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にゃん銃士 ~姫を護るのはチートなにゃんこたち~  作者: 武田武蔵
第一部 世界大紀行編
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第十九章 新しい町へ

 朝、日差しを感じて目が覚めると、隣の布団で座り込み、頭を抱えるアイリスがいた。まさか。

「醜態を晒してしまったわ……」

 昨夜の記憶があるらしい。止めていなかったらどうなっていたんだ。

「大丈夫だよー、ボクだって夢見てたもん」

 と、うっとりとした顔でフランシスが慰めている。

 マウロはまだ寝ていて、大いびきをかいている。それを、オリヴィエに蹴飛ばされていた。やはり厳しい隊長さんだ。それでも起きないマウロもマウロだが。

「お、起きたかシャルル」

 マウロにもう一蹴り食らわせ、オリヴィエが俺を見る。手伝ってくれ、そんな眼差しが伺える。

「俺でも起きないぞ」

 俺は言った。

「顔を舐めるのが良いんじゃないの?」と、フランシスが閃いた。「ボクは嫌だけど」

 誰が舐めるのか。それが問題だ。

「──やっぱり叩き起こそう」

 オリヴィエが言う。やっぱり舐めたくないのか。

「そ、そうだな」俺は同意して、マウロの布団を剥いだ。肩を持ち、揺り起こす。「おーい、起きろー!」

「ん……何だよ」

 マウロは瞳を開いた。やった、起きた。

「おはよう。お寝坊さん」

 アイリスが笑みを浮かべる。

「お、おう」

 言われ慣れない言葉に、マウロは照れたように耳を掻いた。

「さぁ、行くか。姫様、どこか行かれたい場所はございますか?」

 と、オリヴィエ。アイリスは悩んでいたようだったが、やがて、

「ハポン地方、本で読んだだけではなかったわ」と、衝撃な告白をした。「お母様のルーツがハポン地方と聞かされていたの。血縁者もいる筈……当時あまりにも小さかったから、覚えていなかったけど……」

 驚く皆の尻目に、そうだよな、と、俺は心の中で思った。生粋の日本人の絵美に似ている時点で、東洋の血が入っている事は確かだ。

「だから、私自身のルーツも知りたくて……良いかしら」

「姫様が仰るならば」

 再びオリヴィエがアイリスに跪き、言った。

「ありがとう」アイリスが頬笑んだ。「では、行きましょう」

「は!」

 服を整え、部屋を出る。階段を下りた先の受付で金を払い、外へ足を踏み出した。

 町外れにある馬小屋で馬を借り、駆け出した。

 広がるのは果てしない草原だ。またスライムが出るかもしれない。

「どこに向かわれますか?」

 アイリスの横に馬をつけ、オリヴィエが尋ねた。

「”ハネズ国”──そんな響きだったような気がするわ。どこにあるのかわからないけれど……」

「では、立ち寄った村や町で聞いてみましょう。地図があるかもしれません」

「そうね、ありがとう」

 アイリスが答えた。

「では先に行きます」

 オリヴィエは言い、先頭にたった。

 途中、やはりスライムを見かける。マウロが馬から飛び降り、こん棒を振りかざし、あらわれるだけ潰して行った。

「少々お待ち下さい」

 オリヴィエが馬から下り、潰れたスライムの胃の中から、消化されていない物を漁る。やがて竹筒のような物を取り出し、中を確認する。それが大丈夫な物だとわかると、アイリスに手渡した。

「匂いからして薬草を煎じたものでしょう。持っていて下さい」

 胃液のベタベタに眉間にシワを寄せて、アイリスはそれを受け取った。なんだろう、この既視感は、と思ったら、旅が始まった当初に行われたやり取りだった。あの時は竹筒ではなくて瓶だったな、などと考えていると、やはり同じように、

「手伝えよ」

 と、オリヴィエが俺に言う。フランシスは既に目を合わせなかったので、俺だけに言葉を投げ掛けたのだろう。

「傷薬はあるだけあった方が良い。何が起こるかわからんからな」

 ごもっともです、隊長。

そう言えば、瓶よりも竹筒の方が、くびれがなくてベタベタする胃液を拭きやすい。このまま、マントを羽織っていても乾くだろう。

「スライム専科だな」

 と、傍らに来たマウロに言うと、

「それだけじゃねえよ。モンスターの頭を叩いて、脳震とうを起こさせる事もできる」なる程。案外便利なんだな。そう言いかけると、「まぁ、ドラゴンの巣とされる洞窟などを探索する時には便利かもしれないが、普通に道端に歩いている野ねずみやうさぎには振り落とす前に逃げられるから、意味はないのだがな。お前の言う通り、スライム専科かもしれねぇな」

 ある程度の薬や金がたまると、オリヴィエとマウロは再び馬に乗った。勿論、俺もだが。

 遠くに何かが見える。形からして、城の天守閣ではないだろうか。

「オリヴィエ、」

 俺は彼を呼んだ。

「なんだ」

 耳を後ろにして、オリヴィエは答える。

「この先に城がある。城下町もある筈だ」

「城?」

 東洋の城を見た事がないのか、皆俺を見た。

「遠くに見える、瓦がいくつも重なった白い建物だ」

「あぁ、あれかぁ」

 と、フランシスが言う。アイリスも幾度も頷いていた。

 オリヴィエも納得したようで、馬を駆けた。マウロと言えば、

「俺はどこまでもついていくぜ」

 などと言っている。

 城下町があれば、何かと情報が手に入れば良いが。上手く目的地に辿り着ければいいな。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 猫の三銃士(長靴をはいた猫)のイメージで読ませていただきました。 一話一話が短めでギャグも織り交ぜていたりして読みやすかったです。 猫たちがゆっくりと旅をしていくような雰囲気が和んでいい…
2021/12/12 23:42 退会済み
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