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にゃん銃士 ~姫を護るのはチートなにゃんこたち~  作者: 武田武蔵
第四部 フレデリック王子編
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第八百三章 別れ

 食堂前の玄関ホールにつくと、他の王族の従者たちが扉が開かれるのを待っていた。

「シャルルはん! お久しゅう!」

 アランが声をかけてきた。こいつに関わるとろくな事がないので無視しようと思ったが、一応は他の従者たちも見ている。

 適当に、あしらっておこう。

「久しいな、元気だったか?」

「それがでんな、シャルルはん」

 と、彼は俺にさらに近づいた。やばい、話が長くなるやつだ。

「おかんが、天文台から故郷へ帰る事になったんですわ」

「なんだって!?」

 俺は声を張り上げていた。あのラパラ女史が故郷へ帰るだと?

 ふと、疑問に思う。

 ならば、アランはどうするのだろう。

「そうなんですわ。それで、自分も一緒に帰ってこいと言われましてぇな。明後日にはクォーツ国を立つのですわ」

 そうか。故郷に帰るのか。少し寂しいな。

 ルドルフの従者のアランとは、結構な付き合いだ。ルドルフがいれば、そこには彼がいる。それが、当たり前だった。

 日常は、時に残酷に今まで培ってきたものをひっくり返す。

 それは、いつの時代、いつの世界も同じようだ。

「そうか……元気でな」

 そんな言葉しか、俺は返す事ができなかった。

「ありがとでんな、シャルルはん」

 ハンカチで涙と鼻水を拭い、アランは言った。


「意外だね、あの、ラパラ女史が」

 フレデリックの部屋に向かう道すがら、フランシスは呟いた。

「なにがだ?」

 俺が問うと、

「アイリス様からの命令だろう? その、故郷に帰らされると言うのは」

 フランシスはまっすぐに俺を見る。

「なんだか、理不尽だなぁって」

「そうだなぁ」

 俺は腕を組んだ。

 アイリスの判断ならば仕方がない。それで片付けていたが、理不尽と言えば理不尽かもしれない。

「まぁ、長年クォーツ国に貢献したものだ。爵位も貰っている。恐らく金も幾らかは出るのだろう」

 と、俺は推理した。

「アランかー、僕はあまり記憶がないなぁ……」

 従者たちの会話に、主人が乱入する。

「いつも兄上しか見ていなかったから」

 まぁ、主人としては従者は壁のようなものだからな。覚えていなくてもしょうがない。

「私がいる時は!?」

 すかさずアレットがフレデリックに詰め寄り言った。

「勿論、君しか見ていないよ、アレット」

「ほ・ん・と・う、に!?」

「本当だって。今日の昼食の時だって、君しか見ていなかったよ」

 フレデリックの背中に冷や汗が伝うのがわかる。

 女って、怖いね。

「まぁ良いわ」

 未来の夫を壁際まで追い詰めた妻は言った。

「今夜のオペラ、楽しみね」

「そ、そうだね」

 額に流れた汗をハンカチを使って拭き取り、フレデリックは言った。

「アレットは、カジミール二世の事は知っているのかい?」

「当たり前よ。あなたも知っているでしょう? フレデリック」

「ま、まぁそうだね……」

 フレデリックは言葉を濁した。ページが破かれていたなど、言える訳がない。

「エリザベート一世は習った?」

「えぇ。勿論」

 さらりとアレットは言った。フレデリックの動きが止まる。ここで、俺は初めて宰相クレチアンに恐怖した。

 王族たちに、正しい歴史を教えない。

 教えないと言う事は、無知な者が王座につく。それを、影で操る。

 つまるところ、国を乗っ取るつもりだったのだろう。


お読みいただきありがとうございます。

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