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はいらなきゃ?SF研究会  作者: 如月霞
そのサークル危険につき
6/13

変人これくしょん

 ボォオオ……。

 「あれ、今汽笛が聞こえたような……気のせいかな」

 「……気のせいじゃないかもな」

 「え?でも、うちの大学から海まで遠いしそんなことは……」


 ボォオオ……。


 「……あいつが来る」

 「あいつ……?」


 

 春風の気持ちの良い日。今日も今日とてSF研は活動をしている。


 「Foo~!お疲れ~」

 「あ、可変先輩こんにちは」

 「俺、参上ッ!」


 ドォン!


 「Pさんも。こんにちは」


 いつものようにメンバーが集まる。僕が今までにあった人たちだ。と、いうことは部長の言っていた“あいつ”は来ていないということになる。今日は来ないのだろうか?まぁ、毎回メンバー全員が揃うこともないとは聞いていたけど。自由なサークルというわけだ。

 その時。


 「お疲れ様です」

 「!」


 ああっ!SF研に来てから初めて聞く声だ。ということはこの人が例の……?とりあえず、挨拶しなくちゃ。


 「こんにちは、はーーーーーあれ??」

 

 だ、誰もいない……確かに、声はしたんだけど。どこに行ったんだろう?……そういえば、扉が開いた覚えが無い。あ、もしかしてファボ魔さんみたいな存在なのかな?


 「……下、よく見ろ」

 「んぎゃーーーーーーっ!!!!??ぶぶぶ、部長!?」

 「……そうだけど」


 今回は僕の背後に現われやがりました部長のせいで、僕は素っ頓狂な声を上げるはめになった。この人は何故僕の背後に急に現われるかなあ!?

 もしかしてあれかな?誰かの背後に急に現われることが能力なのかな?

 んなわけないか。ともかく言うことはただ一つ。


 「びっくりさせないで下さいよ!!!!!」

 「……あー悪い」

 「はぁ……と、ところで“下”ってどういうことですか」


 僕の質問に可変先輩がジェスチャーを交えつつ答える。


 「下は下だよ。ほら、見ろよ見ろよ~Foo~!」


 可変先輩に言われるままに目をこらして下……畳を見つめる。畳だ。和室というだけあってフローリングではない。畳がなんだというのだろう?……あれ?

 畳のある一点が歪んでいる。目にゴミが入っただろうか。いや、そうではない。確かに歪んでいる。まるで、水面のように……。

 それはシミのようで、そして……。

 ザバァ。


 「上陸完了ですね」

 「お、おわっ……!?人がっ……」


 畳から現われたのは人間……まるで軍服のようなファッションに身を包んだ、賢そうな人だ。


 「おや、君が新入生君か。わがSF鎮守府へようこそ」


 知的。ファボ魔さんとはまた方向性の違う知性を漂わせる人だ。


 「はい。ええと、はじめまして」

 「……鎮守府じゃねーよ」

 「ウソツクナ」


 ……


 「へぇ。提督さんって頭いいんですね……あ、馬鹿にしてるわけじゃないですよ」

 「もちろん、理解していますよ」


 この人は通称、提督さん。さっき僕が感じた知性のオーラはやはり間違いではなく、なんとIQ200の持ち主とか。本当かどうかはわかんないけど。まぁ皆何も言わないし、そうなんだろう。


 「じゃあ、さっき地面に潜っていたのも」

 「そう、私の開発したこの装置です……といえば信じてもらえますかね」


 なんの変哲も無い腕時計。しかし、これを身に着けると周りが液状化するらしい。


 「ええ、信じますとも。でも、その装置大丈夫なんですか?周りを溶かしてるって」

 「その点は問題ありません。きちんと元に戻りますから。それに足元だけですよ。溶けるのは」

 「どんな原理ですかそれ……」

 「説明はちょっと長くなりますよ。そうですね、今回は『天才に不可能は無い』とでも」

 「お~実力が伴ってる人が言うとかっこいいですねぇ」


 ここで疑問。


 「この装置ってノーベル賞ものではないですか?世間に公表しないんです?」

 「まさか。あくまで自分で楽しむ為のもの。頭脳を安易に見せびらかそうとは、思いませんね」

 「オイテイトク。スイブンセッシュハ、イイノカ」


 突然、提督さんの言葉をさえぎるようにファボ魔さんが忠告をした。


 「え?どうしたんですか、ファボ魔さん」


 水分摂取?大事なことではある。特に夏の運動には欠かせない。最近は非常に暑いしね。しかし、何故今?


 「まだ大丈夫……あれ、あにゅーーー」

 「イワンコッチャネェ」

 「ど、どういうことですか……?」


 その答えは瞬時に得られた。


 「じゅわああああ」


 提督さんが、溶けていく。いや、蒸発?


 「!!?う、うわ……何……??」

 「しゅわああああああああ」

 「うわわ、どうしたんですか提督さん!?」

 「あああああああああああああ」


 なんだろう。なんというか、スライム?


 「ぶ、部長……どうしちゃったんですか、この人」

 「……簡単に言えば弊害だな。……定期的に水分を摂取しないと……消えちまうってわけだ」

 「そ、そんなのって……」

 「……前にも言ったろ」

 「あ……」


 世の中、そう上手くはいかない……それにしても……いや、皆そうだ。SF研の皆さんは確かに常識を超えるというか、もうなんか考えたら負け、そんな力を持っているけど、同じくらいの縛りを受けているように感じる。


 「皆さんは、辛くはないんですか……?」

 「……まぁ上手くやってるしな……」

 「そうじゃな。そういうものだと受け入れるしかないしの」

 「でも……」

 「俺は結構気に入ってるけどな」

 「Foo~!俺もそーなの」

 「イマサラ、ドウシヨウモナイシー」

 「……まぁ、いつかお前にもわかると思う」

 「へ?」


 それってどういう……?


 「しゅわあああああああああああああああああああ」

 「わっと……あの、部長。治らないんですか?これは」


 流石にやばいのでは?もう原型無いんですけど。


 「……いいや、治る」

 「じゃ、じゃあ早くしないと」

 「……この部屋の条件なら放っておいても治るんだが」

 「ダメですっ。すぐに助けないと」

 「……はいはい……おい」

 「じゅわあああああ!?」


 部長がどこからか2Lのペットボトルを取り出し、それを提督さんに向かってぶちまけた。


 「あっ……あ?」

 「……“あ?”じゃない」

 「……お恥ずかしい。助かりました」


 おお。戻った。身体の構造や如何に?あ、それは妖狐さんや可変先輩にもいえることだけど。



 「……とまぁ、私もこんな身でね。気になるでしょうがよろしくお願いしますね」

 「はい!今度は他の発明品について教えてくださいね」

 「あっと、残念ですがそれはできないです」

 「ええ、どうしてですか」

 「発明したものはこれだけだったりするんです」

 「そんなぁ」

 「すいません」

 「ほれほれ。もう時間じゃ。和室を閉めるぞよー」


 妖狐さんの声に一同が従い、和室を後にした。それにしても、もったいないなぁ。発明品が一個だなんて。

 

 

 僕と妖狐さんと提督さんとPさん、あと可変先輩との帰り道。

ファボ魔さんがいないのはわかる。だが、確かに部室にいた部長はどこにいったんだろうか?

……。


 「しかしまー良かったの。理解のある後輩で」

 「ええ……実に助かります」

 「やはり同士!いや、運命共同体か……共に戦う戦士として大事なことだな」


 あれ、いつのまにか変な話に?


 「あの、僕は戦士じゃないですよ……」

 「Foo~!!!!気持ちいい」

 「あのー、可変先輩」

 「うん?」

 「可変先輩のその……気持ちよくなるのはなんなんです?」


 能力?


 「変態じゃからの」

 「変態だからな」

 「変態ですもんね」

 「は?は?は?キレそ~~~~っ」


 可変先輩の悲しい咆哮が空へ消えていった。


 

 先輩方と別れ、一人下宿に着く。さて、僕はこれからもう一仕事だな。

 まだ、秘密を抱えてる人がいるもんね……。

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