第七百五十一章 仲間との再会
とうとうアイリスとフレデリックが銃士隊視察の日がやって来た。またあの猫たちさぼっているんじゃないだろうな。
もっとも、脳筋とは言え案外真面目なマウロが副隊長の座についたのだ。恐らく、大丈夫だろう。
「シャルルー、なに神妙な顔をしているのさ」
俺の心配をよそに、同じく銃士隊詰所まで先導する為に前を歩くフランシスがのんきに話しかけてくる。草を踏む音が、どこか春の気配を感じさせる。
もう、冬は抜けたのだろうか。
「いや、またあの連中さぼってないかとな」
と、俺は顎に手をあてた。
「きっと大丈夫だよ」
頭の後ろで手を組んで、フランシスは答える。その根拠はどこから来ているのですか。俺の気持ちを察してか、彼は言葉を続けた。
「マウロが副隊長になっただろう? それに、セルジュも従者に昇格した。みんな真面目に取り組んで、アイリス様に日頃の成果を見せるはずだよ?」
成る程。なくもないパターンだ。
「まぁ、行ってみないとわからない、か」
「そうだよ。気楽に行こう」
フランシスが俺を見る。一瞬、目があった。その時に、
「ボクを見てくれたね……目も合わせてくれるなんて、幸せだぁ」
などとひとりごちている。そんな時は、放っておくに限る。
「そろそろかしら?」
後ろからアイリスの声が聞こえる。確かに、木造の詰所が見えてくる。それと共に、どこからか気合いを入れる声も届く。どうやら、不要な心配だったようだ。
やがて、詰所までつくと、その前の開けた場所で鍛練する銃士たちの姿があった。
「じ、女王陛下!?」
誰かが気がついて、皆一斉にこちらを向いた。模擬戦をしていただろう猫たちも、皆レイピアを置き、アイリスを見た。
オリヴィエがあわてて近付いて来、言葉を紡ぐ。
「これはこれはアイリス様にフレデリック様。ようこそ、銃士隊に」
ここで皆が敬礼する。
「ようこそいらっしゃいました!」
猫たちの雄々しい声が、木々の間に響いた。
「どうやら、視察はいらなかったようね、オリヴィエ」
と、アイリスは笑う。どうやら満足したようだ。
「セルジュ!」
数人の猫が、セルジュに抱きついた。
「リュカ、モーリス、ヴァーレル……」
猫団子の中心になったセルジュが、皆の名を呟く。そうして彼らはフレデリックを見ると、
「お久しぶりでございます、フレデリック様!」
再敬礼した。さすがに、女王の前で皇太子に抱きつく訳にはいかないのだろう。しかし、抱きつきたげにしている。
「あなたたち、フレデリックの旅に付き添ってくれた銃士たちよね?」
アイリスは言った。
「良いわよ? フレデリックがかまわないのなら」
「ほ、本当ですか?」
彼らは恐る恐るフレデリックを見た。すると彼は腕を広げ、
「抱きついて良いよ、苦労も楽しみも共にした仲間たち」
そう言った。
わっとしたように、彼らはフレデリックに抱きつく。
「フレデリック様、お久しぶりでございます!」
一番脇の猫、リュカが言葉を継いだ。
「日々鍛練に励んでいるみたいじゃあないか。安心したよ」
三人の頭を撫でながら、フレデリックは答えた。やっぱり心配だったんだ。
「これも、マウロの功績かしら?」
アイリスはオリヴィエに話しかけた。
「そうですね。彼が副隊長になってから、彼を見習って鍛練に励むものも増えました」
「呼びましたか? アイリス様」
オリヴィエの後ろから、マウロが顔を出す。
「あなたが偉い、そんな話をしていたところよ?」
と、アイリスは腰に手をあてた。
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