其の六
敵を倒しても完全にトドメを刺した訳ではないから、Gは落とさなかった模様。ダメで元々。その辺にGが落ちていないか、目をさっと走らせてみたけれど何も落ちていなかった。くすん。みんなの食費・・・・。欲しかったなぁ。
落ち込んでいる私に、ミケが話しかけて来た。
「いい、神奈。みんなも聞いて。最近摩訶不思議な事が起こっているのは、やっぱりこの近くで何か良くないパワーが働いているからみたいなの。さっきのねずみが教えてくれたわ」
「そ、そうなの?」
諸悪の根源の情報ってコトね!
落ち込んでいる場合じゃないと、気持ちを奮い立たせた。
「その前に話しておかなきゃいけない事があるわ。神奈、よく聞いてね」
「ええ」
「今、悪しき力が人間の勝手な行動を、罰せようとしているみたいなの。信仰心が失われた場所から、その悪しき力が広がっているわ。まず、町はずれの地蔵の場所がそうよね。昔はきちんと手入れもされていて、お供え物も沢山あった筈。それを彼ら――ねずみだけじゃなくて、森の動物や野良の犬や猫が分けて食べていたのよ。アタクシのように優しいダーリンが飼ってくれる猫や犬はいいけれど、そうじゃなかったら住処を追われ、食べるものが無くて畑に入ったら害獣扱い。あのねずみ達は今まで山で暮らしていて、地蔵の所のお供え物をみんなで分けて食べていたみたいなの。でも、最近あの一帯が手入れもされないしお供えも無いから、ついに危険を冒して町までやって来て人家に入ったみたい。人間に捕まると殺されてしまうから、本当は人家のものを漁るのは止めたいけれど、食べなきゃ死んじゃうって困っていた所に、悪しき力に取り込まれたのよ。そういう経緯があるから、人間を恨んでいる動物たちが増えているのは確かね」
「だから何者かが呪術を使って、ねずみを操ってたってワケか」
天人が腕組みをしながら、低く唸った。「やっぱ天上界の神が・・・・俺らの同族が絡んでるのか・・・・?」
独り言を飲み込むように、天人が小さく呟いた。
天人の言う通りかもしれない。
だって『よく来た。この時を待っていたぞ』――って、ねずみが外に飛び出た時に頭に響いた、あのお腹の底から響くような声。人間のものではないような気がする。神様のものだって言われた方がしっくりくるもの。
「人間を恨むかぁ・・・・それは、そうかもしれない」
じぞーちゃんも、天人に同調した。
「神奈。ボクが居る場所もそうだけど、地蔵とか守り神っていうのは、鎮座している場所を護る『結界』の意味があって、悪しき力を浄化し、悪い気を中に入れないっていう力が働いている事があるねん。でも最近は、そういう力が弱ってる。神奈みたいに、ボク達を信仰してくれる人間が減ったし、荒れ放題になっている神社や寺が増えたんやもん」
言われてみればそうだ。じぞーちゃんの言う通りだ。
現にじぞーちゃんがいた場所が、荒れ放題になっていた。
「それは・・・・ごめんなさい。でも、私たちだって生きるのに必死なの。誰も、あなたたちの領域を侵そうと思っている訳じゃ無いわ。手入れをしてくれる方も徐々に高齢化して、やりたくてもできないのが現状よ」
「ええ、解っているわ。神奈の事を言っているんじゃないの。貴女みたいな考えの人間ばかりじゃないでしょ。そうじゃない他の悪しき考えを持つ人間が多いって話。まあ、人間の話はいいわ。神奈にすれば面白くない話でしょうし、アタクシ、不毛な争いはしたくないの」
「つまりはアレか。そういう人間を良く思っていないパワーが、人間を傷つけようとしているってコトだよな? 何者かが呪詛を使って・・・・人間に復讐しようとしているのかもな」
「坊主もたまにはまともな事を言うのね。見直したわ」彼女は満足そうに髭を揺らし、尻尾をピンと立てて笑った。「だから、その出所を探す必要があるでしょう。疫病もそういう所から発症されているのかもしれないし」
「そうね。何でも相談を続けながら、調査を続けましょう!」
「ええ、そうね。でもその前にひとつ、神奈にお願いがあるの」
「何かしら?」
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