其の一
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写真:玉置朱音様
「何で神様である俺の仲間が、人間と地蔵と猫なんだよ!」
「エラソーに文句言える立場? アタクシと地蔵はともかく、天上界追い出された出来損ないの坊主を面倒見なくちゃいけない神奈が可哀想だわ。身の程をわきまえなさい」
チャラ神様のパーティーが、どうやら完成した模様です。
「ったく・・・・。何でこんなに酷い目に遭わされた俺が神奈を背負って、しかもじぞーやミケまでを神社へ連れて帰らにゃいかんのだ・・・・」
どうも。天海神奈です。
現在、不本意ながらチャラ神様である天人に背負われ、天海神社まで連れて帰って貰っている所です。その道中、じぞーちゃんとミケが、ぶつぶつ文句を言いながら歩いている天人に付いて来たところから、このお話はスタートです。
・・・・まあ、彼ら全員、私が面倒見るしかないわよね、と頭を痛めていた所だ。天上界の蒼玄様(天人のお父様)から直々に依頼されたから天人を追い出す訳にはいかないし、それにもし追い出したら厄介な事になりそうだし、じぞーちゃんは子供というより地蔵だし、ミケも普通の猫じゃなくて幽霊猫・・・・。
更に悪しき力の源を突き止め、封印のお手伝いまで約束を・・・・!
勿論、悪しき力を封印したあかつきの願い事は、この世界から悪しきウィルスを壊滅させる事、もしくは世界平和ね。でも正直な所、天海神社の衰退を防ぎたいというのが一番の希望かもしれない。
ただ、このままだと問題解決以前に、天海神社が本気で廃業の危機・・・・!
食費が・・・・。(切実で泣きたい)
蒼玄様に、少しでも天人の食費を請求すればよかったかも・・・・!
だっていっぱい食べるんだもん!!
悪しき力の封印とかそういう厄介事よりも、目の前の問題の方が大きすぎて、頭が痛くて倒れそうだ。
「神奈、顔色悪いけれど大丈夫なの?」
私を見上げ、ミケが心配そうに声を掛けてくれた。
「ええ、大丈夫よ」
私の体調じゃなくて、実家の家計が心配なのよぉ・・・・。みんなの食費・・・・ああああ・・・・このままじゃ全員路頭に迷う!
「アタクシの為にパワーを使わせてしまったものね。ごめんなさい。ホラ、天人。ちゃんと神奈を安全に神社まで運びなさい!」
「ウッセーな! 今やってるだろ! 結構重いんだよ!!」
「重くて悪かったわねっ」
レディーに向かって失礼しちゃう!
冷気をお見舞いしようかと思ったけれど、自分も被害に遭いそうだったからやめた。
「はー。人間界来てもロクな目にしか遭わねーし、早く天界へ還りてー」
「私だって早く還って欲しいわよ」
「あ? 俺が還ったら淋しい淋しいって泣くんじゃねーの?」
軽口を叩かれ、ニヤニヤ笑われた。冗談で言われたって解っているのに、ほんの少しでも『そうかもしれない』なんて思ってしまい、心臓がドクドクと早く脈打ちだした。「誰がアンタなんかの為に泣くもんですか! 冗談でも止めて!」
ムキになって全力で否定してしまった。おかしい。何なの、この感情!
「あーあー。お前が歩けないから慈悲で背負ってやってる恩人に向かって、酷い言い草だぜ全く」
減らず口もここまで来たら立派よね。まあ、私もいちいち反応しないで、受け流しましょう。ミケと天人の幼稚園児の喧嘩みたいになったら、目も当てられないわ。大人になるのよ、神奈。天人とは違うの。そうよ。こんな男に心を乱されている場合じゃないわ。
そんなやり取りを繰り返しているうちに、実家の天海神社へ到着。午前十時を回った所なのに、参拝客は皆無だ。この惨状・・・・。本当にうちの神社、もうやっていけないよ・・・・。
何時もギリギリの所で頑張っていた家計も、赤字の一途を辿るばかり。僅かな蓄えは減る一方。そんな所にこの神様ご一行。無理・・・・。無理だよ・・・・。食費の捻出なんかできない。
「みんなに話があるの」
天人の背から降ろしてもらい、必死に立ち上がった。
何とか立てるまでは回復したから、後はもう少し休憩すれば何とか元通りになりそうだ。真剣な顔をみんなに向けた。
昨日と違って少量のパワーだったからなのか、回復は早い。どうにもゆっくり休憩をしていれば、徐々に体調は戻って来る。言うなれば、全力疾走をして渾身のパワーを使い果たしたようなイメージか。だから休めば回復するのだろう。
「話って?」みんなが私に注目した。
「いい、みんなよく聞いて。この神社の惨状を。承知の通り、流行りのウィルス――みんなには疫病って言った方が解りやすいのかな? のせいで、誰も参拝客がいないの。それはどういう事かと言うと、外貨を稼ぐことが全くできないの! みんなの面倒を見たいけど、食費の捻出が本当にキツくて。赤字続きだから何とかしたいのよ。天海神社に、沢山の人が訪れ、お参りをしてくれる方法を考えて! この神社を利用して貰える機会がとても減っているから、そこを何とかしたい。そして、悪い力の源を探し出すの」
私の勢いに、みんながしん、となった。
「このままだと、悪い力を探し出す前にこの神社が無くなってしまうわ。そんな事は避けたいの。だから、みんなも手伝って! 特に天人。神様なんでしょう? お願いよ」
苦しい時は、神様に頼むのがセオリーってものよ。
「よーし。だったら神術ショーでもやってやろうか? 天界で結構人気だったんだけど。宴会の余興みたいでさ」
「じゃ、ボクさー、地蔵に変化できちゃうから! それを見せてあげるっていうのはどう? 他の人間だったらビックリしちゃうよね!?」
「アタクシ、入り口に立ってお喋りしながら呼び込みするわよ。こう見えても芸達者なの」
みんなの提案は、私の頭痛を助長させただけだった。
「・・・・ここは人間界よ。そう言った摩訶不思議系の力の披露は絶対にダメ」
確かにそう言った力の披露をすれば、あっという間に世間にこの神社を知らしめることはできるだろう。でも、そうなったら心無い人が彼らを連れて行き、お金儲けの為の道具にしてしまう。天人やじぞーちゃんやミケを守りながら、目立たないようにこの神社で面倒を見るしかないのだ。その上、悪しき力を封印するお手伝いまで。しかしそれにはお金が必要。
でもおぉ――っ! 今天海神社にそんな余裕はなーいっ!!
数ある作品の中から、この作品を見つけ、お読み下さりありがとうございます。
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