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はいらなきゃ?SF研究会  作者: 如月霞
そのサークル危険につき
5/13

スーパーヒーロー大変

 「あれれ、部長“ウルトラ仮面マン”見てるんですか。」

 「……ああ、特撮はいいぞ」

 「へぇ、意外です。あ、この人知ってる。格好良いし、最近売れっ子ですよね」

 「……こいつ、SF研のメンバーだぞ」

 「え?」

 「……なんだ」

 「えええええ!!!!!??????」



 数年前、プロデューサーとしてスカウトされたところ、才能をこれでもかと発揮し、そのルックスから自身もアイドルとして売れに売れてしまった著名人。そんな漫画やアニメでもなかなか見れない設定のスターがSF研に、しかも会えるとなると、緊張ものだ。


 「ンー、クルゾ」


 生唾を飲む。その時だった。突然、和室に大音量でBGMが流れ始める。


 「な、何……!?」


 どうやらBGMは何かの曲のイントロだったようだ。男性ボーカルの熱い歌が始まる。そして、和室の真ん中が急に爆発した。


「ななな、なんですか、これは……!?」

「SFに誘われ、ヒーロー参上!」


ドォン!!


「は、はいぃ……????」


 ほわほわ……。



 「なるほど!君が新入生か」

 「はい。よろしくお願いします」


 爆心地から現われた新しいSF研メンバー。自分の素性を隠すことなく、自己紹介をしてくれた。


 「ほら、名刺だ。受け取るがいい」

 「わ、ありがとうございます」


 有名人の名刺だなんて!感激だな。そもそも名刺をもらうことが初めてだ。


 「ええと、なんとお呼びすればいいですか」

 「そうだな、ヒーローはどんな名称でも受け入れる者!あ、でも蔑称は止めてね。割と心はガラスなんで……」

 「あっと、意外」

 「まぁ、強いて言うならプロデューサーかな!本業だし、それになんか格好いいよね、コードネームみたいでさ!」

 「んー、それならPさんっていったほうがそれっぽいですね」

 「んん?それいいな、そう呼んでくれ!」

「はい、じゃあ、Pさんで。ところで、Pさんは凄いですよね……その、言われ慣れてるかもしれませんが」

 「ん、まぁ、大学生、アイドル、P業、モデル、その他もろもろ……しかしだな」

 「し、しかし?」

 「どんな苦境にも打ち勝つのがヒーローだ!」

 「おぉ~」

 「そのかわり、成績はボロボロじゃがのー」

 「グハッ……」


 ぬっと現われた妖狐さんが強烈な一言を浴びせる。それはPさんにクリティカルヒットしたようだ。


 「あ、妖狐さん。こんにちは」

 「ファボ魔さんはフォローしてあげないんですか?成績」


 ファボ魔さんなら、成績の改ざんくらい容易いと思うけど。


 「メンドウダカラヤダ」


 ひどいや。


 「ええ……あ、あと気になったんですけど、あの爆発といい歌といい、なんです?」

 「……説明しよう。Pの姿現われるところには挿入歌と爆発演出が入るのだ……」

 「あ、部長こんにちは」


 今日は背後から急に現われることはなかったため、僕も驚くことはなかったのだった。

 

 

 部室でゲーム中。格闘ゲームで、妖狐さんとPさんと可変先輩、そして僕が対戦している。なお、人数分専用コントローラーがあるところからして、ガチ勢がいるようだ。


 「ほれほれ、どうしたどうした」

 「くっ!ちょこまかと!」

 「Pさん、そのセリフは悪役っぽいです」

 「ああああああ!!!!」


 その結果は……。


 「はっはっは。100年早かったの!」

 「負けたのか……うわああああああ!!」

 「2位かぁ」

 「アッアッ」


 妖狐さんの圧勝だった。


 「そもそも、このゲームって妖狐、お前のだろ……。しかし、諦めないのがヒーローって奴よな!……ん?」

 「え、どうかしました?」


 突然、Pさんがコントローラーを投げ捨て、立ち上がる。


 「感じる……感じるぞ!」

 「はい?」


 何を?運気?勝機?


 「説明しようかの。Pは近くに“悪”を感じることができるのじゃ」

 「え、すご」


 というか、悪って。定義広すぎると思うなぁー。


 「SFチェンジ!!」


 刹那、Pさんの身体が発光し、謎のスーツを着た戦士へと変貌した。


 「うわ……変身したぁ!!!?」

 「誕生!正義の戦士SFマッ!!!とぅ!!!!!」

 「えっ!ど、どこ行くんですか!?」


 変身したPさんはそのまま窓から飛び降りて行く。もちろん、窓は自動で開いていた。


「追いかけるとするかの」

「どこに行ったかわかるんですか」

「そうじゃ。我だけわかる、特有の感覚がな……」

「……」

「え、何じゃその目は……冗談じゃ冗談。あれ?ねぇ、そのぉ……あれ?おわーっ」


もふもふもふもふもふもふ……。


「で、本当のところはどうなんですか」

「……ファボ魔」

「ハイヨー」


ホワイトボードに地図が投影される。指を指しながら可変先輩が説明を始めた。


「ここに座標あるじゃん?これ追っかけていくってわけ。パパッと追いついて終わり!」


雑ッ!!



暗い路地裏。女性に対し、屈強な男たちが群がる。

「うぇっへっへ……よぉお譲ちゃん。一人で散歩かい」

「え、あの」

「お兄さんたちと一緒に遊ぼうや」

「やめ……」

「いいねぇその顔!可愛がってやるぜぇ」

「だ、誰か……!」

「こんな場所そうそう人は来ないっての……よし、犯るぞ、かかれ!」

「い、嫌っ……」

「待てえええいッ!!!!!」


~♪BGM~


「何奴!」


暴漢たちが振り向く先には!


「正義の味方、SFマン!!!」


ドォン!!!!


「煙たッ!……う、なんだ!?」

「婦女子に対し、暴行を働こうとするとは……許ざん!!!成敗してくれる!」

「うわなんだコイツ!?野郎ども、やっちまえ!」

「来い!!!」


~♪挿入歌~



「や、やっと追いついた……て、Pさん一人に多すぎ!?」


Pさんがゴツい男たちに囲まれている。見るからに悪そうだ。


「大丈夫じゃ。あの程度でやられる奴ではない」

「喰らえ、SF剣!!!!」

「おお、それっぽい!……でも、あんなおもちゃで……」

「そんな玩具……ぎゃ、ギャアーっ!!」


ブシューッ。


「う、うわ!妖狐さん、本当に人体切断してますよあれ!!!!!!」

「そりゃ剣じゃ。当然じゃろ」


切断されて行く仲間を見て恐怖したのか、不良たちは動けないでいる。僕もだ。


「お前ら何をしてるんだ!集団で行け!」


多人数なら勝てると思ったのか。暴漢らは言葉通り集団でPさんに襲いかかる。正直、逃げたほうがいいんじゃないか、と思ったが、別に助言はしなかった。というか、できなかった。


「ああっ、こここ、今度こそピンチじゃ、ないですか?」

「そうかの?」

「よし、Come on、SFタァンク!!」

「Foo~!変形っ!」

「あれ、可変……いや、戦車!?」


可変先輩がいつか見たダンボール戦車へと変形し、Pさんの下へ行く。


「ウワァ、何だこいつ!?人じゃねぇ!!?」

「撃てぃっ、SF砲!」

「怨!」


ドッガァン!

戦車と化した先輩から砲弾が発射された。どうやら弾は現地調達したその辺の瓦礫とかだろう。


「ギャアアアアアアアアア!!!」

「ウ、ぐろ……」


不良たちの肉片が飛び散る。吐きそう。


「新入生のお主にはちと過激じゃったかの」

「……そこで観戦してないで、俺たちの仕事をするぞ」

「わ、部長……ぼ、僕たちに仕事ですか!?ま、まさか戦うとか……」


僕らも変身するとか?


「……そんなことあるか。ほら、女の人を助けに行くんだよ」

「あ、いましたね。忘れてましたよ……でも、危なくないですか?」

「いいや、注目はPが集めているからの。今こそチャンスじゃ。それ!」


妖狐さんと一緒に走り出し、動けないでいる女性の下へ駆けつける。僕は恐怖でやや遅れてつつそれに付いていく。


「あの、大丈夫ですか?」

「あわ、血、あわ、あわわわブクブク」

「気絶しちゃいました……」

「とりあえず安全なところまで連れて行くぞよ」


~♪特殊BGM~


「曲が変わった……?」

「ふむ、最後の仕事に入ったの」

「え?」

「ま、見てればよい」

「?……は!」


光がPさんの剣に集まっていく……?


「すごい、あれがPさんの必殺!?」

「……いや、演出だ」

「なんだ」


しかし演出といえど、迫力は十分。……ていうか、誰が演出してんの!?


「ひ……ヒィ……!化け物だコイツ……!」

「行くぞ必殺!えー、んー……み……三日月斬!!」

「誰か、だれかああああああああああああああ!!!」


スパァン!


「げげぇ……真っ二つ……」

「成敗!!!!」


ドガァァン!!!


「あ、爆発した……」


今日も平和は守られた。ありがとう、SFマン!



「お疲れじゃったの」

「……雑魚だったな」

「いや、どんな相手にも油断はしない!」

「Foo~熱かったね」

「いやいやいや、おかしいでしょ!!!!!」


なにほっこりしてるんだこの人たち!?


「……なにが」

「敵を倒したではないか」

「まずですね、まぁ変身したことはまだわかりますよ」

「……そうか」


いや、気になるけどもうそれどころじゃない。


「問題は次です!なんですかあの剣は!?」

「SF剣だ!SF研のSF剣!なんてな!」

「うまくなっ!じゃなくて、人が切断されてましたよ!!?映像技術か何かだと思っていたのに!」

「いや、剣って切るもんじゃろ。それにあれは部長が鍛えた日本刀じゃし……」

「殺人じゃないですか!?」

「……果たしてそうかな」

「え……?」

「……殺人。じゃあ、死体はどこにあるんだ」

「ほら、その辺りに……!??」


し、死体が無い!?なんで!?


「爆発したからねぇ、道理でねぇ」

「で、でも……あの女の人が覚えてるはず……」

「……覚えてなければいいんだろ」

「いや、そういうわけでもないような……って、え?」

「……何だ?」

「そんなこと、できるんですか?まっさかぁ」

「……」

「え?」


先輩方が困惑した顔で僕を見つめる。


「えっええっ!?」


疲れと驚きの混ざった僕の声が、闇に溶けていった。


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