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其の五

 


「本物ですかっ! いやあー、生きてて良かった! 神様に出会えるなんて!!」


 がしっ、と天人の手を取り、お父さんは感動している。


「さ、ささ、神様。どうぞこちらへ」駒井さんとお父さんの間の席へ天人を誘い込み、早速座らせてしまった。「狭い家では御座いますが、ごゆっくりなさって下さい。ほら、神奈、お前、何をやっているんだ! 神様が直々にこの天海神社へ来て下さったのだぞ! 立派なお召し物で、品のある御姿! 良かった、良かった!! これで我が神社も安泰で御座いますっ!」


「えー、本物の神様かぁー」


 ははー、と駒井さんは土下座する始末。


 ちょっとちょっと・・・・そんな怪しい男、なんですぐ信じちゃうワケぇ?

 みんな、頭のネジどうなっているのよ!


「どうしたの、何の騒ぎかしら?」


 ややこしい所へ、お母さんがやって来た。御年四十八歳になるのに、かなり綺麗な母だ。自分の母親に言うのもなんだけど。

 美しいと評判で、母を目当てに遠方からやってくる方もいるほど。長いストレートの髪を靡かせ、柔和な瓜実うりざね顔の和服が良く似合う美人だ。


 

さつき。実は、神様がうちにいらっしゃったのだ!! 宴会だ。宴会の準備をしてくれっ。さあさあ、神様。準備を致しますので、暫くおくつろぎ下さい。ほら、神奈っ、ボケっとしていないで、皐を手伝え!」


「そうだぞ、神奈。やはりこうでなくては」


 どかっと腰を下ろした天人は、私の方を見て高笑い。なにあのムカつく男!

 何でみんな、天人の事怪しいって思わないの!?


 何かカラクリがあるんだ、きっと。じゃなきゃ、おかしいもん!!

 そういえば、さっきから天人が首から下げている勾玉が、不思議な光を放っている。どういう訳かは解らないけれど、きっとアレのせいね。さっきのカンキチおじさんの反応の方が、普通だもの。


「これはこれは、何と美しい。皐と言うのか。こっちへ来いよ」


 お母さんを見て厭らしい目を向ける天人を、私は思いきり睨みつけた。


「アンタがちょっと来なさい」


 有無を言わせず首根っこを引っ掴んで、外へ引きずり出した。


「お母さんに手を出したりしたら、氷漬けにしてやるからね!」


 ゴゴゴゴと青く怒りのオーラが私の全身を包んでいる。ヤツにもそれが見えるのだろう。しない、しないから、と焦った声で言った。


「約束破ったら、アンタの身体全部凍らせてやるから!! それよりどうしてみんな、アンタの言う事信じちゃってるの? おかしいじゃない!」


「しらねー。ま、多分この勾玉の光の加護のお陰だろうな」首からぶら下げていた勾玉を、天人が摘まみ上げた。亜麻色だった勾玉は、うっすら金色に輝いている。「さっきまでは光ってなかったけど、この神社はどうもパワーが増幅するらしい。この勾玉、万能で身に着けた者を助けてくれるありがたーい力があるんだ。スゲーだろ。オヤジからパクって来たんだ」


 オヤジからパクったって・・・・窃盗してきたって事?

 神様のする事じゃないわよね。でもツッコむのが面倒なので、止めた。


「くれぐれも悪用しないでよ!?」


 特に盗品なんて、最低最悪じゃない!


「わかった、わかった。ウルセー女だな。もう、俺に振舞う飯の準備でもしてろ」


「はあぁ? 何で私が!」


「お前の親父が用意しろって言ったじゃん。腹減ってんだ。それにしてもしとやかそうなオフクロじゃねーか。神奈とは大違いだ」


 

「大きなお世話。チャキチャキやらなきゃ、この神社の経営成り立たないのよ。両親がのんびりしてるから」


「ククっ。神奈も苦労してんだな」愉快そうに天人が笑った。


「そう思うなら、この神社に参拝客呼んで来てよ。アンタ、神様なんでしょ」


「ま、そのうちに。とりあえず飯にしてくれよ」


 ひらひらと手を振り、室内へ戻って行った。宴会の準備を始めろとか言うけどさぁ・・・・。みんな、大丈夫なのぉ!?


 

 私の心配をよそに、結局なし崩しに宴会が開始されてしまった。

 あれ持ってこい、これ持ってこい、と、人使いが荒い。お陰でさっきから台所とか本殿の方にお供えしている御神酒なんかを取りに走る始末。


「天人様ぁー、どうかどうか、よろしうお願いしますよぉー」


「ういー、任せとけー」


 結局駒井さんの自腹で特上寿司を取ってもらい、うちではつまみや酒を振る舞い、完全に家が宴会場に成り代わってしまった。


「皐―。ちょっとこーい」


「はいはい、ただ今」


「酌してくれ、酌」


「はいはい、ただ今」


「おーい、つまみがねーぞぉー。もっと持ってこぉぉーい」


「はいはい、ただ今」


 後頭部引っぱたいてやろうかと思うほどに、天人はお母さんを顎で使っている。

 私もなんだかんだと使いっ走りをさせられているのだ。本当に人使いが荒い。


「それでねえ、天人様。町はずれ裏の雑木林にある祠の謎、解明頂けますかぁーあ?」


 駒井さんがもう十回目になる話を天人にした。

 今日の駒井さんの相談というのは、町はずれの森の祠で謎の事件が発生しているというのだ。どうも、お地蔵さまが見るたびに動いているのだとか。不思議な声が聴こえたり、姿は見えないのにやたらと猫の鳴き声が聞こえたり、不思議な現象が発生しているらしいので、うちの家に調査を依頼に来たのだ。

 とりあえず調べて問題が無ければ、お祓いをしようという事になっていたのだが――


「いよっしゃあぁー。まかせとけぇー。ひっく」


 完全に酔っ払いだ。ホント、最低な神様ね。冷気のひとつでも浴びせて、目を覚ましてやりたくなった。

 結局、あれから男三人でたらふく飲み食いして、お酒が底を尽きた為、宴会はお開きになった。


 

「ほんじゃあ、頼みましたよおおー」


 町長の駒井さんは、千鳥足で帰って行った。大丈夫なのかな。一応、お母さんが駒井さんの自宅に連絡を入れていたのを私は知っている。


「ろうぞ、こひらをおつかひくださいー(どうぞ、こちらをお使いください)」


 呂律の回らないのに、天人に客間を案内するお父さん。既に床は私が用意しておいた。

 ていうか、何で私が・・・・。明日には出て行ってくれるのかな。


「はー・・・・久々に旨い酒飲んだぁー。さいっこぉおおーぅ」


 大の字にごろーんと寝っ転がる天人。着替え位しなさいよ、本当にもう!


「着替えてよっ。布団が汚れるでしょ」


「ういー」


 完全に酔っ払いだ。


「明日出て行くの?」


「は? まっさかあー」天人は愉快そうにケラケラ笑い出した。「天上界に帰るまで、ここで世話になるぜぇーえええー」


 この男と喋っていると、頭痛しかしない。


「お前の親父が、ず――っと、ここにいてもいいってよぉー。はっはー」


 お父さんのバカ!! この勾玉のせいだって言うなら、取り上げちゃおうかしら!!

 でも、約束したなら仕方ないし、この男を世間へ放り出す方が厄介な事になりそうだ。


 ため息が出た。私の気苦労は、絶えないだろう。

 ここへ置かなきゃいけないというなら、腹を括るしかなさそうだ。


「いい? 天人。絶対この町を救ってね!! アンタ、神様なんでしょっ!?」


「うぃー、酒もってこーい」


 この酔っ払いが!


「悪の化身どもめぇー。この俺が叩き斬ってやるぞぉーおー。あっはっはぁー! ひっく」




 このチャラ神様、本当に大丈夫なの!?




 これが、私と天人の初めての出会いだ。

 一体これから、どうなる事やら!?




 

数ある作品の中から、この作品を見つけ、お読み下さりありがとうございます。


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定期更新は、毎日21時です。

執筆連載中作品のため、固定更新&ゲリラ更新となります。

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