表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
にゃん銃士 ~姫を護るのはチートなにゃんこたち~  作者: 武田武蔵
第一部 世界大紀行編
63/813

第六十三章 アル・ジブ王

 折角宿をとったので、申し訳ないと、一泊する事になった。宿まで戻ると、入り口に立つ影がある。体格的に、青年だろう。金色の髪に、小麦色の肌、白い服をまとった立ち姿は、庶民とは違う、どこか品があった。

「こんばんは、ジブ国へようこそ」

 と、アイリスに向かい、青年は言った。

「何者だ」

 と、オリヴィエがアイリスの前に出る。警戒からか、はしたレイピアへ手を添えていた。

「そんなに怯えないで。僕はただ挨拶とお詫びに来たんだ」

「挨拶とお詫び?」

「そうそう」頭を掻き、彼は言った。「イアフ帝国では愚弟が迷惑をかけたみたいで……」

「あなた、メルの兄なの?」

 アイリスは首を傾げる。確かメルは国の第一皇子と言っていた筈だった。

「いや、正確に言えば僕は側室の子供なんだ。正室のアージュ様の子供ではない」青年は笑い、「僕はアル・ジブ。ジブ国に婿入りしたイアフの元皇子さ」

 兎も角敵ではない事はわかったが、なぜアイリスがこの国にいる事が知られたのかが気になった。

「不思議そうな顔をしているね、猫さん」アルは口角を引いた。「イアフ帝国は広大な帝国だ。皇族たちの秘密の情報網があるのさ」

 この大陸の情報ならすぐに手に入る。と、彼は笑った。恐ろしやイアフ帝国。

「今晩はご馳走が出る筈だ。藁のテントは寝づらいかもしれないけど、ゆっくり楽しんで」

 そう言い残して、アルは宵闇に紛れて行った。

「婿入りとは言え、一応王様だよね……」

 フランシスが声を震わせた。

「物凄く腰が低かったがな……」

 マウロは未だ固まったままだ。全くメルの無礼はどこまで伝わっているんだ。

「まぁ、良い。行くぞ」

 と、オリヴィエは言った。

 夕食は外で、薪で火を焚いて食べる事になった。トマトやとうもろこしなどの野菜や、肉の串、更には子豚が一頭丸焼きにされていた。なるほど、豪華とは豚の事か。

パン代わりに出されたクスクスに、特製のタレのかかった牛の串焼きをつけて食べると、これは美味い。途中に口内で弾けるのは、唐辛子だろうか。クスクスはパスタに近いと聞いた事があるが、確かにそうだ。オリーブオイルをかけて食べても美味しいだろう。

 子豚の丸焼きは、表面がこんがりとしてきた頃、主人があらわれ手早く捌いてくれた。溢れた肉汁が勿体ない。

「彼女に一番良い部位を」

 と、隣に座ったオリヴィエが主人に囁く。

「わかりました」

 主人も声を潜めた。そうしてロース肉をアイリスへと切り分けた。

「美味しい!」

 と、アイリスは喜んで肉を口に運ぶ。

「良かったねー」

 フランシスが言った。そう言っても、涎が垂れてますよ。ちなみに俺はバラ肉が好きなので、全く悔しくない。

 そうして嬉しい事に、バラ肉が俺の皿へと取り分けられた。やった。塩味だが、上品な脂身が、肉々しくなくて美味い。口の中は、甘い脂身の味が広がっている。

「幸せそうだね」

 と、フランシスが言う。

「美味いものは美味いんだ」俺は答えた。「食べてみるか?」

 と、赤身の部分を食べているフランシスに、声をかけた。

「え、良いの?」

 彼の尻尾が立ち上がり、ゆらゆらと揺れる。嬉しいのだ。

「あぁ」

俺はバラ肉を少しちぎり、フランシスの皿へ乗せた。

「ありがとう」

と、フランシスは微笑し、バラ肉を口に運んだ。しばらく噛むと、やがて咀嚼音がした。バラ肉など庶民の食べ物だ。果たして貴族の口に合うのだろうか。

「美味いか?」

 と、俺が恐る恐る聞くと、

「うん! 美味しいよ!」

 との答えが返された。良かった。

 マウロはひたすらヒレ肉やバラ肉を食べている。肉ならなんでも良いと言う事だろう。どうやらのアルのもてなしは、成功した様子だった。

 食事も終わり、床につく事になった。気がつけば、空に星が煌めいている。

テントの入り口の垂れ布をめくると、見かけよりも広そうだ。これならば全員入る事ができるだろう。

 まずアイリスが先に入り、端へと寝転ぶ。フランシス、マウロと続き、横になってもあと四人は入る事ができる広さだ。そうして俺と、オリヴィエが入った。藁の寝床は、案外快適だった。


お読みいただきありがとうございます。

レビュー、感想等よろしければ書いてくださると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ