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にゃん銃士 ~姫を護るのはチートなにゃんこたち~  作者: 武田武蔵
第四部 フレデリック王子編
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第八百章 昼食の許可

 しばらくして、十二時を告げる鐘がなった。

「お昼ね、フレデリック」

 楽しく談笑していた二人は、いささか残念そうに項垂れる。

 アレットは、昼食はどうするのだろう。

「とりあえず一緒に食堂前の玄関ホールへ行くわ。女王陛下にも挨拶をしたいし」

 と、彼女はそう言って立ち上がった。

「わかった」

 フレデリックも立ち上がる。そうして、俺が開けた扉をくぐり、廊下へと出た。廊下は、思ったよりも暑いものだった。

「暑いね、キミ、大丈夫?」

 フランシスが俺に声をかける。地肌に汗が溜まり、人知れず流れ落ちて行く。これが、獣人に転生した唯一の悩みだ。

「俺よりも先にフレデリック様やアレット様を心配しろ」

 と、俺は耳打ちした。

 見れば、二人は暑そうに手で扇を作り扇いでいる。暑いからか、手を繋ぐ事を忘れている。今日は、季節外れの暑さだ。

「フレデリック様、アレット様、大丈夫ー」

 そう言いながら、フランシスは絹の道を通ってやってきたのだろう扇子を開き、脇から扇いでいた。

「あ、ありがとう。フランシス」

 ほんの微風に感謝をくれる主人は、本当に優しいものだ。だがしかし、それが時に悪魔に聞かれる事がある。

 それを咎めたかったが、今はアレットの面前だ。無様な姿を晒したくはないだろうし、俺だって主人のそんな姿を、その許嫁に見せたくはない。あとに回す事も考えたが、生憎今日は観劇をみる日だ。

 つまるところ、注意は明日になると言う事だ。

やがて、玄関ホールへと続く階段を下りる。そこにいたのは──

「早いわね、フレデリック」

 と、声の主は頬笑んだ。

「は、母上っ」

 フレデリックは急に改まる。

「早いですか? 僕の部屋の時計は、出る時には既に十二時の鐘が鳴った後でした」

「シャルル、懐中時計は確認したの?」

 アイリスは急に俺へと話を振る。俺が慌てて確認すると、時計の針は十一時五十分を指していた。

「時計の調整? わからないけれど、呼んだ方が良いのかしら?」

 アイリスは首を傾げる。

「幸いにも、ジャスミーヌおば様のいる隣のイサファ国には既に時計のお店ができて、職人もいるみたいだし」

「それが良いですね、母上。シャルルも、僕があの時、時間を確認しておけば良かった」

 皇太子は今日はしょぼくれてばかりだ。アレットは、そんな彼の姿を見て、おどろいている。

これからどんどん見せる事になりますよ。

「良いのよ、ちょうど良かったわ」

 アイリスはアレットと真っ直ぐ向き合って、

「アレット・ド・トルブレ。今日から、フレデリックを訪ねた際は、共に王族の食事に参加する事を許可します」

 よろしくね、と、アイリスは再び笑った。

「そんな、女王陛下……」

 アレットは戸惑っているように見えた。

「アイリス様の計らいでございますよ」

 隣にいたソフィが彼女に声をかけた。

「ありがとうございます……、女王陛下」

 頬を染め、アレットは言った。

「良かったね、アレット!」

 恐らく、このニュースに一番嬉しいのはフレデリックだろう。アレットの手を取り、跳ねた。良い恋人達だ。

「シャルル、ちょっと良いか?」

 セドリックがいつの間にか近付いて来、俺の耳に問いを投げ掛けた。

「どうした、セドリック」

 俺は首を傾げる。

「いや、アレット様は大丈夫なのか? その……思考の方で」

 二人を隔てる波がここで押し寄せた。そうだ、アレットは民主主義の思想を持っているのだ。

 それもかなり、強く。

「問題かもしれん……」

 俺は俯いた。

「そうか、わかった。酷な事を聞いたな」

 それだけ言って、セドリックは再びアイリスの背後についた。


お読みいただきありがとうございます。

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