其の三
駒井さんが納得してくれたのでこれ以上は言及しない事にして、早速調査を開始した。
ねずみじゃないかもしれないから、お祓いの段取りも付けておいた。勘が当たっていてねずみだった場合、ついでにお祓いもしておけば百人力。天人に神術唱えて貰って、私がきちんとお祓い(浄化)する、と。
一日五千円くらい稼げたら、贅沢しなきゃみんなの食費は何とかなりそう。一万円稼げたら、もっといいわね!
でも、アルバイト料が貰えるだけでいいわ。とりあえずアルバイト賃に子供と猫にお金を払ってくれる人はいないでしょうから、パーティー全体で合わせて・・・・ひとつ用件を解決したら、三千円くらい貰えたらいいのかな? こういった何でも相談みたいな料金の相場が解らないから、難しい。
よし。やっぱり一回五千円は貰う事にしよう。最低限みんなの食費は確保しなきゃ。特に天人はよく食べるから。神様が普通の食事パクパク食べるなんて、おかしな話だと思うけど。
「駒井さん。とりあえず家を調べてみます。ご家族は応接室にお集まりいただいて、結果をお待ちください」
「ああ、今は私しかいないから、気兼ねせずに見て回ってくれるかな」
「承知いたしました」
「にゃー」
今度は間違えて人間の言葉を喋ったりせず、ミケが鳴いた。
応接室の扉を閉め、広い廊下を歩いた。おおよそ、アタリは付けている。迷わず台所へ向かった。さあ・・・・この騒動の元凶は見つかるのか!?
昔ながらの家だから、広い造りなのにいちいち扉で仕切られている。キッチンへ入るのも扉があり、そこを開けて中へ入った。
「ミケ、宜しくね」
「任せておいて」
そう言ってミケが早速するするっと大きな体をどうにか丸めて、戸棚の奥の狭い所へ入って行った。流石猫だわ。
「ちょっとー。そこにいるのは解っているのよー」ミケが更に続ける。「出ないと目玉をほじくるわよー!」
どこかで聞いた歌のような台詞ね。
「ちゅーちゅー」
すると、私の手のひらより大きなねずみが、ちゅーちゅーと鳴きながら戸棚の奥から出てきたの!
「きゃぁあああ――っ」
小さい手乗りハムスターくらいだと思っていたのに、出てきたねずみのあまりの巨体さに、思わず悲鳴を上げて天人の後ろに隠れた。ああいうのは、正直苦手・・・・。
「何だっ、急に?」
「いや、ちょっと想像以上の大きさで・・・・」
「鬼のお前でも怖いモンあるんだな」
フっ、と優しく笑われた。
途端に、ドキドキと心拍数が上がり出す。
あれ。なんで・・・・こんなつもりじゃなかったのに・・・・!
「お、鬼じゃないから!」
胸の中に芽生えた不思議な気持ちを追い払うように、慌てて怒った。「巫女だって、何度も言っているのに」
「へいへい。鬼の巫女様ですなー」
「もう・・・・」
天人とのやり取りも色々慣れてしまったせいか、前程腹が立たなくなった。
私は天人の背中からそっと覗いて、ミケがねずみと対峙するところを見つめた。
ねずみはちゅーちゅーと鳴いている。きゃあああ・・・・それだけでゾワゾワと鳥肌が立つ・・・・。
「大丈夫だって」天人がにこやかに笑い、ぽんぽんと私の肩を叩いて言った。「ねずみなんて、痛くもかゆくもないから。この世で神奈より怖いものはないぞ。うん、うん。何てったって、オヤジより怖いからなー」
「どっ・・・・どういう意味よ!」
私が怒り出したので失言に気づいた天人が慌てて、何でもございませーぇん、と繕った。
本当に失礼しちゃう!
「大丈夫よ神奈。貴女の方が身体は大きいんだから、小さなねずみを怖がることなんて無いの。これは、私の餌だと思えばいいのよ」
「え、ええ。そうね・・・・」
ミケに諭されてしまった。まあ、私より遥に年上だろうし、彼女の言葉には説得力がある。しかし餌と思うには抵抗があるので、そこだけは納得できなかった。
「さあ、行くわよーっ!」
ちゅーちゅー言っているねずみに、ミケが飛び掛かって行った。
やーんっ。もしかしてこれが戦闘!? 私の脳内で戦闘曲が流れ出した。チャララララララー。
~是非、お好きな戦闘BGMを頭に流しながらお読み下さい~
ミケの攻撃! ミス! ねずみはすばやく避けた!
「オラアアっ! 喰らえ、炎――モガっ・・・・!」慌てて天人の口を押さえた。
「だめっ! こんなトコで剣なんか抜いちゃ! 駒井さんの家が吹き飛んじゃうでしょーっ!」
天人の攻撃! ミス! 神奈によって攻撃は封じられた!
神奈はねずみに鳥肌を立て、天人の背中に隠れて身をすくめている!
じぞーちゃんはオロオロしているだけで、何の役にも立たなかった!!
隙を見て、ねずみは逃げ出した!
「まちなさーい!」
ミケと天人がいち早く追いかけた!
仕方なく私とじぞーちゃんも後を追いかけた!
裏口から表に出て、駒井邸から少し離れた空き地へねずみが逃げ込んだが、ミケは素早くねずみの尻尾を捕まえ、生け捕りにした!
「捕まえたのねっ! やったわ、ミケ!」
「ねずみ退治はアタクシに任せて」
彼女が得意げに言った、その時だった。
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