其の五
二十一世紀、いよいよ現代で魔法が使える時代となりましたーって順応しなきゃ。やっていけない。
ただ、魔法や攻撃ものに伏字ばかりが当て込んであって、読み物としてはどうかと思うけれど、まあ、いいでしょう。版権問題は大きいわ。
そんな版権よりも、目の前の問題を何とかしないと!
このまま劣勢が続くようなら、ゲームオーバー=全滅になっちゃうし。
そんな事になったらG(お金)が減るっ!!
だめよ、だめよだめよ! 全滅なんて絶対にさせないわ!
今の財政で持ち金半分とか、洒落にならないっ!!
「氷怒(ヒャ〇)――っ!」
伏字になっているのかいないのか、ちょっとグレーな雰囲気ではあるけれど、まあいいでしょう。私は冷気の呪文を唱えてみた。
すると、大ねずみの足に冷気の塊が飛んでいき、更に勾玉の力で増幅された気は、あっという間に大ねずみの足を氷漬けにしてしまったの!
『ぐあああーっ!』
「でかした、神奈! よっしゃ、トドメっ」
天人が空高くジャンプして、炎の力を増幅させた剣で大ねずみを一刀両断!
『ぎゃああああああああっ!』
大ねずみの断末魔が響き、巨体がずううーん、と空き地に転がった。
どす黒い霧のようなもので覆われていたこの一帯の空気が、すっと変わるのが解った。
「へへん。どうだ、俺の活躍を見たか!」
はっはっはー、と得意げな顔で威張り倒す天人。ふふ。今日ばかりは花を持たせてあげましょう。大活躍だったものね。
変化っ、と小さな可愛い声が聞こえると、かんなー、と言いながらててっ、とじぞーちゃんがこっちへ来てくれた。「ボク、役に立てなくてごめん。大丈夫やった?」
「ええ。平気よ。天人が助けてくれたから。ミケも頑張ってくれたし!」
「神奈も大活躍やったもん! スゴイよ!」
手を取り合って喜んだ。
「見て、神奈! ねずみの額に・・・・何か、紋章みたいなものが浮かんでいるわ!」
ミケが叫んだので倒れた大ねずみを見ると、確かに言う通り、赤黒く不吉な形の紋章のようなものが浮かんでいた。そこが不気味に光って、しゅうしゅうと変な音を立てている。
「んっ・・・・これは!」天人が険しい顔を見せた。「天上界の紋だ! しかも・・・・禁忌の呪詛だ。何でこんなトコに? 一体誰が? 俺以外にも、天上界から誰かやって来たのか? いや、それよりも早くこの紋を何とかしねえと、このねずみまた復活するぞ!」
「えええ――っ!?」
「そんなぁっ」
「なんとかなさい!」
口々に叫んだ。
「簡単に説明すると、これは『操りに特化した呪詛』だ。対象を操るだけじゃなくて、化け物みたいな力を植え付けた上、対象が死ぬか力尽きるまで効力がある恐ろしい術なんだ。危険でロクな事にしか使われないから、オヤジが禁止したモンだ。それを人間界で使える奴がいるなんて、これは一体――」
「詳しい説明は後にして、早く何とかしましょうよ! どうすればいいっ。何か方法は無いの!?」
「この術を破る方法は、掛けられた紋ごと破壊して対象を殺すか、浄化するしかない――って、そうだ! 神奈だったら浄化ができるじゃねえか! 今すぐ対象を浄化してやってくれ。破壊して殺す事はできるけど、もし操られているのが人間だったら、そういう訳にはいかなくなるだろ。このねずみだって、捕まって術をかけたヤツに利用されているだけだ」
「解った! とにかくやってみるわ。どうすればいいの?」
「勾玉で力を増幅させて、鏡を使えばいいと思う。呪詛が払われた時、本当の姿が鏡に映し出される。その姿を取り戻せるように、神奈が祈ってくれ」
「任せておいて!」
さっき預かった勾玉を首からかけ、神器のひとつである鏡を取り出した。
しっかりと大ねずみを見据え、不思議な鏡をそちらへ向けて心から祈った。
するとドン、と大きな気の塊が私の中から放出された。その途端、共鳴した勾玉が私の気を増幅させた後、鏡から無数の光が発せられ、乱反射して辺りを青白く照らした。
あまりのまばゆさに全員が目を伏せ、光の攻撃を避ける程に輝いた。
不穏な空気が漂っていたこの一帯は、不思議な力に包まれていた。恐らく、浄化に成功したのだろう。お陰で私はまた立てなくなってしまった。パワーを使い果たしてしまったのだ。
見ると、さっきまで皮の焼け焦げた嫌な臭いをまとった大ねずみの姿は消えていて、代わりに掌よりも少し大きな、元の大きさに戻ったねずみが鎮座していた。
巨大なねずみに見慣れたから、この程度ならどうって事の無い大きさに思えた。もう怖くない。
「ちゅーちゅー」
「ん? なになに、ふんふん。あら、そーなの」
すかさずミケが、ねずみと対話を始めた。
ていうか、猫ってねずみと喋れるんだ・・・・?
暫く謎の対話が続いた。
「ちゅーちゅー」
「ふんふん。へえ、そうなの。それは気の毒ね」
何が気の毒なのだろう。
まあ、神様が現世に居て、お地蔵様が子供の姿になり、幽体の猫が身体を取り戻した上に人の言葉を喋っているのだから、ねずみと話すなんて造作もない事なのかもしれない。
摩訶不思議な事が周りで起こっているのが当たり前になっているから、あまり驚かなくなってしまった。
「そちらの言い分はわかったわ。解決の約束をするから、安心して住処にお帰りなさい。後はこっちで何とかしておくから。その代わり、もう人間の家で悪さやご飯を探したりしないでね。約束よ? 破ったらアタクシが貴女を食べちゃうからね」
「ちゅーちゅー!!」
ねずみは一目散に走って山の方を目指して逃げて行った。その後から、小ねずみ達が数匹、追いかけて行った。
「ふう。やれやれ。一件落着ね」
ミケがピン、と尻尾を立ててこちらへ戻って来た。
その時、チャラララーラーラッラー、と頭に何かファンファーレのような、レベルアップの曲が頭の中に流れた。
~お好きなゲームやアニメのレベルアップ曲を流して、お楽しみ下さい~
あら。何か、少し強くなったような気がする・・・・?
これは、レベルアップしたのかしら!
経験値が貰えたのね! やったわ!
だったらG(お金)は!? 経験値とセットで貰える筈なのに、あれっ。どうしてGだけが無いの!?
そんなあああああ――っ。
こんなに苦労したのにいいいい――っ!
お金貰えないのおおおお――っ!?
数ある作品の中から、この作品を見つけ、お読み下さりありがとうございます。
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