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にゃん銃士 ~姫を護るのはチートなにゃんこたち~  作者: 武田武蔵
第四部 フレデリック王子編
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第八百十一章 アイリスの病気

 どこの誰が密告者か、女王が病床に付いたと言うニュースが号外として配られたのは、その日の夕方の事だった。


「アイリス女王、復帰は絶望的か」

 そのような号外が出たのならば、黙ってはいられない。帰宅途中だった俺はすぐに城へと引き返した。

「シャルル! どうしたんだよ?」

 あまりの剣幕だったのか、門番のジャックは俺に声をかけてきた。どうやら、彼はこの国を揺るがすニュースをまだ知らないようだった。

「すまん、急いでいるのだ」

 俺が前へ進もうとすると、ジャックは手に持った槍を下げ、道を塞いだ。

「緊急事態だ、道を開けてくれ!」

 俺が言うと、

「お前、なんだかおかしいぞ? そんなやつは城に入れる訳にはいかねぇ」

 門番は食い下がる。

「これでもか!?」

俺は配られていた号外記事を見せた。ジャックはそれを見るなり、

「わかった。好きにしろ」

 と、槍を上げた。

「ありがとう」

「別に良いぜー! 疑ってすまなかったな!」

 彼の声を背に受けて、俺は城へと足を踏み入れた。


 フレデリックの部屋に向かわずに、まっすぐアイリスの部屋を目指す。かつて通った道が、どこか遠く感じる。

 こんなにも、急いでいるのに。

 やがて、やっとアイリスの部屋に辿り着くと、その扉を叩いた。

「アイリス様! ご無事ですか!?」

 城中に響くような大声で、俺は叫ぶ。間も無く、静かに扉が開かれた。

「どうしたのよ」

 あらわれたのはソフィだった。

「こ、こんな記事が巷に配られている」

 俺は再び号外記事を見せた。すると、ソフィの顔色はみるみる青くなり、

「ちょっと待って頂戴」

 そう言って、背を向けた。

「セドリック、ちょっと来て」

 彼女は同僚のエルフを呼ぶ。

 考えればおかしな事だ。

 もう、退勤時間を過ぎているのに、アイリスの従者の彼らがいるのだ。

「なんだ……おぉ、シャルル」

 ソフィに変わって、セドリックが顔を出した。

「これを見て」

 彼の背後から、ソフィが言葉を紡ぐ。

「アイリス女王、病床に……一体誰がこんな事を書いたのだ」

 記事に目を通し、彼は言う。

「それより、どうしてお前たちが今まで残っているのだ。もう退勤の時間はとっくに過ぎているはずだぞ?」

「まぁ、良いわ。……入って」

 と、ソフィは言った。

 中に入ると、久々に見るシャンデリアが俺を出迎えた。それに、寝台に横たわるアイリスの姿があった。

「アイリス様は大丈夫なのか?」

「だから大事になると言ったのですよ、アイリス様」

 そんな言葉が降ってきた。

「え?」

 振り向いた俺は、声の主のセドリックに対して目を丸めた。

 そんな、大事になる?

「……だって言えないじゃない……」

 消え入りそうなアイリスの声が聞こえる。

「……朝食で食べたポーチドエッグが腐っていた事による食あたりなんて……」

「ローランサン先生も、もう大丈夫との事です。しかし、誰がこんなでたらめな記事を……」

「明日演説するわ……心配をかけたって」

 布団から起き上がり、アイリス答えた。その顔は、青ざめたそれではない。

「安心……しました」

 思わず、俺は腰の力が抜けたようにその場にへたり込んだ。

「ごめんなさいね、シャルル」

 アイリスは俺の頭を撫でる。俺は安心していた。

 翌日の演説で、アイリスが倒れるまでは。


お読みいただきありがとうございます。

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