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にゃん銃士 ~姫を護るのはチートなにゃんこたち~  作者: 武田武蔵
第一部 世界大紀行編
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第四十七章 陶芸体験


 リビングなどで各々くつろいでいると、船長がやって来、カーン島へタラップを下ろしたと報告した。新しい島に着いたのだ。

「行こうか」

 毛づくろいをしていたフランシスに向かい、俺は言った。オリヴィエやマウロ、アイリスは既にデッキに出ていってしまった。

「あ、ボクの事待っててくれたんだ」驚いた様子で、フランシスは、「ありがとう」

「当たり前だろ」

 と、俺は言った。別に意味などない。

 フランシスは嬉しげに俺の腕へ自らの腕を絡めてくる。またいちゃついてるとオリヴィエに冷やかされる事だろう。

「遅いぞ」

 外に出ると、他のメンバーが待っていた。

「ごめんごめん」

 俺は苦笑した。ふとアイリスを見ると、神妙な面持ちで俺とフランシスを見ている。これは……嫉妬されておられる? しかし、彼女はこの感情を理解できていないようだ。俺はフランシスから腕をやんわりと外す。アイリスの顔がいつもの表情に戻った。

 やっぱり嫉妬してる?

 皆と共に、タラップを降りる。やはりきしむ桟橋を歩き、島へ降り立った。同じく防風林を抜けると、あらわれたのは、窯を持つ家々だった。煙が出ている窯は、陶磁器を焼いているのだろう。

 家と家の間を通り、体験できる窯を探す。桟橋から一番奥にある窯に、体験の旗が立っていた。家に足を踏み入れると、

「いらっしゃいませ」

 と、主人が出迎えた。今まで回った島で、俺としては、一番まともな工房かもしれない。

「体験がしたい。大丈夫だろうか」

 オリヴィエが尋ねる。

「はい、大丈夫ですよ。陶磁器は焼くのに時間がかかるので、できた物をお宅に送る事になりますがよろしいでしょうか?」

「かまわん」

「わかりました。では、こちらに」主人はもう一棟の家に案内する。そこが工房らしい。俺たちが入ると、主人は二つのタイルのような物を手にして、「こちらに白く、もう一つがこのように黒みがかった品物になります」

 選んで下さい、と、主人。

「私は白が良いわ」

 アイリスが言う。

「ボクも白が良いかなぁ」

 フランシスがそれに続く。

「俺は黒だな」

 と、マウロ。あとはオリヴィエと俺だけだ。悩むな。

「白だな」

 オリヴィエが言った。じゃあ俺は……

「シャルルは黒だよな」

 え、ちょっと待ってくださいマウロさん。

「ちょっと待っ──」

「それでは、決まりましたね」

 主人が畳みかける。わかりました。黒で良いです。

主人は奥から二つの粘土を持って来ると、赤めの土を俺とマウロの前に、白みがかった土をアイリスとフランシス、オリヴィエに渡した。そうして木の板を各自の前に置き、

「では、思い切り粘土を板に叩きつけてください」

と、言った。

 思い切りね。日頃の退屈から来る鬱憤を晴らすように、皆バシンバシンと粘土を叩きつけている。

ある程度続けていると、主人は言った。

「このくらいで大丈夫でしょう。次は”ろくろ”を使って形を整えていきます。ろくろはこちらに」

 主人の案内で、粘土を持ち、狭い工房内を移動する。木の椅子と、ろくろ台が置かれていた。

「ここで、ろくろを回して水を使い形作ります。粘土を塔のようにします。塔のようになったら、言ってください」

 猫の手だと、意外とやりづらい。毛に土が付く上に、肉球がギザギザと粘土にあとをつける。他の皆は──と、辺りを見回すと、やはり苦戦しているように見える。ただその中で、オリヴィエがまともな塔を作っていた。

「できましたでしょうか」なんとか塔を作れた時、主人が声をかけた。「常に手に泥がついている形にしてください。次に、親指へ水をつけ塔の真ん中に穴を開けてください。猫様方は人差し指をお使いください」

 あ、猫にも優しい。主人の言葉通り、穴を開けて行く。ろくろは丁度良い早さでグルグルと回り、すぐに穴が開いた。

「穴が開きましたら、回りを整えておしまいになります。手を洗って、羊皮紙へご自宅の住所をお書きください。お疲れ様でした」

 皆どんどん形を整え、手を洗いに行っている。置いて行かないでください。

 俺が終える頃には、既にアイリスは住所を書き終え、主人を驚かせていた。

「シャルル、大丈夫?」

 アイリスが声をかけてくる。

「大丈夫でした」

 俺は立ち上がった。急いで手を洗い、羊皮紙にペンで住所を書く。

「西の大陸からわざわざようこそ」

 俺の住所を覗きこみ、主人は言った。

「それでは、届くのを楽しみにしている。良い経験を感謝する」

 オリヴィエが言って、工房を出る。

 太陽は真上にあった。

「急がなくて良いのか?」

 と、俺は問うと、

「まだ大丈夫だ」

 と言う答えが返ってきた。何を根拠に言っているんだ。

 海岸に出、船が待っている事を確認すると、桟橋からタラップに足をかける。やはり船長自ら、俺たちを迎えにデッキへと出ていた。

「お早いお帰りでしたね。楽しめましたか?」

 と、言う船長の言葉に、

「ええ、とても」

 アイリスが答えた。

「それはなによりです。完成品が届くのが楽しみですね」船長は言葉を紡いだ。「昼食まで時間がありますので、昨日のようにまたリビングや寝室でお待ちください」

「わかったわ」

 アイリスが答え、俺たちは船内へと戻る事にした。


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