表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
にゃん銃士 ~姫を護るのはチートなにゃんこたち~  作者: 武田武蔵
第一部 世界大紀行編
38/813

第三十八章 フルーツパンチってアルコール?

 食事はスープやパンと言った案外簡易なもので、豪華な食事になれてしまった俺には、少し物足りないものだった。しかし思い出せ、銃士隊に入り、少し経った頃、どうしても金がなくなった時がある。飲み代に消えただけだったのだが。寝れいれば腹も空かないと、エタンと共にただただ寝て過ごしていた事があった。

 その時と比べれば、ましな方だろう。

 未だ鳴る腹を抑え、俺は食事が片付けられる様を目で追っていた。

 しかし、給仕が運んできたデザートに、目玉が飛び出す所だった。切り分けたメロンの片方に、丸くくりぬいたメロンの果肉やスイカ、オレンジなどが炭酸水に浮いているフルーツパンチだ。これは美味しそうだ。

 一口食べると、果実と甘い炭酸水が口の中に広がる。ぱちぱちとした炭酸の刺激に、それぞれの果実も食べ頃で、その味に、パンチがアルコールだと言う事も忘れ、いつまでも食べていたくなる。

「美味しい!」

 子供のように、アイリスがはしゃぐ声がした。

「アルコールですから、あまり飲まれませんように」

 と、隣に座ったオリヴィエが言う。

「え、これアルコールなの?」

 アイリスが驚いたように声を上げる。

「そうそう。砂糖とか沢山入ってるからわからないよねぇ」

 フランシスが同情した。

「確かにわからないな」

 マウロが顎を撫でる。

 こうして、フルーツパンチは皆の腹の中に収まった。

「俺はもう寝るわ」

 と、俺は立ち上がった。酔いも回って気持ちが良い。

「もう寝ちまうのか?」

 と、オリヴィエが言う。

「ちょっと疲れたんだ。それに、少し酔ってる」

俺は耳を掻いた。

「そうか……」隊長、そんな寂しそうな声出さないで下さい。「まぁ、眠れなかったら出てきて良いんだぞ」

「了解」

 それだけ言うと、俺は寝室の扉を開いた。

 部屋は月の光が射し込み、薄暗い。俺はブーツを脱ぐと、ベッドへ倒れこんだ。相変わらず太陽の匂いだ。眠気が近付いて来る。俺は布団を被り、目を閉じてみた。

 こうしていると、己はまだ隼人ではないかと思えてくる。起きれば父は気難しい顔で新聞を読んでいて、母は朝食を作っている。飯を食べ終え外に出るといまだ外は寒く、マフラーがいるくらいだ。

 そうしてバス停には、絵美がいる。

 ──下らないな。

 そう思い、俺は寝台から起き出し、ブーツを履いて外へ出た。

「お、シャルル」

丁度皆でトランプをしていたようで、出てきた俺を見、オリヴィエが言った。

「やっぱり眠れなくて」

 俺は苦笑する。

「まぁ、いいさ。ほら、フランシスの隣が空いている」

「ようこそー」

 俺がソファに座ると、フランシスは笑って俺を迎えた。キャバレークラブじゃないんだから止めてほしい。丁度七並べをしていたらしく、フランシスは俺に己の手札を見せ、

「どうしようか」

 と、聞いた。そんなもの俺にわかるか。と、思ったが、

「これは止めておいた方が良い」

 と、思わず示してしまった。彼が持っている手札は俺が示したクラブの八と、ハートのクイーン、同じくハートの四だ。ハートの列は上手い具合に揃い、四を置くことができた。

 次の番のオリヴィエがダイヤの一を出す。これでダイヤの列は終わった。

「誰だよクラブ止めてんの」

 と、マウロがスペードのジャックを出した。背伸びをして、呟く。はい、俺たちです。

 アイリスはクラブの一を出し、

「やった! 上がり!」

 一人で上がった。本当に勝負運が強いな。

 となるとあとは……

「クラブをここで出そう」

 俺がアドバイスする。ハートはジャックまで出ている、これならば他の二人がクラブを並べる前にクイーンを置くことができる。

「やっぱりお前かぁ」

「ふっふっふ」

 マウロの声に、フランシスがニヤニヤと笑う。その横で、オリヴィエがクラブの九を出していた。

「あー、畜生」

 クラブの十を出し、マウロは天を仰ぐ。

 フランシスの番、あとはハートのクイーンを出すだけだ。

「上がりだよー」

 クイーンを置きながら、フランシスは言った。

「まだ勝負はついてねぇ、俺と隊長、どちらかが上がるまではな」

 一応言っておこう。格好付けているが、単なるビリ決定戦だ。

 まず、オリヴィエがダイヤのキングを置いた。彼の持つ手札は二枚、マウロの手札は三枚だ。それを見た彼は、

「やめだ、隊長。あんたが上がりだ」

 そう言って、マウロはオリヴィエから手札を貰い、並べられたカードと共に混ぜた。

「どうする? ポーカーでもやるか?」

 トランプをきりながら、マウロは尋ねる。

「そうだな」

 ポーカーなど久しぶりだ。胸が踊った。

 こうして遅くまでカードをし、新たな船旅の一日が過ぎていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ