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其の七


「神奈―」


 じぞーちゃんがたたっ、と小走りで戻って来た。


「あのねー、狐君たち、人間に怒っていたんだって!」


「怒っていた? どうして?」


「だってねー、回廊に来ても写真撮るだけでお賽銭だけじゃなくて、きちんとご挨拶すら無いし、それどころか勝手に荒らすし、ひどいヤツなんて狐君の上に乗ったりラクガキしたり、最近特にやりたい放題なんだって。昔みたいに油揚げもお供えして貰えないし、不満がいっーぱいやねん!」


「そっか・・・・お稲荷様に手を合わせる人が減ってしまったものね」


「沢山人間が来てくれるのは嬉しいけれど、もう少し節度を持って欲しいって。だからボク、狐君と約束したんよ。ここに来て撮影してもいいから、その代わりちゃんとお参りして貰うように人間にお願いする事と、田長さんの作った油揚げをまたお供えして欲しいって」


「じぞーちゃんのお陰で、お稲荷様のお礼の声が聞こえたわ。ありがとう。これから、私達人間が、きちんと伝統やいにしえのものを大切にする気持ちを、少しでいいから忘れずに持てるよう、気を付けるわ」


「うん! 神奈、ありがとう」


 じぞーちゃんが笑ってくれた。


 ぎゅーっ、とじぞーちゃんが私を小さな体いっぱいで抱きしめてくれた。元は石とは思えない程、温かい。不思議な力だと思った。



――次は、容赦しないぞ。



 その時だ。また、あの低くお腹の底から響く声が聞こえた。

 声の主の正体・・・・一体なんだろう。私達は声の主まで辿り着き、諸悪の根源を断ち切らなければならない。私もしっかり修業して、強い敵に立ち向かえるように頑張らなきゃ。パワー不足で立てなくなっている場合じゃないわ。


「ほら、手」


 天人が来てくれた。「神奈、またパワー切れで立てねえだろ。捕まれよ」


「ありがとう」


 嬉しくて、素直に天人の手に捕まった。抱き上げられた瞬間、パチっと重ねた手からまた電撃が走る。何だろう。でも、前みたいに嫌じゃない。甘い痛みのようなものに、似ている気がした。


「ちょっと思いついたんだけどさ、神奈だったらできると思うんだ。手伝ってくんね?」


「えっ、何を?」


「スネ太郎使って、天海神社を宣伝するんだよ。さっきの動画、結構注目されたみたいだし、この続きを作るんだ」天人はニヤっと笑った。「俺たち『何でも相談』のいい宣伝役に、ひと役買ってもらおうじゃねえか」


 天人はスネ太郎が眠っている横で、勾玉の力を使って私に囁き巫女になれと言い出したの。



 この問題を解決したのは、天海神社のイケメン宮司のこの俺だって言えって――



 



「はーい、皆様。こんにちわんこー! 今日は日本屈指の名神社、天海神社あまみじんじゃから実況生中継!」




 スネ太郎が軽快に喋り出した。「先日、僕ちゃん無茶しちゃって、途中で気絶しちゃったんだ。何か、ぐるぐるぐるぐる知らないうちに回っていたみたいで、ノビていた所を田長神社の方と、この天海神社の宮司さんに助けられちゃったんだぁー! みんな、心配かけてごめりんこ! もう悪い事はしませーん! 時間外に勝手に入った事、ちゃんと田長神社にお参りして、謝って来ました。みんなが通報してくれたお陰で、僕ちゃん助かっちゃったのねー! ありがとうもろこしー!」


 寒い挨拶は相変わらずだけれど、ゲストとして先ずは天人が登場。スネ太郎が回すカメラが天人に向けられた。

 天人の描いた作戦で、私は彼が眠っている隙にあれこれ囁いた。これが見事に成功し、スネ太郎は私達が彼を救った恩人と認識している。


「はっはっは。俺がスネ太郎のピンチを救った天人だ、ヨロシクな。ここ、天海神社で修業中。京都の奥にある、スゲーいい神社でさ。みんな、是非来てくれよ」


 天人がキメ顔でカメラに向かって話し出した。手にはお守りが握られていて、カメラに向けている。何時も天人が、若い女性の参拝客に売っている例のお守りだ。



「これ、縁結びお守りなんだけどさ。ただのお守りじゃねーんだ。天海神社のものは何と縁結び率がグンとアップ! 俺と縁を結びたい美しい女性は、是非天海神社に買いに来てくれよな!」


 神々しい(神様だから当たり前)イケメンぶりを披露し、チャっとチャラいポーズで決めた。ちゃっかりお守りの宣伝までしちゃってまあ・・・・。そしてそこへミケが天人に被せるようにアップで登場したから、スネ太郎が紹介してくれた。


「この子は天海神社で今、お世話している大変人気の猫ちゃんだよ。目つきは悪いけど愛嬌最高! お喋り猫のミケちゃん――!」


「ニ” ニ” ニ” ニ” ニ”(よろしくね)!」


「おおーっと早くも『よろしくね』を頂いちゃったよーん! 僕ちゃんも初めて聞いた時は、すっごい驚き桃の木山椒の木―! ここ、天海神社では、可愛い子供と美人巫女さんが『何でも相談』をやっていて、みんなのお悩みをズバっと解決してくれるんだ! 僕ちゃんも助けられたよ。ありがとう――!」


「お参りしにきてほしいねん!」


 流石じぞーちゃん。カワイイ挨拶はお手の物ね!

 

「皆さん、お近くにお寄りの際は、是非京都の奥座敷にある、天海神社にお立ちより下さいね」


 私も精一杯の笑顔を見せ、カメラに向けて手を振った翌日以降、この配信のお陰で天海神社に参拝客が増えた。収入が格段に増えて今回のG(お金)は沢山貰える事になった。



 生配信、恐るべし・・・・!



 みんなのお陰でゲットできたGなので、食費にたっぷり充ててご飯で還元した。更に痛んでいた本殿の修繕、高額なお供え物、他にも色々出来ることが徐々に増えて来た。参拝客が増えたから、神社の仕事が忙しくなってきている。有難い!


 そんなある日の事。丁度社務所で雑用をしている時だった。電話が鳴り出した。「はい、天海神社です」


『あ、神奈ちゃん? 駒井だけど』


「はい。どうされましたか?」


『事件発生だよ。ちょっと相談に乗ってくれないかな』



 もしかして、次の敵が出現したのかしら!

 果たして次は、どんな敵が待っているのやら!?



 

数ある作品の中から、この作品を見つけ、お読み下さりありがとうございます。


評価・ブックマーク等で応援頂けると幸いですm(__)m


※執筆機関に入りますので、11/7頃までお休みします。

六章が書き終えたら連載再開致します。それまでお待ちください。


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