。禍々しいとまではいかないけれど、不穏な空気を感じるわ」
町はずれのこの辺り一体、不穏な空気に包まれている。あまり良くない気が漂っていると思う。
――ううう・・・・出してーやー。
「天人、何か言った?」
「んにゃ、何も」
能天気にしているけれどこの男、役に立つのだろうか。
用心しなきゃと思い、持参したお祓い用の鈴を握りしめた。
――お供え物、何でもいいから出してーやぁー。
「やっぱり何か聞こえる! 天人、そっち見て!」
彼には何も聞こえていないようで、
をひねりながら走って行った。
神様・・・・なのよ、ね? 一応。
どうして今の声、聞こえなかったのかしら。
「なーんも見えないし、居なかったけど」
軽く辺りを調査した天人が、手ぶらで戻って来た。
・・・・本当に神様なのかな。謎を感じる台詞だ。
――お腹空いてるねん。
「やっぱり聞こえるわよ! ハッキリ聞こえた! お腹が空いてるって言ってるみたい」
自分で行こう。この目で確かめなきゃ。
昨日天人が遠慮なく食べ尽くした特上寿司十人前の代金、お祓いの結果が奮わずに駒井さんから請求されたら困る!!
声のする方へ恐る恐る進んでみた。この辺りは鬱蒼とする雑木林があり、手入れがされていないから荒れ放題になっている。
それにしてもこの不穏な空気。そして謎の声は、一体どこから・・・・?
――聞こえてるんやろー? お供え物、早く出してー。
お供え物?
えっ。どういう事?
不気味な雑木林を更に奥へ進んだ。天人も後から付いて来てくれている。あんなのでも、居ないよりマシだと思った。例え役に立たなくても、変な声が聞こえているから怖いし、心細いからね。
暫く進むと、お地蔵様が奉ってある場所に着いた。小さな祠に安置されている筈のお地蔵さまは、祠が壊れてしまったせいで外へ転がっていて、剥き出しの状態になっている。辺りも綺麗な状態ではなく、放置されたままで無残な状態だ。
勿論、お供え物なんかひとつもない。昔飾ってあったであろう花も枯れ果て、お酒やお水の瓶は倒れ、壊れていた。
「酷い・・・・」
誰も参り手が居なくて、こんな風になってしまったのかな。
崩れたお堂を見つめていると、悲しい気持ちになってくる。
こんな状態のお地蔵様が動いたり、何か不思議な現象を起こしているなんて・・・・。
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