表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
にゃん銃士 ~姫を護るのはチートなにゃんこたち~  作者: 武田武蔵
第二部 ロッコ国への訪問編
112/813

第百十二章 帽子選び

 明くる日、朝の珈琲を飲んでいると、オリヴィエが訪ねて来た。

「おはよう」

 と、彼は気さくに片手を上げる。その影に、隠しても隠しきれていない影がある。

「シャルルおはよー!」

 フランシスはオリヴィエの肩から顔を覗かせた。だから隠しきれてないって。

「どうしたんだ、いきなり」

 俺が問うと、

「キミ、男爵になるだろ? それで、今までの身なりじゃあ全く男爵様らしくないからさ、羽根帽子だけでも買えないかなって」

「お前が帰ったあと銃士隊員で金を出しあったんだ」

 なんて良い所なんだ銃士隊。

「ただ、みんなお金が足りなくて帽子代だけになっちゃったんだけどね……」

「いや、気持ちだけでも嬉しいよ」

 俺は答えた。

「で、今から帽子を選びに行こうよ!」

 フランシスは声を弾ませる。

「店は開いてるのか?」

「道すがら見てきたよ。一等地の店が大抵開いてた」

 そうですか。

 確かに、早くも開店している店が並んでいる一等地があったな。シャンティ街と言ったか。

「まぁ、その前にカフェで、朝食でも取ろうかと話しはしていたがな」と、オリヴィエは言った。そうしてエタンの方を見遣り、「お前の従者は大丈夫か?」

 俺はエタンへと振り向く。

「あっしは大丈夫ですよ。大家さんからパンをいただきます」

 と、言った。

「わかった。迷惑はかけないようにな」

 俺は言うと、マントを羽織り外に出た。収穫月の朝は、少し肌寒い。

「キミと買い物をするなんて初めてだね」

 フランシスは俺の腕に己の腕を巻きつかせる。だから痛いです。助けを求めてオリヴィエを見ると、目を背けられた。

 酷い。

 ベルヌール街にあるカフェは、丁度外の席が空いていた。少し寒いほどの朝は、通行人を眺める外の席が一番だ。

 席に腰かけると、早速ギャルソンが注文を聞きに来た。カフェラテと、ハムサンドを頼む。間も無く運ばれてきたのは、フィセルに生ハムとチーズを挟んだサンドイッチと、珈琲の芳しい香りのするカフェラテだ。

「やっぱり美味しいね」

 サンドイッチを頬張り、フランシスは言う。髭にパンの耳の欠片が付いてますよ。

 俺も大きく口を開け、サンドイッチを食べる。カリッと音がして、それと並んでクリームチーズ、生ハムの味が口内に広がる。ひっそりと主張しているフィセルも美味い。カフェラテはミルクと、エスプレッソで淹れた珈琲が良く協調している。

 人は絶えず行き交い、ここだけ時の止まってしまったかのようだ。

「行くか」

 皆が食べた事を確かめると、オリヴィエは金とチップをテーブルの上に置き、立ち上がった。

 銃士隊は常に団体行動の上に、出勤前や休暇に、好きに連れ立って歩くなどしない。そこは猫の特徴の残りだろう。

 シャンティ街は、ベルヌール街を抜けた先にある。フランシスが話していた通り、店は既に開いていた。

「どんなのが良いかなー」

 まるで己の買い物のように、フランシスは帽子を探す。その腕は相も変わらず俺を捉えている。

「自分の買い物ではないんだぞ」

 前を行くオリヴィエが、振り向き言った。

「わかってるよー」

 と、フランシスが答える。

 俺もショーウィンドウに並ぶ帽子を見遣る。と、ふとある店の羽根帽子に目が行った。

「ちょっと待て、フランシス」

 俺は彼を制止した。

「なに? 良いの見つかった?」

「お、グッと来たか?」

 その声に、オリヴィエも歩みを止め、こちらへと歩いてきた。

「あぁ」

 と、俺は答え、マネキンの被る黒い羽根帽子を指差した。

「5600オーロか。予算内だ」

 下に置かれた値札を見、オリヴィエが言う。良かった。

「格好いい帽子だね。きっと似合うよ」

 店に入るオリヴィエを追いながら、フランシスは俺に囁いた。


お読みいただきありがとうございます。

レビュー、感想等よろしければ書いてくださると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ