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にゃん銃士 ~姫を護るのはチートなにゃんこたち~  作者: 武田武蔵
第一部 世界大紀行編
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第四十九章 灼熱の帝国


 南の大陸の玄関口だと言う、ラークの港町に船が着いたのは、トト島を出てから一週間経った頃だった。道中海賊などもあらわれず、何事もなく航海を終える事ができた。本当に平和な航海が一番だ。

 久しぶりに、馬と馬車を連れ出し、船を下りる。

「ありがとうございました。またご利用下さい」

 と、船長は俺たちの姿が人混みに紛れるまで、頭を下げていた。

朝食はアイリスの提案で、ラークの町で食べる事になった。サカーラの港町と同じく、灼熱の町は陽光に焼かれないように、白い服を着たものたちがほとんどだ。家々は白く、人間は褐色の肌をしている。そうして猫の獣人は、なんと毛が生えていなかった。これがスフィンクスと言うやつか。

 適当な店を見つけ、中に入る。スフィンクスの店主が、

「お客さん、外の方がまだ涼しいぜ」

 と、言った。見れば、外にテーブルと椅子が置かれている。他の店を見ても、皆外で食事を待っていた。地球で言う、今までの土地と反対側の土地と言う訳だろう。

 しばらく経つと、店主が料理を運んでくる。朝はメニューが一つだけなのだろう。ソラマメのサラダと、一次発酵のみの膨れたパンのようなもの。パンと言うより、ナンに近いだろうか。サラダを中が空洞のパンに挟み、口にする。レモンとオリーブオイルの香りがふわりと口内へ広がる。世界は美味しいものに満ちています。

「お客さん旅人かい?」

 暇になったのか、店主が近付いてくる。

「えぇ。北の大陸から」

 アイリスが答える。

「お嬢ちゃん一人にオス猫四人か。なんでまたこんな暑いだけの大陸に来たんだ」

「私は北の大陸にある国の王位第一継承者なのです。国の方針で、将来王位を戴く者は世界を旅をすると言う決まりで……」

 すると主人はおどろいたように目を見開き、

「こ、これはご無礼を」

 と、慌てて言った。

「そんなにあらたまらないで。私たちは国に帰らない限り、ただの旅人です」

 アイリスは穏やかに言った。国を出た時とは大違いだ。これは将来良い為政者になることだろう。俺は、それを見守る従者になるのだ。

「北の大陸から来たんじゃ、ここは大違いだろう」

「そうね、でも、その前に東の大陸と、西のルチェ諸島を巡っているから」

「慣れたかい?」

「程々ね。でも、暑いわ」

 手をうちわのように扇ぎながら、アイリスは言った。

「ここイアフ帝国は川に沿って栄えている、縦に長い国だからな」

 楽しいと思うぜ? と、店主が言った。

「ありがとう」

 そう言って、アイリスは立ち上がった。皆もう朝食は食べ終えている。オリヴィエが懐から金貨を取り出し、チップと共に渡した。

「ありがとうございます」

 チップを手に、店主は礼を言った。

 その後、宿を探す事になり、馬車で道を進んで行く。御者は、オリヴィエだ。

 しかし、馬車に乗った瞬間、アイリスがへたりと倒れこんでしまった。

「姫様? どうしたの?」

 フランシスの声が響く。

「気持ちが悪い……あと、頭も痛いわ」

 細い声で、アイリスは言った。息が荒く、苦しそうだ。

「回復薬、回復薬」

 と、マウロも慌てて荷物から回復薬を探し、フランシスに手渡した。

「飲める? 姫様」

 アイリスは竹筒に入った回復薬を飲もうとするが、その気力もないのか、アイリスは胸を上下させている。額に手を当てると、熱が伝わってくる。熱中症だろうか。

「宿はあるのか?」

 前にある垂れ布をめくり、俺は慌て気味に尋ねた。

「今探している」

 焦ったオリヴィエの声が返される。

 しばらく経ったあと、馬車が止まった。宿に着いたのだ。オリヴィエが交渉をしに御者席を飛び降りた。

 やがて、店の主人だろう褐色の金に輝く髪を持った男が後ろの垂れ布をめくり上げた。

「急病人は彼女か?」

 と、彼は言う。

「あぁ、そうだ」

 俺が答えると彼は、

「熱中症だな……早く寝台に寝かせた方が良い」

 と、言った。そうして馬車へ乗り移ると、アイリスを抱き上げた。馬車から降り、宿の扉を開き、中に入って行った。馬車を馬屋に入れるのをマウロに任せ、俺とフランシスもあとに続き、宿へ入った。平屋建ての建物は、中庭を囲うように部屋がある、シンプルな白い建物だ。

 アイリスが運ばれた部屋に入り、先に来ていたオリヴィエから病状を聞かされる。つまるところ、ただの熱中症らしい。良かった。

「びっくりしたよー!」

 石の寝台に座り、水を飲むアイリスに、フランシスが言った。

「ごめんなさい、心配をかけたわね」アイリスは答える。そうして傍らにいる男に向かい、「ありがとうございます」

 と、言った。

「いいえいいえ、お客人を助けるのは当たり前さ」

 男は白い歯を見せる。

「おーい、大丈夫か?」

 あとからマウロが駆けてくる。

「大丈夫よ、心配をかけたわね」

 アイリスが答えた。

「良かったぜ……」

 息を荒げ、マウロは言った。

「全員分飲み物を用意するから、しっかり飲んで、熱中症には気をつけて」

 そう言って、男は消えていった。


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