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にゃん銃士 ~姫を護るのはチートなにゃんこたち~  作者: 武田武蔵
第四部 フレデリック王子編
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第七百六章 すぐ身近にいる猫

 カフェに以前訪れた際には、外の席が空いていたのでそこに座ったが、今回は醜聞になりそうなメンバーだ。店内の席が取れると良いな。

 大寒波を乗り越えた空が、清み渡るように青い。雲も見つけられず、太陽の光が降り注いでいる。

「暑いね」

 まとったマントを片腕に持ち、フランシスは言った。確かに猫には少し暑く感じるかも知れない。

「え? 結構寒いよ?」

 と、アンリは首を傾げる。

「ボクたちには体毛と言うものがあってね」

 俺が口を開く前に、フランシスは説明した。

「あぁ、そうか。どうも人の感覚でものを見てしまう癖がついてしまってね。申し訳ない、ええと?」

「多分、叔父さんがキミたちが一番良く逢っている猫だと思うよ」

 アンリの言葉に軽く腹を立てたのか、意地悪くフランシスは言葉を紡ぐ。

「叔父さん……?」

 マルグリットも参加して問い掛けは続く。エステルは置いてけぼりを食らっている。

「あの、」

 と、彼女は声をかけてきた。

「なんだ?」

 俺が聞くと、

「誰の姪子さんなのですか?」

 え、姪?

「フレデリック様の従者にメスはいないが……」

 思わず俺は言っていた。

「だって、三毛猫さんはメスしか生まれないのでしょう?」

 純粋な瞳でエステルは問うてくる。確かに、世間の常識からすればそうだ。

「あれは、繁殖機能のないオスなのだ」

 なにを隠しても仕方がない。はっきりと俺は告白していた。

「えぇ!?」

 エステルはおどろいた声を上げた。

「そこ、うるさい!」

 すかさず思考中のマルグリットの声が飛ぶ。

「だから、銃士隊に入れたのですね……」

「シャルル」

 今度はフランシスの声が聞こえる。

「面倒な事は教えなくて良いから」

 えー、教えちゃったよ? まぁ、良いか。

「で、ボクの問いはわかったかい?」

 再びマルグリットとアンリに振り返り、フランシスは言う。エステルも、答えを先に聞くのは止めたらしい。

「猫って、顔が似ているのだもの。わからないわ。降参」

 と、マルグリットは手を振った。

「僕はまだ諦めないよ? 僕たちが一番良く逢っていると言う事は、オペラ業界の猫だよね……もしかして……」

「あ!」

 降参したはずのマルグリットが再び食いついてきた。

「オーギュスト・ラフォン!?」

 と、二人は声を揃えて言った。あまりの響く声に、道行く人が振り返るほどだ。オペラ歌手の肺活量はすごい。

「良くわかったね。そう。ボクはフランシス・ド・ラフォン。オーギュスト叔父さんはペンネームで貴族の位を消しているみたいだけどね」

 オーギュストの甥は、知ってやったりの顔をする。

「まぁ、オペラ業界では成功した猫の一人だ。でも、とっさに出てこなかったよ」

 アンリは頭を掻いた。

「あの時、エマニュエルと共に音楽院に来ていたと言うのに」

「え、そうなの?」

 事実に、マルグリットは尋ねる。

「そうだよ? ラフォンはまだ若手の演出家だったからね。社会勉強としてついてきたと言っていたかな」

 すらすらとアンリは言った。成る程、ラフォンにも若い頃はあったのだよなぁ。

「ボクと叔父さんは少し年も離れているけれど、ボクに優しくしてくれた家庭教師の先生以外の一族の一人だよ?」

 フランシスは自慢げに腕を組む。

「まさか、ここでこう繋がっていようとは……」

 おどろきだね、と、アンリはマルグリットに声をかけた。大女優は一人言のように呟く。

「そうね。意外だわ……」


お読みいただきありがとうございます。

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