表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
にゃん銃士 ~姫を護るのはチートなにゃんこたち~  作者: 武田武蔵
第四部 フレデリック王子編
776/813

第七百七十六章 免疫

「で、ボクたちはどうしようか」

 ブランシュと向かい合った椅子に腰掛け、フランシスは言った。

「どうするとは?」

 俺の言葉に、セルジュも駆け寄ってきた。

「あ、セルジュも来たね。フレデリック様も少し呼吸が楽になったみたいだから、今度はボクたちの問題がある」

 座って、と、彼は言った。そうして、立っている俺に向かって、

「シャルルも座って? 勿論ボクの隣ね」

 なんて恐ろしい時間だ。そんな事は言ってはいられないので、俺はそれに従い、少し席を離して座った。腕を伸ばしかけたフランシスが、届かないと見て、小さく打った舌打ちを、俺は忘れない。

「もうボクたちは疫病の感染者だよ。シャルル、キミだったらどうする?」

「ま、まぁ、治るまで外には出ないな」

 俺は腕を組んだ。

「でも、ここはボクらの家じゃない……」

 確かにそうだ。俺はしばらく悩んでから、

「城の客間を借りるか。広いばかりの城だ。余っているだろう」

 と、答えた。

「えっ? ……あ、良いね、それ。ボクもそうしようと思っていたのだ」

 嘘だ、今俺の話に乗っかっただけだろう。

「先輩、自分も賛成です。フレデリック様の病気が治り次第、各部屋に移りましょう」

 セルジュが声を上げた。彼はブランシュを見て、

「先生、あなたはどうなさるのですか?」

 すると、ブランシュは、

「私は朝になり次第一度帰らせて貰いますよ。エルフの誰かから、なにか便りが来ているかもしれませんから。それに、もう免疫がついているみたいでしてね。疫病にかかる事はもうないのかもしれないのですよ」

 そう答えた。成る程。

「もしかして、一度かかったら、もうかからないと言う事?」

 フランシスが頬杖をついた。後ろで、フレデリックの咳が聞こえてくる。

「あぁ、辛そうだなぁ……」

「エルフたちが早く特効薬を開発してくれれば良いのですがね」

 ブランシュは言う。そして、付け足すように、

「人間はわかりませんが、獣人である我々は、一度かかったらもうかからないと言えるでしょうね。ですから、シャルル男爵の言う通り、城の部屋を仮住まいにするのは良い手段でしょう」

 そう言った。

 そんな事を話している間に、空は暗闇から青みを帯びてきていた。夜明けが近いのだ。

 フレデリックは大分熱にうなされる事はなくなったようで、先ほどの体温は、平常値に下がっていた。サラマンダー、恐るべし。

「さて、私は一度帰らせていただきますよ。良い知らせがあれば、すぐに駆けつけます」

 そう言って、町医者はカバンを手にした。

「あぁ、俺が開けます」

 俺は踵を返した背中に向かって言った。そうして、扉を開ける。

「ありがたい」

 そう言って、ブランシュは帰っていった。

 フレデリックは咳き込む。それによって、目が覚めたようだった。

「……あれ? みん、な……いたの、かい?」

 咳き込みながら、彼は言った。

「大事な主人のピンチです。帰るなんて事はできません」

 俺は言った。

「なんだ、か……気分が……良いなぁ」

 咳の合間に、彼は言葉を紡ぐ。

「熱が下がったからだよ、フレデリック様。沢山汗をかいたね。クッションを変えなくちゃ」

 冷水に浸したタオルを絞り、額を拭いてやりながら、フランシスは言った。確かに、白いクッションには、滝のような汗のあとが染み付いている。

「でも、咳が残ってしまったね。熱も、またいつ上がってくるかわからないし」

「疫病は、怖いね……」

 フレデリックは呟いた。

「母上や……兄上たちは、大丈夫……なのだろうか……」

 酷い咳をしつつ、フレデリックは言った。本当に優しい方だ。己が今は一番辛いと言うのに。


お読みいただきありがとうございます。

評価(下にある☆を★で埋める)、ブックマークの他、レビュー、感想等よろしければ書いてくださると幸いです。日々の創作の糧になります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ