1話
「邪龍!お前の命は今日までだ!この勇者チャンによってお前は倒されるんだ」
巨大な黒い龍の前に立つ4人の男女
彼らは勇者、大賢者、バトルマスター、大魔術師のパーティー
大陸が生まれた時から生きていると言われる邪龍を国の名により討伐しに来た人類の希望の星
岩のようにゴツゴツとした体を持ち上げたその姿は圧倒的な力そのものだ。並の生物であれば恐怖のあまり近寄ることすらできないが、勇者一行はそれにひるむ事が無かった
黒龍が口を開き、恐ろし気な歯が見えた
「GWOーーーーーーーー」
龍は衝撃波を咆哮に乗せ勇者へと放った
特殊スキル 絶対防御 発動
黄金のローブを纏った大魔導士が持つ杖の宝玉が光り輝き、勇者一行の周囲を囲う透明の防御壁が生まれた
防御壁は衝撃波を完全に抑え込み勇者には微風一つ無い
「黒き龍よ無駄だ。これは神より授かった神技、この防御壁の前にはあらゆるものが無となる定めなのだ」
大魔導士の顔には勝利を確信した者の笑みと龍に対する侮蔑が現れている
ついに咆哮と衝撃波が止んだ。邪龍の攻撃を防ぎ切ったのだ
「だーはっはっははー!!!俺たちの前にはお前など虫けらに過ぎない大人しく殺されろ!余計な手間を掛けさせるな糞が!!」
純白の衣をまとった大賢者が高笑いをした
「伝説っていってもこんなもんか俺がその首叩ききってやるからな老いぼれ!」
バトルマスターが巨大な斧を肩に乗せたまま舌なめずりをした
「我らは神から直接力を授かった特別な存在なんだ!我らのチートの前ではすべての者共が跪く。邪龍!お前もだ」
勇者が剣を鞘から抜き飛び掛かろうとしたその時、
「クイーーーーー!!!」
甲高い鳴き声が響き渡った
「ようやく終わったか。長かったな今回は」
黒龍の口から声が発せられた
「龍が人族の言葉を喋った!?」
「極めて稀だ」
それに驚きの声を上げた勇者一行だがそんな彼らを見る龍の眼は冷酷なものだった
「好き勝手言ってくれたな塵共が・・・」
大きく息を吸い込んだ
「無駄だ!絶対防御発動!!!!!」
先ほどとは桁違いの魔力の集中を感じた大魔導士が杖を掲げた
「GWOーーーーーーーーーー!!!!!!」
龍から発せられたのは黒い炎
炎の極致であるそれを勇者一行は全身に浴びた
鎧も盾も皮膚も肉も炎が侵食する
発生していないのだ
絶対防御が発生していない
勇者一行は体を丸め、手を前に突き出し炎を防ごうとしているが何の意味もなしていない
黒い炎が止まると、煙の中には焼きただれた4人の人間がいた
全身が焼き爛れた姿に以前の面影すらない。それでも彼らは生きていた。あえて生かしたのだ
「苦しめ塵共、お前らにもう用はない」
芋虫のようなそれを見ることもなく黒い龍は悠然と飛び立ちどこかへ消えていった