其の五
何なのあの男!!
困っている人間が転がっているってのに、それを解っているにも関わらず、放置して行くなんて!!
神様失格よ!
本気で赦せな――いっ!!
身体は動かせなくても、怒りのパワーは健在だ。ゴゴゴゴと私をとてつもないオーラが包み、青白く光った。その途端――
「あっ!? 冷てえ――っ! わっ、凍えるっ! 何だっ!?」
少し距離が出来た天人が青白く光った勾玉を摘まみ上げ、私の怒りの視線に気が付いたようで、ヒイヒイ言いながら慌てて戻って来た。
「あのぅー、神奈様。お困りごとはありませんか?」
目の前にしゃがみこまれ、媚びへつらうように聞かれた。しかも真顔で。
「見てわかるでしょ。大丈夫じゃないから困っているの。それなのに置いて帰るって、どういう見解? 氷漬けにするわよ」
「すみません。二度としません。神に誓います」
「その神様はアンタなんでしょーが! ふざけないで。これから私を置いて帰ったりしたら、承知しないからね。こうなる事を覚えておきなさい」
「はい。はい。もうしませーん! 反省してまーすー」
相変わらずチャラいなあ。調子もいいし。
でも、この力(怒りのパワー)は便利ね。天人を大人しくさせて、使えるわ。勾玉の力を借りて、気をコントロールしなきゃ。
「それよりお前、何時まで待てば回復するんだよ?」
反省したと言う割には、やたらと偉そうだ。
「知らないわよ、そんなの。力が入らないんだから仕方ないでしょ」
「しゃーねーなぁ」
天人が私の上体を起こし、何と背中におぶってくれたのだ!
何時もはパチっと電撃が走るのに、何故か今はそれが無かった。あの電撃は一体何なのだろうか。危険人物だと認識しているから、近寄らないようにって事なのかしら?
「貸しだかんなー」
「貸しがひとつ減った所で、昨日からいっぱい私に借りを作りまくってるでしょ。全然足りないから、せいぜい働いて返しなさい」
「へーい」
文句を言うと氷漬けにされると思っているのか、意外に素直に私を背負って歩き出す天人。
イイヤツ・・・・なのよ、ね?
大きく逞しい背中は、何でも守ってくれそうな気がする――そう思うと、ほんの少しだけ胸がとくりと動いた。
ん? 何かしら。今の感情は。
――ありがとう。
「あれ。何か言った?」
「んにゃ、何も言ってねーけど」
「・・・・そう」
確かに聞こえたんだけどな。ありがとう、って。天人のお父さんの声じゃなくて、お地蔵様に到着する前から聞こえていた、もっと可愛らしい声。
もしかしたらお地蔵様がお礼を言ってくれたのかもしれない、と思って直した祠の方を天人の背におぶわれたまま振り返ったら、優しいお顔をされたお地蔵様が、にこやかに笑っているように見えた。
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