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其の三

 



「あ”――、クッソ酷い目に遭ったぜ!」




 文句を言いながらも白ご飯をムシャムシャ、沢庵をボリボリかじって、煮物をぱくぱく食べて、酸っぱいとブツブツ言いながらもずく酢や梅干しにまで箸を付ける天人。玉子焼きは既に二皿目だ。


「あのね。ちょっとは遠慮しなさいよ。ハッキリ言って、ここは貧乏神社なんだから!」


「あぁ? 神様を敬うのがお前らの仕事だろー。もっと飯出せ」


「天人が来てから、お酒は毎晩飲むからすぐに無くなるし、ご飯も食べ過ぎよ! 入って来るお金より出て行くお金の方が多いんだから、赤字よ、赤字!」


「アカジって何だ。食えるのか? あまり美味くなさそーな名前だけど」


「赤字って言うのは、収入に対して支出が多いって事よ。出て行くお金が多いの! 解った!?」


「ほーい。わかったー。飯おかわり」


 これは全然解っていないわね。はあ、とため息が零れた。

 お茶碗いっぱいにご飯よそったのに、もう無くなっている。ていうか、神様って人間と同じような食事でいいのかな? お肉も魚も野菜も、何でも食べる雑食だ。

 じぞーちゃんは、お供え物のお団子を食べたいというので、お茶と一緒に出してあげた。

 嬉しそうに、ゆっくりと噛みしめてお団子を食べている。

 お地蔵様のお食事は団子なのかと思いきや、そうではないらしい。お供え物を直接摂取する訳ではないから、そこに込められた祈りや感謝であったり、念が大切なのだとか。しかし、昨今そういった念や祈りが込められたお供え物は、ありつけることが減ったんだって。


 今、じぞーちゃんはお地蔵様が人間として具現化しているから、お供え物を直接手に取り、食べる事ができて嬉しいのだとか。神社にお供えしていたおさがりだけれど、美味しい祈りの念がボクのパワーになるんだ、って喜んでいた。


「とりあえず食事が終わったら、町はずれの祠に行ってみましょう。じぞーちゃんが困っているから、私達を訪ねてくれたんでしょう?」


「神奈は話が通じて助かるなぁ。そう、困ってる事があるんや」


「どんな事?」


「ボクのお友達を、成仏させて欲しいねん」


「成仏・・・・?」


「うん。詳しくは友達に聞いて。だから、一緒に来てくれる?」


「わかったわ」


 これも、人助け(?)よね。お地蔵様直々のお願いとあれば、断る訳にはいかない。昨日天人のお父様と約束した、悪しきパワーにも何か関係があるかもしれないし、とにかく情報収集していきましょう。


 

「天人も付いて来てね」


「あ”? 何で俺が」


「ご飯打ち切るわよ。昼も、夜も、明日も、その先もずーっと」


「・・・・行きます。心から喜んで行かせて頂きます」


 最初から来るって言えばいいのに。

 それにしても、と思い出す。この男が、出会って間もない私に惚れているとか、無いわ。

 じぞーちゃんが変な事を言うから、調子狂っちゃう。


 天地がひっくり返ってもあり得ねー話だっ――って、それはコッチの台詞よ。





 私だって天人なんか、絶――っっ対にお断りだからね!






 食事を終えた後、渋る天人を無理やり引き連れ、町はずれの祠へ昨日同様に向かった。

 悪しき力が蔓延っているこの周辺のお祓いをしに行ってくる、と父に告げた天人。例の勾玉の力でお父さんは、今だに天人を本当の素晴らしい神様だと信じて疑っていないものだから、それは有難い、是非ともお願いします、と快く送り出してくれた。


 浄化なんかできないクセに、よく言うわ。ホント、調子いいんだから。

 流石、チャラ神様ね。


 お祓い用の鈴を持った自前の巫女衣装の私と、大層な神様衣装の天人、更にじぞーちゃんがいるものだから、町の人々は『清めとお祓いができる一行パーティー』と勘違いしていて、頑張れー、と声を掛けてくれる始末。


 あああ・・・・違うのに・・・・。


 とりあえず昨日と同じ所へやって来た。鬱蒼とした木々は相変わらずだけれど、町長の駒井さんに頼んで近々綺麗にして貰う事になった。

 この辺は以前までは、美しい山桜が咲き誇り、知る人ぞ知る隠れた名所だったそうだ。しかし、手入れが大変で中々人も来ないので、そのままになってしまったのだとか。

 お地蔵様の祠が壊れていて、天人が直してくれた、と一応彼の株は上げておいた。また今度、特上寿司をご馳走になる約束をしたらしい。


「あれ、お供え物が増えてる・・・・?」


 小さな祠には、お菓子とお酒が増えていた。

 

「うん。ここ、昨日綺麗にしてくれたよね。そしたら早速、町の人が一人来てくれたんだよ! すごく久々にお参りして貰って、ボクめっちゃ嬉しかった」


 にこっと笑う、じぞーちゃんの可愛さったら無い。


「良かったな、じぞー」


「うん。天人、ありがとう。オマエが祠を直してくれたんやもんね?」


「そうだぞ。はっはっは。その調子で俺にもっと感謝しろ」


「私もお供え物を持って、頻繁にお参りに来るからね。それより、お友達はどこにいるの?」


「今、寝てるよ」


 寝てる・・・・? どこにいるのだろう。


「おーい、ミケー」


 ミケ・・・・?



――呼んだあー?



 のそっとした動物が歩くような気配がして、辺りの空気が変わった。

 一体何が・・・・現れるのだろう。


 

――ここよ。ここにいるわー。


「ここにいるって教えてくれているけれど、ごめんなさい、何も見えないわ」


 声は聞こえるけれど、姿はどこにも見当たらなかった。


「ここ? 俺は何も見えねーし、全く聞こえねーぞ」


 天人・・・・アンタ、神様じゃないの?

 どうして私の方が、不思議な声を聞いたりする能力があるのだ。

 おかしいじゃない。


「おーい、誰かいるのかー?」


――この男、アタクシの姿どころか、声も聞こえないじゃないの!


 ・・・・すみません。不出来な神様で。

数ある作品の中から、この作品を見つけ、お読み下さりありがとうございます。


評価・ブックマーク等で応援頂けると幸いですm(__)m


定期更新は、毎日21時の時間帯です。

執筆連載中作品のため、固定更新&ゲリラ更新となります。

固定は毎日21時の時間帯更新を必ず行います! よろしくお願いいたします。

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